企業の感染対策コラム

No.11 冬場の感染症に気をつけよう!

— インフルエンザウイルス・ノロウイルス—

今年もインフルエンザウイルスとノロウイルスの流行シーズンがやってきました。今回は皆様のご質問にお答えする形で、インフルエンザウイルスとノロウイルスについての基礎知識をお伝えしていきます。正しい知識を身につけ、流行シーズンに向けて予防対策に備えましょう。

株式会社 健康予防政策機構 代表・医師 岩﨑 惠美子

インフルエンザQ&A

Q1

この頃は、日本でも8月や9月にインフルエンザの集団発生があります。それはなぜですか?

北半球にある日本が夏季の時は、南半球ではインフルエンザの流行シーズンである、冬季にあたります。グローバル化により、渡航する機会も増え、特に夏休みには多くの方が海外旅行に行きます。南半球の国々や、そこからウイルスが広がった東南アジアで感染した人が国内に持ち込み、流行を起こしたと推測できます。海外からの観光客等が多い沖縄では、冬季に限らず一年中インフルエンザの患者が発生しています。しかし、夏季に集団発生が起こってもインフルエンザウイルスは高温多湿に弱いため、大規模や長期継続した流行には至らず終息していきます。

グローバル化が進んだ現代社会では、季節を問わず海外の様々な地域から国内に感染症が持ち込まれるおそれがあるため、常日頃から手洗い等の感染対策に努めましょう。

Q2

インフルエンザに罹らないためには、どうすればよいでしょうか?

インフルエンザウイルスは、鼻とのどの間(上咽頭)の粘膜で増えるので、感染者の鼻水、くしゃみに出てきます。そのため、鼻をかんだ手には、ティッシュペーパーを通してウイルスが付着したり、くしゃみでウイルスが周囲に飛散します。飛散したウイルスに触れたり、患者の手に付いたウイルスに触れた手で、口や鼻に触れて、インフルエンザに感染します。インフルエンザは、自分の手でウイルスを拾い、それを自分の鼻、口などへ運んで、かかってしまうことが多いので、一番有効な手段は、手に付いたウイルスを手洗いや手指消毒を行うことです。また、人の手がよく触れる箇所をこまめに掃除し、清潔に保つようにしましょう。インフルエンザに罹った場合にはマスクを着用して、ウイルスをまき散らさないように、心掛けましょう。

インフルエンザに罹りにくくするとともに、また、罹患した場合には重篤な症状にならないように予防する最も有効な方法は、予防接種です。重篤なインフルエンザ合併症を起こすリスクが高い人や、ハイリスクの人と同居、介護をしている人にとっても重要です。

石けん・流水による手洗いは、ウイルスを物理的に除去するために有効です。アルコールによる消毒も効果が高いため、水道がない場所では、アルコールによる手指消毒を行いましょう。

感染者のせきやくしゃみの際のしぶき(飛沫)に含まれたインフルエンザウイルスを、口や鼻から吸い込むことにより感染します。飛沫は2~3m飛ぶと言われています。周囲の人を感染させないように、せきやくしゃみが出るときには、マスクを着用しましょう。

空気が乾燥すると気道粘膜の防御機能が低下します。うがいは、のどの粘膜に十分な湿分を補給し、粘膜の働きが弱まるのを防ぎます。

Q3

ノロウイルスによる胃腸炎はどのようなものですか?

嘔吐、排便、付着ノロウイルスは感染性胃腸炎とも言われます。ノロウイルスは感染すると人の腸管で増え、感染者の便や嘔吐物中に大量にウイルスが排出されるため、それに触れた人の手を介して、経口で感染します。また、ノロウイルスに汚染された二枚貝を食べることにより感染することもあります。症状は多くの場合、嘔吐が非常に強く、下痢、腹痛、時には発熱もあります。健康な人では、比較的軽症で回復したり、感染しても症状が現れないこともありますが、乳幼児、幼児、高齢者では重症化したり、嘔吐物を誤って気道に詰まらせて死亡することもあるため、非常に注意を要する感染症の一つです。ノロウイルスのワクチンはなく、治療は下痢や嘔吐による脱水症状に対する輸液などの対症療法に限られます。

Q4

インフルエンザウイルスとノロウイルスの予防で効果的な対策は?

インフルエンザウイルスもノロウイルスも人の手を介して感染が広がります。どちらにも共通し、そして、最も有効である対策は、手に付いたウイルスを洗い流すことです。石けんを用いた手洗いが一番の対策です。外から帰った時には、必ず手洗いをする習慣を身につけましょう。さらに、ノロウイルス対策として重要なことはトイレを使用した後の手洗いの徹底です。ノロウイルスは極めて微小なため、1度の手洗いでは除去が難しいので、トイレ使用後は2度手洗いが望まれます。手指消毒に用いるアルコール消毒薬は、インフルエンザウイルスについては有効ですが、ノロウイルスについては一般的なアルコール消毒薬は効きづらいと言われていますが、近年ではアルコールを酸性側あるいはアルカリ性側にシフトさせると、ウイルス不活化効果を高めることが報告されており、酸性のアルコール消毒薬など、幅広くウイルス・細菌に作用するアルコール消毒薬が製品化されていますので、ノロウイルスに不活化効果の期待できるアルコール消毒薬を用いましょう。

2度手洗いは「洗って」を2回

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PROFILE

株式会社健康予防政策機構

代表 岩﨑 惠美子

岩﨑先生新潟大学医学部卒業後、耳鼻咽喉科医師を経て、インド、タイ、パラグアイで医療活動を行う。1998年より、厚生労働省、成田空港検疫所、企画調整官仙台検疫所長を歴任。その後、WHOの要請でウガンダ現地にてエボラ出血熱の診療・調査に従事。またSARS発生時には日本代表として世界会議に出席。2007年からは仙台市副市長に就任。インフルエンザ対策として「仙台方式」を提唱し、日本の新型インフルエンザ対策の基盤を構築する。現在は、感染症対策のプロとして、新型インフルエンザをはじめとする感染症対策の啓発活動を行っている。


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