企業の感染対策コラム

No.1 創刊号

感染症に対する正しい知識と正しい予防策を身につけよう

感染症と私

私が感染症に興味を持つようになったきっかけは、口腔がんの専門家として渡ったインドの僻地での発熱患者との出会いでした。インドでは公衆衛生上、口腔がんは大きな問題でした。その対策の専門家として私は呼ばれ、検診、治療に駆け回っておりました。その最中、高熱で苦しむ患者のことを現地の人から相談されましたが、診断も治療の準備もない私は、そのままその地を離れるしかありませんでした。患者はマラリアに罹っていたと聞かされたのは、数日後のことでした。その時、自分の頭には「マラリア」の病名も浮かんでいなかったことを恥じました。私は、日本では20年以上耳鼻科医として、感染症の原因となる病原体の体内への侵入口である鼻、咽喉、口腔などを診て、感染症の治療もしてきたのですが、その知識の浅さを知らされました。
それ以来、私は熱帯地域の感染症に興味を持ち、インドでの任期が終わるとすぐに、タイの大学に入学し、感染症の基礎である熱帯医学を学ぶことを決めました。

現在、人の健康を脅かしている感染症の多くは動物由来のもので、人が森林などの開発を進め、人と動物との距離が近くなった結果、動物の感染症に人が罹るようになったものです。 私達の周りでは、一年中、さまざまな病気が流行しています。多くの人が冬場に罹りやすいインフルエンザ、子供の間で流行りはじめて家族に拡がって行くノロウイルス下痢症、そして、アフリカなどの途上国で時々発生する、エボラ出血熱などの重篤な病気など、それらも最初は動物に由来した感染症です。
現代社会のようにグローバル化した世界では、人は地球上を自在に動くことができます。人と共に動く感染症も、容易に国境を越えて動くのです。その結果、感染症が地球上に拡がって行きます。
このような時代の中で生きて行くために、私達に求められていることは、感染症に対する正しい知識と正しい予防策を身につけることです。

デング熱

デング熱はデングウイルスを持った蚊に刺されて罹ります。アジアの熱帯、亜熱帯地域では日常的に発生し、特に、子供の場合にはデング出血熱になり、死亡することもあります。日本では東南アジアなどを旅行中に蚊に刺されて罹り、帰国後に見つかることは時々ありましたが、一昨年、代々木公園に行った人がデング熱に罹り、大騒ぎになりました。 デング熱流行地発の航空機にデングウイルスを持った蚊が紛れて来て、日本で繁殖し、それらに刺されてデング熱に罹る可能性もあるので、蚊の繁殖場となる水たまりなどを無くすことが大切です。

今回、このように定期的に紙面で情報を発信することで、感染症の知識をより多くの人々に知ってもらう機会を得られたことは、感染症対策にかかわる仕事をしている者にとって大変ありがたく、今後もこの紙面を有効に活用してまいりたいと考えています。

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PROFILE

株式会社健康予防政策機構

代表 岩﨑 惠美子

岩﨑先生新潟大学医学部卒業後、耳鼻咽喉科医師を経て、インド、タイ、パラグアイで医療活動を行う。1998年より、厚生労働省、成田空港検疫所、企画調整官仙台検疫所長を歴任。その後、WHOの要請でウガンダ現地にてエボラ出血熱の診療・調査に従事。またSARS発生時には日本代表として世界会議に出席。2007年からは仙台市副市長に就任。インフルエンザ対策として「仙台方式」を提唱し、日本の新型インフルエンザ対策の基盤を構築する。現在は、感染症対策のプロとして、新型インフルエンザをはじめとする感染症対策の啓発活動を行っている。


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