No.7 インフルエンザを正しく知ろう
Q&A編
今年もインフルエンザの流行シーズンがやってきました。インフルエンザの流行は12月頃から翌年の3月頃とされています。今回は皆様のご質問にお答えする形で、インフルエンザについての基礎知識をお伝えしていきます。正しい知識を身につけ、流行シーズンに向けて、ワクチン接種や日々の手洗い・うがいなど予防対策に備えましょう。
株式会社健康予防政策機構 代表・医師 岩﨑 惠美子
インフルエンザQ&A
Q1
今年は9月から学年・学級閉鎖等の報告が多く見られました。今シーズンのインフルエンザの流行は、例年より早いのでしょうか?
今年は8月の終わりから9月に、国内でインフルエンザの流行がありました。この要因は、南半球のオーストラリアでインフルエンザが大流行を起こしたことによります。南半球で冬季が終わると、インフルエンザウイルスは北半球の東南アジアに広がったため、そこで感染した人が国内に持ち込み、流行を起こしたと推測できます。
しかし、この時期、日本は夏季であり、インフルエンザウイルスは高温多湿に弱いため、大規模や長期継続した流行には至らず終息していきました。
グローバル化が進んだ現代社会では渡航する機会も増え、季節を問わず海外の様々な地域から国内に感染症が持ち込まれるおそれがあるため、常日頃から手洗い等の感染対策に努めましょう。
Q2
今年は、ワクチンの供給量が足りないと話題になっていますが、なぜですか? 足りるのでしょうか?
ワクチンの不足や供給の遅れが報道されていますが、現在は製造が進んでおり、その懸念は不要です。
今シーズンは、より効果的なワクチン製造のため、製造に使用するウイルスの型を途中で変更したことにより、製造が遅れたことが原因です。ワクチンは接種後、効果が現れるまでには、2週間程度かかりますので、ワクチンが受けられるようになったら、できるだけ早く接種しましょう。
医師によっては、ワクチンを2回接種した方が、免疫が長く続くということで、これを奨励する場合もありますが、今年は厚生労働省が、ワクチンを効率的に使用するため、13歳以上は原則1回接種とし、2回接種を控えるよう通知を発出しています。
ワクチン接種は効果的なインフルエンザの予防法ですが、供給が遅れている現状において、また、今まで2回接種されていた方が1回になっても、私たちは、様々な予防方法を知っているわけですから、それらの方法を冷静に実施しましょう。
Q3
インフルエンザの感染防止対策として、アルコール手指消毒薬は、どこに設置したら効果的なのでしょうか?
誰が使用するかということを考えて、アルコール手指消毒薬を設置しましょう。
アルコール手指消毒薬は、不特定多数の人に接する仕事や多くの人が集まる場所で仕事をされる方々に最も使用していただきたいですね。身近に置き、手が洗えない場合の応急措置として、ぜひ手指消毒をしてください。自分自身を感染から守るために手指消毒をすることは、感染の拡大防止につながります。
パブリックスペースの出入口にのみ設置している施設を多く見かけますが、使用したい時にすぐに使える場所にも設置しましょう。
Q4
長期間設置されたままのアルコール消毒薬に効果はあるのでしょうか?
開封後は、使用条件や保管環境による影響が異なるため、各々の安定性を保証することは困難です。開封後は、早めに使用しましょう。
未開封での使用期限は2年から3年ですので、少なくとも2年に1回の取り換えや買い換えをお勧めします。
使用期限を気にするだけではなく、適切に使用されていれば、期限内に使い切ることは可能であると考えられます。手指消毒の励行にも努めましょう。
未開封での使用期限の目安
医薬部外品(手指消毒剤)
3年
厚生労働省の許認可のもとに製造販売しており、許認可の際に3年以上品質の安定が確認されているため、薬機法上は期限表示不要
食品添加物用(アルペット製剤)
2年
食品添加物製品のため、法律的に原則、期限を定める義務がない
PROFILE
株式会社健康予防政策機構
代表 岩﨑 惠美子
新潟大学医学部卒業後、耳鼻咽喉科医師を経て、インド、タイ、パラグアイで医療活動を行う。1998年より、厚生労働省、成田空港検疫所、企画調整官仙台検疫所長を歴任。その後、WHOの要請でウガンダ現地にてエボラ出血熱の診療・調査に従事。またSARS発生時には日本代表として世界会議に出席。2007年からは仙台市副市長に就任。インフルエンザ対策として「仙台方式」を提唱し、日本の新型インフルエンザ対策の基盤を構築する。現在は、感染症対策のプロとして、新型インフルエンザをはじめとする感染症対策の啓発活動を行っている。