No.3 インフルエンザの基礎知識
インフルエンザとは?
インフルエンザはどこから来るの?
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。インフルエンザウイルスは、カモ等の水鳥が運んできます。シベリアの凍土の中に凍結保存されていたインフルエンザウイルスをカモが水やエサをついばむ時に一緒に飲み込み、インフルエンザウイルスを保有したカモになります。このウイルスはカモに対しては病原性を持たないのですが、その体内で増殖していきます。ウイルスを持ったまま成鳥となったカモは、糞の中にウイルスを排出しながら南へ渡ってきます。その時、糞とともにまき散らされたインフルエンザウイルスが、私たちの身近にいるニワトリに感染すると、鳥インフルエンザとなります。鳥インフルエンザウイルスは、そのままではヒトに感染することは極めて稀なのですが、ブタに感染すると、ブタの体内でウイルスが形を変え、ヒトの間で流行するインフルエンザウイルスに変化することがあるのです。
このように、インフルエンザウイルスは、カモからニワトリへ、そしてブタに感染し、ブタの中でヒトの間で流行を起こすウイルスへと変化して、ヒトの間で流行するインフルエンザになります。
流行状況を効果的に把握する方法とは?
インフルエンザの流行には乳幼児や小学生の子どもたちが大きく係わっています。体力や免疫力も十分ではない上、子どもたちは衛生概念がまだないため、子どもたちの中では簡単に感染が拡がります。また、保育園・幼稚園児より行動範囲の広い小学生はインフルエンザ感染拡大には、注意すべき集団となります。インフルエンザが発生すると、学級内で集団発生し、そして彼らの家族に感染を拡げ、そこから社会へと拡がって行きます。すなわち、小学生はインフルエンザを拡げるスーパー・スプレッダーと言え、小学生の欠席率(小学校の流行状況)を把握すると、その地域でのインフルエンザの流行状況が分かります。
インフルエンザにかかってしまったら?
インフルエンザの症状は、高度の発熱、頭痛、鼻水、のどの痛みなどの、風邪のような症状で始まります。さらに、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などが強く現れます。このような症状が現れたら、かかりつけの医療機関へ行き、できるだけ早く診断を受けて、治療を開始することが大切です。早い時期に、タミフル、リレンザ等の抗ウイルス薬を服用すると、体内のインフルエンザウイルス量が減り、症状が軽くなりますので、その上で、十分な静養を取り、体力をつけて、インフルエンザを克服しましょう。インフルエンザにかかった場合には、症状がなくなるまで、自宅で静養して下さい。
インフルエンザの予防方法 -手洗い・手指消毒とうがいは、簡単で有効な予防手段-
インフルエンザウイルスは、鼻とのどの間(上咽頭)の粘膜で増えるので、感染者の鼻水、くしゃみに出てきます。そのため、鼻をかんだ手には、ティッシュペーパーを通してウイルスが付着したり、くしゃみでウイルスが周囲に飛散します。
飛散してウイルスに触れたり、患者の手に付いたウイルスに触れた手で、口や鼻に触れて、インフルエンザに感染します。
すなわち、インフルエンザを予防する一番有効な手段は、手に付いたウイルスを洗い流すことです。外出から戻ったら、必ず手洗いをして、ウイルスを自分の中に取り込まないようにしましょう。また、多くの人が集まる場所には、インフルエンザの流行期には出かけないようにしましょう。鼻水にウイルスが多く排出されることから、鼻をかんだティッシュペーパーなどは、人が触れないようにしっかり処理しましょう。
うがいは、のどの粘膜に潤いを持たせ、インフルエンザウイルスに対する抵抗力を高めるためには、有効です。
インフルエンザは自分の手でウイルスを拾い、それを自分の鼻や口などへ運んで、かかることが多いので、マスクを着用しても必ずしも感染を防ぐことは出来ません。
ただ、インフルエンザにかかった場合には、マスクを着用して、周囲にウイルスをまき散らさないように、心掛けましょう。インフルエンザが流行する年末年始には、忘年会や新年会など、疲れや寝不足、飲み過ぎなどの機会が増えます。是非とも、規則正しい生活を送り、健康管理に気をつけ、体力を落とさないようにして、インフルエンザウイルスに負けないように心がけましょう。
インフルエンザに罹りにくくするとともに、また、罹患した場合には重篤な症状にならないように予防する最も有効な方法は、予防接種です。重篤なインフルエンザ合併症を起こすリスクが高い人や、ハイリスクの人と同居、介護をしている人にとっても重要です。
石けん・流水による手洗いは、ウイルスを物理的に除去するために有効です。アルコールによる消毒も効果が高いため、水道がない場所では、アルコールによる手指消毒を行いましょう。
空気が乾燥すると気道粘膜の防御機能が低下します。うがいは、のどの粘膜に十分な湿分を補給し、粘膜の働きが弱まるのを防ぎます。
空気が乾燥すると気道粘膜の防御機能が低下します。うがいは、のどの粘膜に十分な湿分を補給し、粘膜の働きが弱まるのを防ぎます。
PROFILE
株式会社健康予防政策機構
代表 岩﨑 惠美子
新潟大学医学部卒業後、耳鼻咽喉科医師を経て、インド、タイ、パラグアイで医療活動を行う。1998年より、厚生労働省、成田空港検疫所、企画調整官仙台検疫所長を歴任。その後、WHOの要請でウガンダ現地にてエボラ出血熱の診療・調査に従事。またSARS発生時には日本代表として世界会議に出席。2007年からは仙台市副市長に就任。インフルエンザ対策として「仙台方式」を提唱し、日本の新型インフルエンザ対策の基盤を構築する。現在は、感染症対策のプロとして、新型インフルエンザをはじめとする感染症対策の啓発活動を行っている。