号外3 家庭で注意したい 新型コロナウイルス感染対策
世界中で新型コロナウイルス感染症が拡大しており、日本では4月7日に7都府県に「緊急事態宣言」が発出され、同16日には全都道府県に拡大されました。感染者が増加してくると、重症者の病床を優 先的に確保するため、軽症者は自宅や決められた宿泊施設で療養することになります。今回は、コロナウイルス感染が疑われる場合や自宅療養において、ご家庭で注意したい感染対策についてお伝えします。正しい知識を備えて、冷静に感染対策に取り組みましょう。
株式会社 健康予防政策機構 代表・医師 岩﨑 惠美子
くしゃみ・せき・鼻水・便にウイルスが潜んでいる
新型コロナウイルス感染症は、ウイルスが手を介して口や鼻などの粘膜から取り込まれて感染し、鼻の奥の上咽頭で増殖します。そして新たな感染者となった人のくしゃみやせき、鼻水にウイルスが 排出され、周りの人々に拡げ ていきます。鼻や咽 頭の 炎 症 がさらに下気道にも拡がると、肺炎を起こします。また、上咽頭や鼻の粘膜にウイルスが多いため、時に嗅覚障害、味覚障害を起こすこともあります。消化器にも症状が出るため、下痢などを起こすことも少なくないので、便を介しての感染拡大も考える必要があります。
家庭での感染対策のポイント
1.家族にうつさない居住環境を整えましょう(できるだけ患者専用の個室を確保)
- 部屋をできるだけ分け、食事や寝るときも別室とする。トイレや浴室も別が望ましい。
- 共用スペース(トイレ、浴室など)の利用は最小限とし、極力部屋から出ない。浴室は最後に使用する。
- 部屋を分けられない場合は2m以上の距離を保ったり、仕切りやカーテン等を設置し、同室内の全員がマスクを着用する。
2.お世話をする人は1人に決めましょう
- お世話は限られた人でおこない、他の家族と不必要に接触しない。
- 心臓、肺、腎臓に持病のある方、糖尿病の方、免疫低下した方、妊婦の方などがお世話をするのは避ける。
3.感染者・お世話する人の両方がマスクをしまょう
- お世話する人は部屋に入るときにマスクを着け、使用したマスクは他の部屋には持ち出さない。
- マスクを外すときは、表面には触らず、ゴムひもをつまんで外し、必ず石けんでの手洗いやアルコール手指消毒をする。
4.家族はこまめに手洗い・手指消毒をしましょう
- ウイルスのついた手で目や鼻、口などを触ると粘膜・結膜を通して感染するので、石けんを用いた手洗いやアルコール手指消毒をする。
5.定期的に換気をしましょう
- 部屋のウイルス量を下げるため感染者の部屋のみならず、共有スペースや他の部屋も換気をする。
6.手で触れる共用部分を消毒しましょう
- ドアノブやベット柵、テーブル等よく触れるところは、1日1回以上、家庭用塩素系漂白剤(0.05%次亜塩素酸ナトリウム)で拭いた後、水拭きするか、アルコールや家庭用除菌スプレーを含んだペーパータオル等で拭く。
- トイレや洗面所等は通常の家庭用洗剤を使用し、すすいだ後、家庭用塩素系漂白剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)で消毒する。
7.食器やタオルなどの共用は避けましょう
- 洗浄・洗濯前の物は共用しない。
特にタオルは、洗面所やトイレで共用しないようお互いに確認して注意する。
8.食器や衣類は、通常通りに洗えます
- タオル、衣類、食器、箸、スプーンなどは、通常の洗剤で、洗濯や洗浄をおこなう。感染者の物を分けて洗う必要はない。
9.汚れた衣類やリネンは他の物とは別にして洗いましょう
- 嘔吐物や便、体液などで汚れた衣類等は、手袋とマスクを着けて扱い、他の物とは別にして一般的な家庭用洗剤で洗濯し、完全に乾かす。
10.ゴミは密閉して捨てましょう
- 使用したマスクやティッシュペーパー、使い捨て手袋等を捨てるときは他の人が触れないように、ビニール袋に入れ、しっかり口を縛って密閉して捨て、その後、石けんで手を洗う。
参考資料
厚生労働省
- 令和2年3月1日版 ご家族に新型コロナウイルス感染が疑われる場合家庭内でご注意いただきたいこと
- 新型コロナウイルスの感染が疑われる人がいる場合の家庭内での注意事項(日本環境感染学会とりまとめ)
- 令和2年4月2日 事務連絡
新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について - 令和2年4月6日 事務連絡
「新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養及び自宅療養の対象並びに自治体における対応に向けた準備について」に関するQ&Aについて - 令和2年3月10日版 「感染しない・感染させないための 知って安心 新型コロナウイルス感染症予防」リーフレット
新宿区保健所
PROFILE
株式会社健康予防政策機構
代表 岩﨑 惠美子
新潟大学医学部卒業後、耳鼻咽喉科医師を経て、インド、タイ、パラグアイで医療活動を行う。1998年より、厚生労働省、成田空港検疫所、企画調整官仙台検疫所長を歴任。その後、WHOの要請でウガンダ現地にてエボラ出血熱の診療・調査に従事。またSARS発生時には日本代表として世界会議に出席。2007年からは仙台市副市長に就任。インフルエンザ対策として「仙台方式」を提唱し、日本の新型インフルエンザ対策の基盤を構築する。現在は、感染症対策のプロとして、新型インフルエンザをはじめとする感染症対策の啓発活動を行っている。