企業の感染対策コラム

号外1 新型コロナウイルスによる肺炎発生

昨年12月より中国で原因不明の肺炎が発生していましたが、新型のコロナウイルスによるものということが発表され、国内でも感染者が報告されたこともあり、大きく報道されています。コロナウイルスはSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)を引き起こすウイルスとして知られていますが、それら以外は日常的に感染して風邪を引き起こすウイルスです。現時点での情報では、ヒトからヒトへの感染の可能性が否定できない事例も報告されていますが、持続的なヒト‒ヒト感染の明らかな証拠もないことより、あまり恐れず、まずは風邪やインフルエンザのような通常の感染対策を日頃から徹底しましょう。

株式会社 健康予防政策機構 代表・医師 岩﨑 惠美子

これまでの発生状況等

  • 中華人民共和国湖北省武漢市で2019年12月以降、原因となる病原体が特定されていない肺炎の発生が複数報告される。
    世界保健機関(WHO)より
    • 2020年1月9日に声明が発表され、中国当局が入院中の肺炎患者から新種のコロナウイルスを暫定的に同定したことを発表した。
    • 1月14日の定例記者会見で、新型コロナウイルスが検出されたと認定された。
  • 中国で原因不明肺炎と報告された59人のうち、新型コロナウイルスによる肺炎炎と暫定的に診断された患者は41人。そのうち1人死亡(重篤な基礎疾患を有する患者)。(1月12日現在)
    中国では1月3日以降、新たな患者発生はない。
  • 海鮮市場(華南海鮮城。野生動物を販売する区画もある。)と関連した症例が多く、1月1日に海鮮市場は閉鎖した。
  • 1月13日には、タイに1月8日に入国した(スワンナプーム空港)中国人旅行者から新型コロナウイルスが確認されたことが発表された。
  • 1月16日に、日本で新型コロナウイルスによる患者の発生が発表された(神奈川県在住30代男性。1月6日に中国の武漢市から帰国し、医療機関受診。1月3日より発熱。1月10日より入院し、15日に退院。1月15日に陽性の結果が得られた。)。
  • 中国では家族内の感染があり、日本で確認された患者は海鮮市場には立ち寄ってはいないが肺炎患者と接触したとのことより、限定的なヒトからヒトへの感染の可能性が否定できないものの、持続的なヒトからヒトへの感染の明らかな証拠はない。

(2020年1月16日までの情報で作成)

コロナウイルスとは?

  • 人や動物の間で広く感染症を引き起こすウイルス。
  • 人に感染症を引き起こすものはこれまで6種類が知られており、深刻な呼吸器疾患を引き起こすことがあるSARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)とMERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)以外は、感染しても通常の風邪などの重度でない症状にとどまる。
  • エンベロープ(脂質からなる二重膜)をもつウイルスで、アルコール製剤などの消毒薬が効きやすい。

今、私たちがすべきこと

  • 通常の感染対策を日頃から徹底しましょう!
  • 武漢市からの帰国者咳や発熱等の症状がある場合には、マスクを着用するなどして医療機関を受診し、渡航歴を申告する。

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PROFILE

株式会社健康予防政策機構

代表 岩﨑 惠美子

岩﨑先生新潟大学医学部卒業後、耳鼻咽喉科医師を経て、インド、タイ、パラグアイで医療活動を行う。1998年より、厚生労働省、成田空港検疫所、企画調整官仙台検疫所長を歴任。その後、WHOの要請でウガンダ現地にてエボラ出血熱の診療・調査に従事。またSARS発生時には日本代表として世界会議に出席。2007年からは仙台市副市長に就任。インフルエンザ対策として「仙台方式」を提唱し、日本の新型インフルエンザ対策の基盤を構築する。現在は、感染症対策のプロとして、新型インフルエンザをはじめとする感染症対策の啓発活動を行っている。


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