No.23 子どもの感染症Q&A③
2019~20年にもQ&Aを2回連載しましたが、今回は子どもの患者増加が問題となっている新型コロナウイルス感染症に関する疑問を中心に回答します。日常の感染症対策にお役立てください。
川崎医科大学 総合医療センター 小児科 部長(教授)中野 貴司
Q&A
Q1
5~11歳の子どもへの新型コロナワクチン接種
・有効性、安全性について教えてください
・接種に際して気をつけることや注意点はありますか?
・有効性、安全性について教えてください
・接種に際して気をつけることや注意点はありますか?
オミクロン株が流行する以前の海外での調査結果ですが、5~11歳に対する臨床試験の成績が報告されています。ワクチンを接種した子どもは、接種していない子どもと比較して、2回接種後7日目以降で約90%の発症予防効果が確認されました。
すなわち、12歳以上の者に匹敵する有効率で、病気になることを予防する効果が期待されます。ただしオミクロン株に対しては、大人と同様に予防効果が低下すると考えられています。
副反応については、ワクチンを接種した部位の痛みや倦怠感(からだがだるい)、頭痛、発熱などの症状が臨床試験で報告されていますが、ほとんどが軽症から中等症で回復しており、安全性に重大な懸念は認められないと判断されています。
また、米国CDCは、接種後の発熱などの副反応は12歳以上の者と比べて頻度が低いと報告しています。
Safety monitoring of COVID-19 vaccine among children and young adults in v-safe.
若年者で注意すべきメッセンジャーRNAワクチンの副反応として、心筋炎/心膜炎が知られています。女性よりも男性で、1回目接種よりも2回目接種後で、よりリスクが高いとされています。子どもへの接種に際して気になる副反応ですが、現状の米国CDCの解析では、5~11歳の男児での接種後の心筋炎/心膜炎の頻度は、12~15歳及び16~17歳の男性と比較して低かったとされています。
このように現状のデータでは、5~11歳の子どもたちにおいて、年長児や大人より副反応のリスクが高いということはありません。ただし、年少児は自ら症状を申し出ることが難しい場合もあるので、その点は配慮してあげることが必要です。
また、5~11歳への新型コロナワクチンについての詳細は、厚労省ウェブサイト掲載の下記のコラムも参考にしてください。
5~11歳の子どもへの新型コロナワクチンの効果・副反応と接種の考え方
Q2
学校生活や自宅療養中の体調管理や感染対策のポイントを教えてください。
オミクロン株流行期の子どもの新型コロナ患者の症状の特徴は、なかなか通常のカゼと区別が難しい場合が多いです。年長児は咽頭痛(ノドの痛み)を訴える場合が比較的多く、乳幼児では他のウイルスでも起きる「仮性クループ」の症状である咳や喘鳴(息をするときにゼーゼーという音が聞こえる)を認めることがありますが、必発ではありません。発熱も認めますが、多くの場合は2日以内に解熱します。体調管理の注意事項は、他の感染症への対応と同様ですが、本人の体調について周囲の大人も注意をはらってあげることが大切です。具体的には、ぐったりしていないか、水分や食事はとれているか、尿は出ているか、顔色はよいか、呼吸が苦しそうではないかなどです。
感染対策については、年長児であれば感染が確定あるいは疑わしい場合、生活空間を分けたり黙食やマスク着用も可能ですが、乳幼児ではなかなかそうはいきません。また、子どもの成長発達を考慮すれば、感染対策よりも優先したい様々な日常があることも事実です。
新型コロナにのみエネルギーを奪われるよりも、日頃から清潔な生活空間をできる限り確保すること、トイレや洗面所など体液や排せつ物で汚染されやすい場所は、適切な清掃の習慣をつけておくことも有用と考えます。
Q3
これからの季節に注意すべき感染症はありますか?
コロナ禍のために人同士の接触機会が減ったせいか、今シーズンもインフルエンザは全く流行しませんでした。しかし、徐々に生活制限は緩和され、子どもの活動範囲も拡大しています。
多くの子どもが集団生活をスタートするこの季節は、溶連菌感染症や水痘、中耳炎など感染症が増える季節でした。今シーズンは、昨年のRSウイルスのように、何年ぶりかの大流行を示すものがあるかどうかはまだわかりません。夏に向けて流行するアデノウイルスやエンテロウイルスへの注意も必要です。病気が減っていても、感染対策は忘れずに励行を継続しましょう。
PROFILE
川崎医科大学 総合医療センター 小児科
部長(教授) 中野 貴司
1983年信州大学医学部卒業、1983年三重大学医学部付属病院小児科研修医、1984年尾鷲総合市民病院小児科、1985年国立療養所三重病院小児科、1987年ガーナ共和国野口記念医学研究所派遣(2年間)、1989年三重大学医学部小児科、1995年国立療養所三重病院小児科(この間、中国ポリオ対策プロジェクトへ1年間派遣)、2004年4月 独立行政法人化により"国立病院機構 三重病院"と改称、2010年7月 川崎医科大学小児科教授、現在に至る。