子供の感染対策コラム

No.22 新型コロナウイルス感染症

新型コロナウイルスの出現から2年が過ぎました。新しい治療薬や予防ワクチンが開発される一方で、厳しい戦いはまだ続いています。幸い昨年末の日本は、新規の患者発生が少なくやや落ち着きを取り戻しました。しかし、変異ウイルスであるオミクロン株は、これまでのウイルスよりも感染力が強いことや、ワクチンによる免疫からエスケープする可能性が指摘されました。新型コロナウイルス感染症のこれまでを振り返り、今後について考えます。

川崎医科大学 総合医療センター 小児科 部長(教授)中野 貴司

どんな病気?

どんな病気?

 病原体SARS-CoV-2に感染してから症状が出るまでの日数、すなわち潜伏期間は約5日間です。これより短い場合や長い場合もありますが、最長で14日間とされます。ウイルスに感染しても症状が出ない「無症状感染者」は、年齢によって比率は異なりますが約20~30%です。症状が出た者の約40%は1週間程度で治りますが、残る60%では肺炎の症状、すなわち高熱の持続や激しい咳、血液中の酸素濃度が低下するなどの症状がはっきりしてきます。

約20%の患者で酸素投与が必要となり、約5%の患者は人工呼吸器による治療が必要と言われます。急性期から回復した後も多様な症状が長引く場合があり、 long-COVIDと呼ばれます。
 幸いに子どもでは、比較的患者数が少なく、重症化の頻度も大人と比べてはるかに低い傾向です。しかしデルタ株が流行した2021年夏は、子どもの患者数が増加しました。より感染力が強いとされるオミクロン株が流行することになれば、子どもも全く油断はできません。

感染経路と対策

 ウイルスは、咳、くしゃみ、会話などの際に排出される飛沫(ひまつ)やエアロゾルに含まれ、これを吸入することで感染します。飛沫(ひまつ)が付着した部位から手指などを介した接触感染、密閉された空間に浮遊するエアロゾルを介しての感染も起こるとされます。

 したがって、感染を防ぐ対策として、①密閉空間(換気が悪い)、 ②密集場所(多人数が密集する)、③密接場面(会話や発声による飛沫への曝露)という3つの条件(いわゆる「三つの密」)を回避すること、人と人との距離を確保すること、マスクの着用、手洗いや手指衛生、換気が重要です。

 子どもではマスクの着用に注意が必要です。2歳未満の子どもは、息苦しさや体調不良を訴えたり、自分でマスクを外すことが困難なので着用は推奨されません。2歳以上の子どもが着用する場合は、保護者や周りの大人が子どもの体調に十分注意します。本人の調子が悪かったり、持続的な着用が難しい場合は、無理をさせる必要はありません。また、マスクは適切に着用しないと効果が十分に発揮されません。

 周囲の大人や年長児がしっかりと感染対策を講じることで、乳幼児の感染を予防することに心がけていただきたいと思います。

次の感染拡大に向けた取組

 政府は、新型コロナウイルス感染症の次の感染拡大に備え、2021年11月12日、今後の取組の全体像を取りまとめました。また、11月19日には、今後の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく対策についての基本的対処方針を取りまとめました。これらより、ワクチン接種、検査、治療薬などの普及による予防、発見から早期治療までの流れをさらに強化するとともに、最悪の事態まで想定した対応を進めてゆくとしています(表)。

表.次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像
(新型コロナウイルス感染症対策本部,2021年11月12日 )
1.医療提供体制の強化
病床確保、臨時医療施設の整備
自宅や宿泊療養者への対応
医療人材の確保
ITを活用した稼働状況の徹底的な「見える化」
さらなる感染拡大時への対応
2.ワクチン接種の促進
1, 2回目接種のさらなる普及
小児への接種の検討(5~11歳)
追加接種(3回目の接種)
ワクチンの確保
3.治療薬の確保
経口薬の実用化
複数の治療薬を確保
重症化リスクを有する軽症
~中等症者へ確実な治療機会を提供
4.国民の仕事や生活の安定、安心を支える日常生活の回復
感染拡大を防止しながら行動制限を緩和する取組
通常医療の制限が必要な状況では行動制限の緩和を停止
検査環境とワクチン接種証明の整備
感染状況を評価する新たな基準(医療の逼迫状況に重点)
新型コロナによって多大な影響を受ける者への支援

(内閣官房ウェブサイト掲載の内容より作成)

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PROFILE

川崎医科大学 総合医療センター 小児科

部長(教授) 中野 貴司

中野先生1983年信州大学医学部卒業、1983年三重大学医学部付属病院小児科研修医、1984年尾鷲総合市民病院小児科、1985年国立療養所三重病院小児科、1987年ガーナ共和国野口記念医学研究所派遣(2年間)、1989年三重大学医学部小児科、1995年国立療養所三重病院小児科(この間、中国ポリオ対策プロジェクトへ1年間派遣)、2004年4月 独立行政法人化により"国立病院機構 三重病院"と改称、2010年7月 川崎医科大学小児科教授、現在に至る。


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