No.10 冬が来ました!!インフルエンザの流行シーズンです。
ー流行を拡大させないための知識についてー
日本では毎年12月~2月の期間にインフルエンザが最も流行します。昨シーズンは近年で最も多くの患者報告がありましたが、今シーズンの流行規模はどうなるでしょう。また、A型やB型いろんなウイルスがありますが、どの型が流行するのでしょうか。今シーズンは、新しいタイプの内服薬剤が発売されていることもあって、例年にも増してインフルエンザのことが話題に取り上げられています。流行期をむかえたインフルエンザについて解説します。
川崎医科大学 総合医療センター 小児科 部長(教授) 中野 貴司
かかるとどんな症状がでますか?
インフルエンザの主な症状は、発熱と咳、鼻汁、のどの痛みなどです。多くの場合、急に熱がでます。子どもでは高熱となる頻度が高く、成人、高齢者と年齢を経るにしたがって高熱の出現頻度は減少し、軽度の発熱のこともしばしばあるといわれています。からだ全体に痛みやだるさを感じる場合も多く、通常の「カゼ」よりも全身的な症状が強いのがインフルエンザの特徴です。ウイルスに感染してから症状が出るまでの期間(潜伏期間)は通常1~4日で、平均2日程度とされます。
インフルエンザウイルスの型と近年の流行
インフルエンザウイルスはA, B, C, D型の4つに分類されますが、人での流行が毎年問題となるのはA型とB型のウイルスです。2009年にはA型のAH1亜型に分類される新しいウイルスが現れて、世界中にパンデミックを起こしました。その数年後から2017年までの6シーズンは、AH1亜型とAH3亜型ウイルスが1年おきに交互に流行し、AH1が流行するシーズンはB型ウイルスの分離も多い傾向にあるという周期が繰り返されていました。その順番でいくと、昨シーズンはAH1亜型が流行するはずでした。ところが、最も流行が大きかったのはB型、次いでAH1、AH3という順番でした。これら多種ウイルスの混合流行であったことが、昨シーズンの流行規模が大きくなった要因のひとつでもありました。
昨シーズンの流行を振り返って
昨シーズンは、流行開始の立ち上がりが例年より早く、すでに12月には各地で患者多発が報告されました。これまでは流行期の後半以降に分離されることが多かったB型ウイルスが、シーズン開始当初から流行したことも特徴的でした。流行のピーク時期は例年とほぼ同様の1月下旬から2月上旬にかけてでしたが、ピークの高さは1999年の感染症法施行以来最高でした。流行シーズン中の累積推計受診患者数は約2,249万人を数え、近年の患者数を大きく上回りました※。
※平成30年6月15日 国立感染症研究所・厚生労働省結核感染症課「今冬のインフルエンザについて (2017/18 シーズン)」よりインフルエンザの流行は子どもから?
国立感染症研究所発表の資料※にインフルエンザ患者数の年齢群別割合が示されています。それによれば、昨シーズンは15歳未満の患者が全体の42%と半数近くを占めています。過去の複数シーズンにおいても小児患者の占める割合は同様に高く、毎年4割から5割の患者が15歳未満の小児です。働き盛りの成人世代よりも、子どもたちの方が医療機関にアクセスしやすい可能性はありますが、インフルエンザ対策として小児患者からの感染を拡大させないことは大切と考えられます。学校や幼稚園で流行しやすい感染症について定めた「学校保健安全法」の「第2種感染症」にもインフルエンザは含まれています。
参考サイト:サラヤ 感染と予防 子供の感染対策コラム No.3「感染症による出席停止期間」(2017年4月15日)
●各シーズン第13週までのインフルエザ累積推計受診者数および年齢群割合
(2015/16シーズン~2017/18シーズン)※
※平成30年6月15日 国立感染症研究所・厚生労働省結核感染症課「今冬のインフルエンザについて (2017/18 シーズン)」より
流行を拡大させないために気をつけることは
インフルエンザの感染を広げないためには、ひとりひとりが「かからない」「うつさない」対策を心がけることが大切です。効果が期待できる対策として、1.正しい手洗い、2.咳エチケット、3.ふだんの健康管理、4.予防接種を受ける、5.適度な湿度を保つ、6.人混みや繁華街への外出を控える などがあります。日頃から体調管理に留意して、この冬を乗り切りましょう!!
PROFILE
川崎医科大学 総合医療センター 小児科
部長(教授) 中野 貴司
1983年信州大学医学部卒業、1983年三重大学医学部付属病院小児科研修医、1984年尾鷲総合市民病院小児科、1985年国立療養所三重病院小児科、1987年ガーナ共和国野口記念医学研究所派遣(2年間)、1989年三重大学医学部小児科、1995年国立療養所三重病院小児科(この間、中国ポリオ対策プロジェクトへ1年間派遣)、2004年4月 独立行政法人化により"国立病院機構 三重病院"と改称、2010年7月 川崎医科大学小児科教授、現在に至る。