No.6 冬場の感染症 インフルエンザ流行最前線
-準備はできていますか?-
いよいよ2018年もはじまりましたが、寒い冬季は毎年インフルエンザの流行期です。今シーズンも日本のいたるところで患者発生のニュースが流れています。今回は、インフルエンザの最新情報と感染予防法について解説します。また近年では、公共施設や学校でも出入り口に手指消毒用アルコールを設置していますが、子どもに対して使用するべきかどうか悩むことはありませんか。子どもに対しても手指消毒が必要かどうかにも触れたいと思います。
川崎医科大学総合医療センター 小児科 部長(教授) 中野 貴司
インフルエンザの流行期です!
国の推計によれば年間1千数百万人以上が医療機関を受診するとされるインフルエンザですから、誰にとっても身近な病気です。また、子どもや高齢者を中心に重症化や合併症がしばしば起こる病気なので、最新の情報を入手して、しっかりとした対策で予防に備えましょう。厚生労働省により「平成29年度今冬のインフルエンザ総合対策」サイトが開設され、情報提供が行われています。今シーズンのインフルエンザの発生状況や予防、治療に関する情報に加えて、Q&Aや啓発ポスター、動画などが掲載されています。
感染の防止に心がけましょう ー咳エチケットが大切ですー
「咳エチケット」をキーワードとした普及啓発活動は、国からも推進されています。マスク着用の励行や、人混みにおいて咳をする際の注意点などが呼びかけられています。
- 咳やくしゃみが出る時は、他の人にうつさないためにマスクを着用しましょう。マスクを持っていない場合、咳やくしゃみをする際は、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけて1m以上離れましょう。
- 鼻汁や痰の付いたティッシュはすぐにゴミ箱に捨て、手のひらで咳やくしゃみを受け止めた時はすぐに手を洗いましょう。
- 咳をしている人にマスクの着用をお願いしましょう。
- 咳エチケット用のマスクは、薬局やコンビニエンスストアなどで市販されている不織布(ふしょくふ)製マスクの使用が推奨されます。
- マスクの装着は説明書をよく読んで、正しく着用しましょう。
- 咳エチケットを心掛けることは、周囲にウイルスをまき散らさない効果があるだけでなく、周りの人を不快にさせないためのマナーにもなります。
厚生労働省「平成29年度 今冬のインフルエンザ総合対策について」より
手洗いと手指消毒 ー子どもに手指消毒は必要?ー
インフルエンザウイルスは飛沫感染(感染と予防Web 2017年1月号参照)する病原体ですが、咳エチケットの説明でもわかるように、いろんなところに付着している可能性があります。前号のノロウイルスの予防対策(感染と予防Web 2017年10月号参照)でも、ドアノブなど人がよく触れるものから感染する可能性を示しました。手洗いや手指消毒を励行すれば、付着した病原体を洗い流したり死滅させられるので、病原体が伝播する経路を遮断することができます。したがって、手洗いや手指消毒は、感染予防の有効な手段です。手洗いの習慣づけは何よりも大切ですが、流水が近くにない状況もあり得ます。そんな場合は、速乾性手指消毒剤や類似の成分を含有したウェットティッシュが役立ちます。これら手指や皮膚の消毒を目的とした製品は、有効成分としてエチルアルコールを配合したものが多く、塩化ベンザルコニウムやグルコン酸クロルヘキシジンを含むものもあります。子どもに対しても、適切に用いれば感染予防に有効と考えられ、子ども用として含有濃度が低めの製品もあります。ただし、消毒剤であることに変わりはないので、目に入ったり、間違って大量に飲み込んだりしないように注意することは忘れないでください。
PROFILE
川崎医科大学 総合医療センター 小児科
部長(教授) 中野 貴司
1983年信州大学医学部卒業、1983年三重大学医学部付属病院小児科研修医、1984年尾鷲総合市民病院小児科、1985年国立療養所三重病院小児科、1987年ガーナ共和国野口記念医学研究所派遣(2年間)、1989年三重大学医学部小児科、1995年国立療養所三重病院小児科(この間、中国ポリオ対策プロジェクトへ1年間派遣)、2004年4月 独立行政法人化により"国立病院機構 三重病院"と改称、2010年7月 川崎医科大学小児科教授、現在に至る。