子供の感染対策コラム

No.12 夏場の発熱の原因は?

ー懸念されるさまざまな夏場の発熱ー

子どもが熱を出すのは寒い冬に多い印象ですが、夏にも発熱する病気があります。
どんな原因があるのか解説します。

川崎医科大学 総合医療センター 小児科 部長(教授) 中野 貴司

アデノウイルスによる「咽頭結膜熱」

「プール熱」という呼称に馴染みがあるかもしれませんが、正しい病名は「咽頭結膜熱」です。咽頭(のど)や結膜(眼)にアデノウイルスが感染します。かつて、プールでの身体接触、あるいはタオルなどを介して感染することがしばしばあったので、「プール熱」という俗称が付けられました。しかし近年は、水質基準などプールの衛生管理が整備され、タオルの共有もしなくなったので、プールでの感染伝播は減りました。
発熱、のどの痛み、眼の充血、眼脂(めやに)などが症状です。

アデノウイルスに特異的な治療薬はなく、症状を和らげるための対症療法が行われます。予防には、手洗いや咳エチケットが有効です。アデノウイルスは人から人に伝播しやすく、「咽頭結膜熱」は学校保健安全法の第二種感染症です。「主要症状が消退した後二日を経過するまで」は出席停止が定められています。症状などから本疾患が疑われる場合は、医療機関に相談するのがよいでしょう。

アデノウイルス

厚生労働省 咽頭結膜熱について 国立感染症研究所 咽頭結膜熱とは 公益財団法人日本学校保健会 学校において予防すべき感染症の解説(2018年3月発行)

エンテロウイルスによる「手足口病」と「ヘルパンギーナ」

「手足口病」は、手足・口の中やのど・臀部(おしり)に小さな水疱(みずぶくれ)様の発疹ができます。時に発熱をともなうこともあります。
「ヘルパンギーナ」は、のどや口の中に水疱様の発疹や少し凹んだ潰瘍ができます。発熱をともなうことが多く、しばしば高熱となり数日間続きます。

「手足口病」と「ヘルパンギーナ」は、ともにエンテロウイルスが原因です。口内の発疹は痛みをともなうので、食欲が低下します。脱水にならないように水分や食事を摂らせる工夫が大切です。塩分・醤油・ケチャップ・果汁は口内の発疹にしみて痛みが増すので、子どもは嫌がります。プリンやコーヒー牛乳など甘いものは、比較的痛みの刺激が少ない印象です。

エンテロウイルスにも特異的な治療薬はなく、対症療法を行います。ウイルスは糞便中などに長期間排泄されますが、流行の阻止目的での登校(園)停止は有効性が低いとされます。本人の体調がよければ、登校(園)可能です。手洗いの励行は感染予防に役立ちます。

エンテロウイルス

厚生労働省 手足口病に関するQ&A 国立感染症研究所 手足口病とは 国立感染症研究所 ヘルパンギーナとは 日本小児科学会 学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説

いずれも特異的な治療法はなく、対症療法がおこなわれる、
予防には、手洗いや咳エチケットが有効

手洗いや咳エチケット

それ以外に夏場の発熱の原因は?

では、そのほかの原因で夏に発熱することはないのでしょうか。近年の迅速診断検査の普及により、夏でも時にインフルエンザの発生があることがわかってきました。

国立感染症研究所 IASR 夏のB型インフルエンザウイルスによる高齢者施設集団発生事例―沖縄県

 北半球の日本が夏の時、地球の裏側にある南半球ではインフルエンザが流行する冬です。今年はラグビーワールドカップ、来年はオリンピック・パラリンピック東京大会が開催され、世界中の人が日本を訪れます。季節外れの感染症流行にも注意が必要な時かもしれません。

北半球の日本が夏の時、地球の裏側にある南半球ではインフルエンザが流行する冬です。
頭痛・めまい・頭痛・吐き気・筋肉の硬直やけいれん

環境省 熱中症予防情報サイト

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PROFILE

川崎医科大学 総合医療センター 小児科

部長(教授) 中野 貴司

中野先生1983年信州大学医学部卒業、1983年三重大学医学部付属病院小児科研修医、1984年尾鷲総合市民病院小児科、1985年国立療養所三重病院小児科、1987年ガーナ共和国野口記念医学研究所派遣(2年間)、1989年三重大学医学部小児科、1995年国立療養所三重病院小児科(この間、中国ポリオ対策プロジェクトへ1年間派遣)、2004年4月 独立行政法人化により"国立病院機構 三重病院"と改称、2010年7月 川崎医科大学小児科教授、現在に至る。


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