子供の感染対策コラム

No.7 新学期がはじまります

-集団生活での感染症対策準備はできていますか?-

新生活の始まる時期です
春は入学や入園、入社など新しい生活が始まる時期です。慣れない新生活や季節の変わり目のため、体調を崩しやすい時期でもあります。また、このたび初めて集団生活に入る子どもたちも多いのではないでしょうか。子どもが集団生活をおくる学校、幼稚園、保育所では、感染症に出会う機会が多くあります。その対策や準備はできていますか?
日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会では、保育、教育を受ける時期に注意すべき感染症の概要を、最新の知見をもとに紹介し、予防と対策について示しています。集団生活をする子どもたちの健康を守るために有効に活用できる資料であり、その内容について紹介します。

川崎医科大学 総合医療センター 小児科 部長(教授) 中野 貴司

手洗い

感染予防のための適切な手洗いは、手首の上まで、できれば肘まで、石鹸を泡立てて、流水で洗います。手を拭くのはペーパータオルが望ましく、ハンカチや布タオルを使用する場合は個人持ちのものを使い、共用は避けます。石鹸は液体石鹸が望ましく、容器の中身を詰め替える際は、残った石鹸は捨て、容器をよく洗い、乾燥させてから、新しい石鹸液を詰めます。

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咳・くしゃみ

咳やくしゃみをする時は、口や鼻をティッシュで覆い、使用後は捨てます。ハンカチを使う場合は、共用しないようにします。唾液や鼻水が手についたら、石鹸を用いて流水でしっかり洗いましょう。ティッシュのない場合は、手のひらではなく、腕や肘で口や鼻を覆いましょう。飛沫感染する病原微生物は、患者がマスクをすれば周囲に飛び散る飛沫を減らし、予防効果が高いとされます。周囲の者がマスクをつけることも、一定の効果は期待できます。

飛沫感染 感染している人が咳やくしゃみ、会話をした際に、口から飛ぶ病原体が含まれた小さな水滴を近くにいる人が吸い込むことで感染する。飛沫は1m前後で落下するので、1~2m以上離れていれば感染の可能性は低くなる。
(日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説」より)

嘔吐物・下痢

嘔吐した吐物は、ゴム手袋、マスクをして、できればゴーグルを着用し、ペーパータオルや使い古した布で拭きとります。拭き取ったものはビニール袋に二重に入れて密封し、破棄します。嘔吐物や下痢便が衣類に付いてしまった場合は、破棄するか、次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒します。処理後は、石鹸を使って、流水で手を洗います。

適切な汚物の処理方法

汚物(嘔吐物や排泄物)には、ノロウイルスが大量に含まれている可能性があります。感染の拡大を防ぐために以下のポイントを守って「すばやく」「適切に」処理してください。

嘔吐物の処理
  • すばやく適切に処理する!
  • 乾燥させない!
  • 消毒する!

血液・体液

血液や体液には、様々な病原体が存在します。皮膚に傷や病変がある場合は、ガーゼや絆創膏で覆います。鼻出血やけがの処置を行う際は、使い捨て手袋を着用し、終了後は手を洗います。血液で汚染された道具は、手袋をつけてペーパータオルなどで血液が見えなくなるまでふき取り、次亜塩素酸ナトリウムなどに浸し、空気乾燥させます。唾液の付着した玩具は、そのつど洗浄し、乾燥させます。

予防接種の大切さ

日本では、子どもの定期接種としてジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、B型肝炎、麻疹、風疹、水痘、日本脳炎、結核(BCG)、インフルエンザ菌b型(Hib)、13価肺炎球菌、ヒトパピローマウイルスに対するワクチンが、任意接種としてロタウイルス、おたふくかぜ、インフルエンザ(60~64歳の一部と65歳以上は定期接種)などがあります。日常の予防手段として、ワクチンに勝るものはありません。子どもたちはもちろん、かかったことがなく、ワクチン未接種の職員にも予防接種が推奨されます。

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PROFILE

川崎医科大学 総合医療センター 小児科

部長(教授) 中野 貴司

中野先生1983年信州大学医学部卒業、1983年三重大学医学部付属病院小児科研修医、1984年尾鷲総合市民病院小児科、1985年国立療養所三重病院小児科、1987年ガーナ共和国野口記念医学研究所派遣(2年間)、1989年三重大学医学部小児科、1995年国立療養所三重病院小児科(この間、中国ポリオ対策プロジェクトへ1年間派遣)、2004年4月 独立行政法人化により"国立病院機構 三重病院"と改称、2010年7月 川崎医科大学小児科教授、現在に至る。


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