専門家コラム

小暮先生の現場の目

第16回 新たに提示された食品衛生監視票

2018年6月に食品衛生法が改正され「HACCPに沿った衛生管理」が制度化されました。この改正に伴い2021年3月には保健所が営業施設を監視した際に、営業者に交付する食品衛生監視票が新たに提示されています。今回は、この食品衛生監視票について解説したいと思います。

施設基準や衛生管理基準の国内平準化

食品衛生法が改正される以前、衛生管理基準や施設基準については、各自治体が条例で規定していたため、その基準がバラバラで統一されていませんでした。このため、全国展開するコンビニエンスストアやレストランチェーンでは当惑することもあり、全国での統一が求められていました。今回の改正では、バラバラとなっていた取扱いを平準化するために、食品衛生法施行規則(省令)の中に各種の規定を設けています。管理運営基準については、省令に「公衆衛生上必要な措置基準」として別表17と別表18を規定したため全国一律となりました。また、施設基準については、別表19~21に示された参酌基準により都道府県が条例で規定することになり、国内平準化されています。

※表は左右にスクロールできます。

  改正前 改正後 省令別表
管理運営基準 都道府県等が条例で規定 省令第66条2公衆衛生上必要な措置基準 一般的衛生管理基準
(別表17)
特に重要な管理工程(別表18)
施設基準 省令第66条7参酌基準をもとに都道府県が条例で規定 共通施設基準
(別表19)
業種別施設基準
(別表20)
ふぐ・生食肉取扱い施設
(別表21)

一般的衛生管理基準(別表17)

「HACCPに沿った衛生管理」の制度化に当たっては、飲食店など小規模施設は、厚生労働省HPに掲載された手引書に従って、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」により「衛生管理計画」を作成して自主管理することが求められています。手引書については、改正前の2017年3月に手引書策定のためのガイダンスが示されており、このガイダンスに従って多くの手引書が策定されています。その後、2019年11月に省令別表17が発出されましたが、表のとおりその内容が微妙に異なっています。また、2021年3月には食品衛生監視票が提示され、監視指導についても国内平準化が図られています。

なお、食品衛生監視票では、No.9、11、12の情報の提供、運搬、販売については監視項目となっていません。また、No.14の講習受講、仕入先や出荷先の記録、自主検査等については確認するものの採点はしないこととなっています。

※表は左右にスクロールできます。

No 一般的衛生管理項目 別表17 ガイダンス 監視票
1 食品衛生責任者等の選任   1
2 施設の衛生管理 7
3 設備等の衛生管理 5
4 使用水等の管理 3
5 ねずみ及び昆虫対策 1
6 廃棄物及び排水の取扱 2
7 食品取扱者の衛生管理 3
8 検査の実施 2
9 情報の提供  
10 回収・廃棄 1
11 運搬    
12 販売    
13 教育訓練 1
14 その他(講習受講、仕入先・出荷先の記録、自主検査等)  

※監視票の番号は項目数

特に重要な管理工程(別表18)

別表18には、コーデックスのHACCP7原則が記載されています。従業員50名以上の営業者は、この規定をもとに「HACCPに基づく衛生管理」を導入します。別表18の8番目には小規模な営業者への弾力的運用が規定されており、手引書をもとに食品の特性や営業規模に応じて「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を行うこととされています。

食品衛生監視票の監視項目と配点は下表のとおりです。小規模施設については、HACCP管理については採点項目とされていませんので、全般的な事項と一般的衛生管理の40項目70点で評価することとなっています。なお、小規模施設でのHACCPの内容については、「全体的な事項」の中で評価することとされています。全体的事項は、省令第66条2で営業者が定めて遵守すべき「公衆衛生上必要な措置基準」に「食品取扱者への教育訓練」を加えた5項目で、中でも食品取扱者への教育訓練についての配点が高くなっています。

※表は左右にスクロールできます。

監視項目 項目 配点 配/項
全般的な事項 5 26 5.2
一般的衛生管理 25 44 1.8
HACCP管理※ 7 38 5.4
その他 3 0 0
40 108 2.7

※表は左右にスクロールできます。

全般的な事項(営業者の責務) 配点
1 衛生管理計画作成 4
2 手順書の作成 6
3 食品取り扱い者への教育訓練 8
4 記録・保存 4
5 計画・手順書の検証と見直し 4

※HACCPの考え方を取り入れた衛生管理施設は全般的な事項で評価

全般的な事項の評価項目と配点

全般的な事項に関する評価項目と配点は下記のとおりです。手引書を基に「衛生管理計画」や手順書を作成して従事者にその内容を示すだけでなく、定期的に教育訓練することが求められています。また、その教育訓練により十分に効果が得られているか定期的に検証して、必要に応じて見直しすることも求められています。

食品取扱者は、施設の規模や従業員の状況によって様々です。新人やアルバイトをはじめ外国人従事者に対する教育なども必要となっています。ポスターを貼付したりマニュアルを作成するだけでなく、ビデオやユーチューブにより視覚的に教育訓練することも大切ですね!

※表は左右にスクロールできます。

監視項目 評価項目 配点
1衛生管理計画を作成している
  • 一部作成している(衛生管理計画を作成しているが、一部改善の余地がある等)(2点)
  • 衛生管理計画を作成している(1点)
2
  • 作成した衛生管理計画は、食品又は添加物を取り扱う者及び関係者に周知を図っている(2点)
2
2必要に応じて手順書を作成している
  • 手順書:日常的な衛生管理が必要な施設設備や機械器具の使用方法の手順、製造・加工・調理・運搬・貯蔵・販売等の手順が示されている
  • 手順書を全て作成している又は手引書に掲載された手順書を用いている(4点)
  • 作成していないものもあるが、手順が決まっており必要でないため作成していないことの理由が適切である(4点)
  • 手順書を一部作成している(一部作成されていないものがある、作成された手順書に一部改善の余地がある等)(2点)
  • 手順書を作成していない又は手引書に掲載された手順書を用いていない(0点)
4
  • 手引き書の内容に沿った手順書に従い、適切に実施している(2点)
2
3食品取扱者等に教育訓練を実施している
  • 手引き書の内容に沿った教育訓練を、適切に実施している(4点)
  • 一部のものに実施している(2点)
  • 実施していない(0点)
4
  • 手引き書の内容に沿い、教育訓練の頻度は適切である(2点) ※
2
  • 手引き書の内容に沿い、教育訓練の効果について定期的に検証を行い、見直しを行っている(2点) ※
2
4衛生管理
  • 手引き書の内容に沿い、衛生管理の実施状況を記録している(2点)
  • 手引き書の内容に沿い、衛生管理の実施状況を記録しているが、一部不備がある(1点)
2
  • 記録が適切な期間保存されている(2点)
2
5効果を検証し、計画・手順書を見直している
  • 手引き書の内容に沿い、衛生管理計画の効果を検証し、必要に応じて見直しをしている(2点)
2
  • 手順書を作成している場合には、手順書の見直しを行っている(2点)
2

※効果や検証の頻度については施設の状況に応じて判断すること

食品衛生監視票

食品衛生監視票については、下記のHPにその内容、使用方法や評価の考え方が記載されていますので、保健所からの監視を受ける前に自主的に自己採点して、衛生管理計画を見直すことも大切です!是非、皆さん自己採点してみましょう!

「食品衛生監視票について」 薬生食監発0326第5号令和3年3月26日