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専門家コラム

小暮先生の現場の目

第10回 HACCP制度化~手引書の重要性~

食品衛生法改正の目玉であるHACCP"制度化"

2018年6月13日に食品衛生法が改正された。03年に食品安全基本法が創設された際にも大改正されているが、15年ぶりの大改正である。主な改正点には表1の7項目があげられているが、なかでも目玉はHACCPの制度化である。HACCPに基づく衛生管理は、主要先進国ではすでに義務化されており、グローバルスタンダードとなっている。厚生労働省ではHACCPの義務化を目指していたが、食品事業者には中小の零細な事業者も多いことから、義務化ではなく罰則の適用がない「制度化」としてスタートすることとなった。

表1

1 広域的な食中毒事案への対策強化
2 HACCPに沿った衛生管理の制度化
3 特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集
4 国際整合的な食品用器具・容器包装の衛生規制の整備
5 営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設
6 食品リコール情報の報告制度の創設
7 その他

食品事業者の規模とHACCPの内容

HACCPが制度化されて1年以上が経過し、細かな政省令はこれから出される予定である。政令案では一般飲食店の他、従事者50名未満の食品事業者については、HACCPそのものではなく「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書」を参考にして、HACCPを取り入れていくこととされている。

今後、従業員50名以上の食品事業者は、HACCPに基づく衛生管理のため、厚生労働省のHP等(15年10月作成の11種と、冷凍食品製造事業者向け及び健康食品製造向け)を参考に自主的に導入を図っていくこととなる。その他の飲食店や従事者50名未満の食品事業者については、各団体が作成し「HACCPの食品衛生管理に関する技術検討会」で確認を受けた手引書(厚生労働省HP掲載。19年8月末現在で44種。)をもとに衛生管理計画を作成していくこととなりそうだ。

手引書の重要性が増加

厚生労働省は、HACCP関連事業として導入支援事業を地方自治体や民間企業に委託する他、監視指導に当たる保健所の食品衛生監視員の研修を進めて指導の平準化を諮る予定である。また、農林水産省では、HACCPに沿った衛生管理を実施している食品事業者の割合を34%(17年度)から80%(21年度)にするという政策目標を掲げており、手引書の作成や人材育成の支援を行う予定である。19年度、新たに約40団体の手引書作成が見込まれている。また、どの団体にも属していない小規模な食品事業者もあることから、今後どのようにHACCP制度化を進めていくかが課題となりそうである。

当初の厚生労働省の説明では、業界が作成した手引書については保健所の監視指導の参考にする程度であったが、先般のパブリックコメントへの回答では、「都道府県等の食品衛生監視員が食品等事業者に監視指導(導入支援)を行う際には、監視指導を平準化し、過度な指導を行うことがないよう、手引書が作成されている業種については、手引書に基づき実施します」と記載されている。なお、「手引書が未整備の業種については、引き続き作成の働きかけを行う」とされており、手引書の重要性が増加しているように感じられる。

中でも、東京都と東京都食品衛生協会が作成した「食品衛生管理ファイル」は、日本食品衛生協会が作成した「小規模な一般飲食店」の手引書をもとに一般飲食店が管理しやすく保健所でも指導しやすいよう工夫されたものである。今後、東京都の小規模な飲食店等は、このファイルを利用するものと考えられるため、参照されたい。

肉の加熱温度と硬さ

↑東京都の食品安全情報サイト「食品衛生管理ファイル」はこちら↑

食品衛生法の改正に伴い、従来の「公衆衛生上講ずべき措置の基準」が省令となり全国で一律となる予定である。しかし、全国展開している食品企業の品質管理担当者と面談すると、各自治体や保健所によって指導がバラバラであることに対して不満や愚痴を聞かされることが多い。パブリックコメントでも同様の意見や要望が多く、監視指導の平準化については「保健所等の指導に疑問がある場合に、相談するための国の窓口を設置することについて、今後検討します」と回答されている。

元食品衛生監視員としては、当初のHACCP義務化が、食品事業者に負担のかからないHACCP制度化となったことは、肝心のHACCPが骨抜きになったようにも感じる。いずれにしても、食品事業者や保健所はもとより、消費者にとってもわかりやすく実効性のあるHACCP制度化となることを期待している。