専門家コラム

小暮先生の現場の目

第14回 HACCP制度化に伴う営業届出制度の創設と営業許可制度の見直し

営業届出制度の創設

いよいよ、令和3年6月に改正食品衛生法が施行されます。原則、全ての営業者がHACCPに沿った衛生管理を行うようHACCPが制度化されました。これに伴い、全ての営業者を把握するため、営業届出制度が創設されました。営業許可以外の営業者で食品や添加物を取扱う営業者、器具容器包装の製造業者など、広範囲の営業者に保健所への営業届出が必要となります。なお、営業届出については、厚生労働省の「食品衛生申請等システム」のHPから届出することも出来るようになりました。また、近年の食中毒発生状況などを勘案して、営業許可制度も見直されています。

HACCP制度化と衛生管理計画

営業者は、自主的に衛生管理計画やマニュアルを作成して衛生管理を行い、実施結果は記録保存して定期的に計画やマニュアルを見直します。

表1の営業許可と営業届出(赤い部分)がHACCPに沿った衛生管理を求められる営業者となります。

HACCPに沿った衛生管理については、大規模事業者については、HACCPに基づく衛生管理が求められていますが、飲食店や小規模な食品製造業や営業届出施設については、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理が求められています。

表1 営業者と衛生管理計画

※表は左右にスクロールできます。

食品衛生法に基づく営業者
許可・届出 衛生管理計画
一般衛生管理 HACCPに沿った衛生管理
営業許可 飲食店営業など
32業種
大規模事業者
50人以上
HACCPに沿った衛生管理
小規模事業者 HACCPの考え方を取り入れた衛生管理
営業届出 許可以外の営業で届出不要業態以外 弁当の販売給食、八百屋など
届出不要業態 食品・添加物の輸入業
食品の貯蔵・運搬業
常温長期販売品の販売業
器具容器包装の輸入業、販売業
衛生管理計画の作成と記録・保存は必要に応じて行う

農業及び水産業における食品の採取業は除く(食品衛生法第4条第7項)

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理

食品業界ごとに、衛生管理計画を作成するための手引書が作られており、厚生労働省のHPに掲載されています。一般衛生管理や各種マニュアル、記録用紙などが掲載されていますので、自らの営業に合った手引書を参考にして、衛生管理計画を作成してみましょう!今回の改正では、HACCPの考え方を取り入れるため、罰則の適用がある義務化ではなく制度化となっています。まずは皆さんが、自主的に衛生管理計画を作ってみることが求められています。

なお、HACCPの考え方では、危害要因を分析する(HA)ことが一番大切だと思います。皆さんの営業の中で、どの原材料やメニュー、製造工程にどのような危害要因があって、それが食中毒や異物混入などの健康被害に結び付くリスクがどれ位あるかを考えることが大切です。この点が、はっきりしていないと適切な対応策も作れませんね!このため日頃から、食品衛生講習会に参加したり、食品衛生に関するニュースや情報を収集する習慣を付けましょう!

新しい制度ですので最初から完璧なものは出来ません。まずは作ってみて、不明な点は保健所等の指導を受け、順次適切な衛生管理計画として行けば良いと思います。

なお、営業許可、営業届出ともに施設ごとに食品衛生責任者の選任が必要ですので、資格のない方は、食品衛生協会等が実施している食品衛生責任者養成講習の受講に努めましょう。

営業許可制度の見直し ~34業種を32業種に~

食中毒等のリスクや規格基準の有無、過去の食中毒の発生状況を踏まえて、許可業種が見直されました。また、原則として一施設一許可となるように許可業種が統合されています。見直しの主な点は表2のとおりです。

なお、現在の営業許可期限が切れるまでは、そのまま営業することができ、許可の更新の際に新しい許可制度に移行することとなっています。また、新規許可業種については、3年間の猶予期間が設けられています。

ただし、衛生管理計画の作成やHACCPに沿った衛生管理については令和3年6月からの実施が求められていますので、お忘れなく!

表2 営業許可制度の見直し

※表は左右にスクロールできます。

新しい営業許可・届出(旧許可) 理由
新許可 漬物製造業
水産製品製造業
液卵製造業
食中毒のリスクが高い
食品の小分け業 専業者の把握
許可から届出に変更 乳類販売届(乳類販売業)
氷雪販売届(氷雪販売業)
食品の冷蔵届(食品の冷蔵業)
包装食肉販売届(食肉販売業)
包装魚介類販売届(魚介類販売業)
食中毒のリスクが低い
統合した業種 飲食店営業(喫茶店営業)
菓子製造業(あん類製造業)食用油脂製造業(マーガリン製造業等)
みそ・醤油製造業
一施設一許可となるよう統合
複合型営業許可 複合型そうざい製造業
複合型冷凍食品製造業

施設基準と食品取扱基準の平準化

今まで、施設基準や食品取扱基準については、各都道府県が条例で規定していましたので、各都道府県での指導方法が異なるなど、全国展開している食品事業者にとっては負担となっていました。今回の改正で、食品の取扱基準である「公衆衛生上必要な措置」は食品衛生法施行規則(省令)に規定され全国で一律となりました。また、施設基準も各都道府県でほぼ同じ基準(参酌基準)となる予定です。各都道府県で、異なっていた指導方法については平準化され、従来の指導方法とは異なる場合もあるかと思いますのでご留意ください。

参考

詳しい改正内容については、厚生労働省の下記のHPに解りやすい動画が掲載されていますので、是非ご覧ください。