企業レポート

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vol.4 髙島屋

「まち」をつくり、人に寄り添う、老舗百貨店「髙島屋」の感染対策


髙島屋グループ全体の会社概要についてお聞かせください。

百貨店業を主軸としている企業で、1831年京都で創業しました。主要店舗は、国内に15店舗、海外に4店舗あります。その他にも、商業開発業、金融業、食品・レストラン業など幅広い事業を手がけています。髙島屋本体の従業員数は7,702名で、「いつも、人から。」を経営理念としていますが、その根底には近江商人の精神である「三方よし」があり、投資家の皆様、地域社会の皆様、全ての人の幸せを考え、実直に商売をする、ということが弊社のDNAとして刻まれています。 また、他の百貨店と差別化される1つとして、まちづくり戦略があります。グループ会社にデベロッパーがあるように、百貨店というフラッグシップのまわりを活性化させ、地域社会との共生を目指すとともに、百貨店自体もひとつのまちと捉え、幅広いお客様の人生に寄り添えるよう、館の魅力の最大化に取り組んでいます。


今回取材させていただく、横浜店の詳細についても教えてください。

横浜店は1959年に開業しました。横浜のまちと共に発展し、現在では1日に平均7万人のお客様が来店される大型店へと成長しました。地上8階・地下2階建、店舗面積は5万6000㎡あります。2021年3月には地下フロアの増床が完了し、日本最大級の地下食料品フロアがグランドオープンしました。従業員数は約1,000名で、登録業者(実員)が約4,000名おります。

新型コロナ発生時の状況や対応についてお聞かせください。

2020年に緊急事態宣言が出され、生活必需品である食料品フロア(全体の1/3程度)の従業員のみが出勤していましたが、この時期はマスクの品薄が続いており、売場の従業員用のマスクを調達するのに大変苦労しました。宣言解除後は、休業していた従業員が戻り、人数が増えることで密も増えるので、リスクを洗い出し、対策を講じました。例えば、従業員用エレベーターの利用者を制限し、代わりにお客様用エスカレーターを使用することで密を回避しました。また、私服勤務を許可し、密になりやすいロッカールームの使用自体を減らす対応をしました。社員食堂の席の間引きとパーテーションを設置したのもこの時期です。お客様への対応としては、従業員同様、出入口の手指消毒剤の設置やエレベーターの使用制限などを行ない、今も継続して実施しています。当時は営業縮小により、さみしい思いをされていたお客様も多かったようで、営業再開時には感謝していただき、大変有難かったです。

髙島屋は"まち"を元気にする存在ですね!

感染対策を徹底するために行なっていることはありますか?

まず、従業員入り口にポスターを掲示し、消毒と検温の徹底を呼びかけています。また、各部門に安全衛生推進者がおり、日ごろから危険な事柄などを共有し、改善が必要な場合は総務へ報告し対応する、という体制を整えています。労働集約産業である我々は、トップダウンだけでは成り立たないことも多く、ボトムアップにより、現場で今何が足りないのかを吸い上げています。

昨年も感染防止アンケートをとり、店内でのリスクと対策についてヒアリングしました。その一例として、「ドアノブからの感染が怖い」という意見があり、手指消毒剤を設置するとともに、一部のドアノブを、回すタイプから肘で開閉できるタイプに付け替えました。「パウダールームで歯磨きをする際、左右からの飛沫が気になる」という声もあり、ポールとビニールシートを使い、仕切りを設けました。



他にも社員食堂のテーブルやトイレまわりの消毒グッズの配備など、現場の気づきによって改善したものがあります。また、対策の基本である手洗いやうがいの徹底については、流行当初は発信することもありましたが、今は積極的には行なっていません。それでも、従業員一人ひとりの防疫に関する意識は非常に高いと感じています。人と対面で販売・接客してきたからこそ、感染対策においても人を守りたいと思う気持ちが、意識の高さに繋がっているのだと思います。


平時からすでに手洗い・うがいの習慣が根づいていたのですね。

弊社のうがい器を設置いただいておりますが、導入の経緯や使用状況についてお聞かせください。

私が入社した時にはすでに導入されていたのですが、接客業をする上で必要となる防疫、口臭対策へのアプローチとして、口腔内をケアできるものはないか検討した結果、導入に至ったと聞いております。当時の従業員からの要望が大きかったのだと思います。現在、7階社員食堂に3台、5階社員食堂に1台あります。7階については、席数が700席以上あり、利用者の多い食堂です。



食事の前後に手洗い・うがいがスムーズにできるよう、メイン入り口の手洗い場横に配置しています。また、順番待ちによってうがいタイミングを逸してほしくないという思いから、回転数が上がるよう、2台を横並びで設置しています。


実際に使われている方の様子はいかがでしょうか?


うがいをするまでのステップがペダルを踏むだけなのは、接触が減らせるだけでなく、アクセシビリティも高く、習慣化するうえでは非常に重要だと感じています。いつも使用しているという声も多く上がっています。しかし、今回のコロナによって飛沫感染のリスクを考えると、使用しずらい・使用していないという声が出るようになりました。産業医とも話し合い、防疫上、うがい液を吐き出したところで、他の人がうがいをする、という行為を避けるため、2台横並びにしているものに関しては、うがい用、吐き出し用と用途を分けて使用するよう、改善しました。

感染対策以外に従業員の健康づくりとして取り組まれていることはありますか?


健康保険組合と連携し、健康診断等によって従業員の健康状態を把握・改善できるよう、日々努めています。横浜店独自の取り組みとしては、昨年「朝ヨガ」のイベント開催しました。運動不足による肉離れが、労災の原因になった事案を踏まえて企画したものです。従業員は40~50代の割合が多いのですが、身体の不調も出やすくなる年代です。


永く健康的に働いてもらうためにどういったアプローチが必要なのかを検討し、対応してくことが今後の課題のひとつです。


接客をする上で身体面はもちろんですが、メンタル面も合わせてケアしていくことが大切だと考えております。健康に関して、潜在的なニーズとして高いのは「リフレッシュ」だと思います。健康経営においても、ワークライフバランスの充実はひとつの指標になりますが、弊社は有休の取得日数も多く、残業時間も少ない状況ですので、従業員と事業者の考えがマッチし、対応できている結果かと思います。



我々の業界は早番・遅番勤務もありますので、しっかりと休むことは健康管理をする上で大前提であり、とても大切なことだと考えています。


最後にメッセージをお願いします。

コロナの流行により、お客様の利便性を改めて見直すきっかけとなりました。流行から2年が経過し、実店舗でのお買い物をされる方が増えてきました。兎角オンラインでの対応に流れがちですが、お客様がリアルな買い物体験を求められていることや、人と相対することの重要性を感じました。非常に励みになりましたし、有難く思います。今後も万全の態勢でお客様をお迎えできるよう努めてまいります。

インタビューご回答者


左)横浜店 総務部 総務グループ グループマネージャー 課長 齋藤 諭 様
右)横浜店 総務部 総務グループ 人事・総務担当 係長 田中 啓太郎様

企業プロフィール


社名:株式会社 髙島屋
創業:1831年1月10日
本社所在地:大阪府大阪市中央区難波5丁目1番5号
従業員数:11,917名(連結)
※2022年2月末時点
営業収益:2022年2月期 7,611億円(連結)


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