企業レポート

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vol.2 森ビル株式会社

「逃げ出す街」から「逃げ込める」街へ。 日本を代表する総合ディベロッパー森ビルの目指す街づくり


森ビルの目指す街づくりについて教えてください。

 自然災害多発国である日本において、30年以内に70%の確率で首都直下地震が発生すると言われています。弊社が理想とする都市「Vertical Garden City-立体緑園都市」は木造密集地域で防災面において脆弱で細分化された土地を集約し、超高層化・耐震化・不燃化することで、地上に広いスペースを生み出し、緑化することでの憩いの場や人と人が出会い、交流し、多彩で活発な経済活動や文化活動が生まれる賑わいを創出する場をつくり出す街づくりで、「安心・安全」、「環境と緑」、「文化・芸術」をテーマにコンパクトかつ世界に誇れる街づくりを行っています。


施設利用者の安心・安全を守る取り組みについて具体的に教えてください。

 まずハード面においてですが、建物の耐震性が非常に重要であることから、六本木ヒルズでは、2種類の制震装置を導入し、耐震性と快適性を兼ね備えた建物となっています。また、電源の確保を行うことは、お客様の事業・生活継続支援や帰宅困難者を受入れるという観点からも非常に重要と考え、六本木ヒルズでは、独自のエネルギープラント(特定送配電事業)を設け、有事の際も電力会社の電力供給に影響を受けることなく安定的な電力の供給が可能です。また、電気、蒸気、冷温水を六本木ヒルズの各施設に供給しており環境負荷の低減も図っています。

 ソフト面においては、全社員を対象とした大規模な震災訓練を年に2回実施する他に、六本木ヒルズ自治会との共催で周辺の町会、商店会や学校等と行政とが連携した震災訓練も年に1回開催しています。それ以外にも有事の際に速やかに防災拠点ビルに駆けつけ初動活動を行えるよう防災社宅を六本木ヒルズ周辺に設けており、防災社宅居住者向けの初動活動訓練を年に6回開催し、技能・知識の習得と防災意識向上を図っています。

 また、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて外国人来訪者の増加に伴い、英語・中国語が堪能な弊社海外事業部所属の社員を活用した帰宅困難者受入訓練等も行っています。今後も試行錯誤を重ね、翻訳アプリ等のICTの導入含めて外国人対応の強化を図っていきたいと思っています。

帰宅困難者受け入れに伴う二次災害対策としてはどのようなことをされていますか?

 当社では、六本木ヒルズで5000人、虎ノ門ヒルズで3600人、その他の施設を含めて、約10000人の帰宅困難者を3日間受入れることで港区や渋谷区と協定書を締結しており、受入場所の確保や食料や資機材等の備蓄、受入施設の運営や誘導等を行う人員の確保を行っています。帰宅困難者用の備蓄品については、東京都民間一時滞在施設備蓄品購入費用補充事業を活用しています。インフルエンザやノロウイルスなどの流行が懸念されますので、感染拡大に備えマスクや手指の消毒剤、嘔吐物の処理キットを用意するとともに、罹患者用の受入場所を確保することも考えています。また、施設運営スタッフ用に怪我人の救護活動等に備え、血液に触れないようゴム手袋やエプロンなどのPPEも準備し備蓄倉庫に保管しています。


災害時の断水や備蓄の問題も深刻だと思いますが、何か準備はされてますか?

 弊社の主要施設では、上水の供給が停止されることを想定し、災害用井戸を設置しています。災害時には施設の生活用水として利用するだけでなく、近隣の方の生活用水として利用頂くことも想定しています。
 また、排水管への亀裂や下水処理施設の機能停止を踏まえ、簡易トイレ(便器に被せて使用し、凝固剤で排泄物を固めるもの)も大量に用意しています。



 備蓄品については、「安心・安全」であることはもちろん、環境にも配慮した商品であることが大前提です。食料については、水、アルファ化米、クラッカー、レトルト食品、栄養補助食品などを用意し、3日間飽きない工夫を行っています。


また、高齢者や子供、食べ物アレルギーの方への配慮を行うと同時に、最低限のカロリーが摂取できるようなものを用意しています。施設運営側としては、コスト面も重要ですが、備蓄倉庫のスペースや運搬のしやすさ等を考慮し、コンパクトかつ軽量であることも商品を選ぶ際には重要視しています。備蓄食料に関しては、賞味期限切れ管理も重要ですので、保存期限を統一するとともに、長期にわたって調達可能(事業継続可能)なメーカーを選定し購入しています。



賞味期限切れの近い商品の処理についても検討しておくことが重要です。弊社では、廃棄することは、コスト面もさることながら、環境配慮の考え方から弊社の震災訓練時の参加者への配布や区・町会主催の訓練への提供等を行っています。


今回お聞きした内容も従業員の健康があってこそ成り立つことだと思います。最後に従業員の健康危機管理についても教えてください。

 まずは、基本となる年1回の健康診断に注力しています。保健室の保健師を中心に受診の徹底を呼び掛けた結果、ここ数年は毎年99%以上の方が受診していますが、100%を目指して今後も取り組んでいきたいと考えています。また、生活習慣病予防として特定保健指導の対象は40代からですが、弊社では産業医と相談しながら20~30代でもそのリスクが感じられる社員については積極的に指導を実施しています。

 ストレス診断については、2016年から法制化されましたが、弊社では2013年より毎年恒例で実施しています。産業医や保健室によるフォローに加え、カウンセリング等が必要であろう社員についてはEAPサービスを使ったカウンセリングの案内などを行なっています。組織診断の結果に応じ、人事とも連携しながら各部署ごとに職場環境の改善に努めています。



 また、毎年インフルエンザの集団予防接種を実施していて、社員は誰でも接種することができます。


 少し珍しい取組みとしては、社員が身体のメンテナンスを気軽にできるよう社内にマッサージ室を完備しています。常時2名のマッサージ師がいますので就業時間内に施術を受けることができます。大変好評で2004年から継続している取組みです。
 また、会社による健康管理以外にも、社員個人の自発的な健康増進をねらいとし、カフェテリアプランメニューの1つとしてスポーツ施設利用補助を実施しています。




 今後も、社員一人ひとりが心身ともに健康でいきいきと働き続けることができるよう産業医、保健室、人事部で連携しながら取り組んでいきたいと考えています。


インタビューご回答者


左)広報室 秋葉 千恵様
中)震災対策室事務局 事務局長 寺田 隆様
右)人事部 岡田 真澄様

企業プロフィール

社名:森ビル株式会社
設立:1959年6月2日
本社所在地:東京都港区六本木6丁目10番1号
      六本木ヒルズ森タワー
社員数:1,294名(2017年4月)
売上高:2,587億円(2017年3月期 連結)
賃貸ビル数:97棟(2017年4月)
賃貸面積:約128万m²(2017年4月)
入居会社数:3,008社(2017年4月)


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