発災後1週間が経過
避難所内で感冒様症状を含め、呼吸器感染症・感染性胃腸炎の流行、被災後の心的ストレス反応への対応...。過去の経験を教訓に、感染対策や衛生管理を推進していくことは、避難所を運営する立場として必須条件です。懸念される2次災害を未然に防ぐ、または最小限に抑えるポイントの解説と、役立つツールの紹介、準備しておきたいアイテムを紹介いたします。
手指衛生の励行とうがい
基本の基本
手指衛生の基本
人がり患する要因の多くは、手に付着した病原微生物(細菌・ウイルス等)が手を介して鼻や口、目から体内に入ることです。手は見た目に汚れていなくても病原性微生物が付着している可能性があるため、水道設備がある場合は石けんと流水を用いてきれいに洗い流しましょう。水道設備がなく、見た目に汚れがない場合はアルコール手指消毒剤を活用し、見た目に汚れがある場合はウェットティッシュ等で拭取り後、アルコール手指消毒剤を活用しましょう。
手指衛生遵守率が向上すれば感染率は下がります!
手洗いのタイミングとポイント
- 外出後、屋外での作業後の屋内への入室時、調理や配膳作業前、食事の前、トイレの後、排泄処理後( 特に、感染症の症状のある方の排泄物(オムツを含む)・嘔吐物の処理後など)
- タオルの共用はせず、ペーパータオルか個人用タオルを用いる
- 避難所の出入り口やトイレ、調理場や食事をする場所などにアルコール手指消毒剤の設置
おすすめ対策アイテム
うがい
インフルエンザなどの呼吸器感染の対策にうがいは有効です。
さらにうがい薬を使用することで、殺菌、口腔内や気道に付着した細菌やウイルスを減少させる効果、虫歯を予防することが報告されています。また高齢者は、口腔内で増殖した菌を食事と一緒に喫食することで起こる肺炎(誤嚥性肺炎)も注意が必要です。
うがいのタイミング
- 食事の前後、歯磨きが出来ないとき、風邪やインフルエンザ、ノロウイルス流行期、屋外での作業後、空気が乾燥しているとき
(※喉の保湿としてはマスクの着用も有効)
過去の被災地で起こった事例
- 岩手の被災地では食生活の偏りに加え、歯磨きが十分に出来ない状況が続いたことで、子どもの虫歯が増加
- 2011年11月15日(火) NHK備える防災
- 阪神・淡路大震災では、最も多数を占めた震災関連死の原因は肺炎が原因で24%を占めた。
- H19~21 年度 厚生労働科研報告書「 大規模災害時の口腔ケアに関する報告集」
おすすめ対策アイテム
入口・トイレなど
感染対策ポスターの掲示
感染対策ポスター・衛生的手洗い手順は、避難所内の以下の場所に掲示すると効果的です。
- 多くの人の目にはいる場所・・・・( 出入口付近・掲示板など)
- 伝播リスクの高い場所・・・・(トイレ・手洗い場・調理室など)
サラヤがお手伝い出来るコトがあります
サラヤでは常時豊富な啓発ポスターを取り揃えております。なぜ手洗い・うがいが必要なのか、手洗い場、トイレ等、目につくところに掲示することで、衛生対策を促すことが出来ます。
感染症伝播がおこりやすい
共同トイレの衛生維持
不特定多数の人が共有する避難所のトイレは環境が悪化しやすく、感染者の排泄、嘔吐物には大量の菌やウイルスが含まれるため、放置または不適切な処置を行うことで、集団感染が発生する危険性が高まります。これらを予防するためには、定期的に適切なトイレの清浄が重要です。
トイレ清浄のポイント
- 清浄前にマスクと使い捨ての手袋、汚染度に応じて使い捨てエプロンを着用し、使用後は他の人に触れないよう留意して廃棄
- 手が触れるドアノブ、手すり、便座、便座フタ、トイレロールホルダー、水洗レバー、水道蛇口も都度かならず清拭
- 清掃後は手指衛生を励行
オムツ廃棄について
- オムツは専用の廃棄場所を指定
おすすめ対策アイテム
居住区のスペース確保とストレス反応への対応
避難所では高齢者から乳幼児まで一か所に多くの方が集まり、密接した空間にいることから、呼吸器系の感染症が蔓延しやすい状態になります。また身体を清潔に保てないことは精神的な不安定をもたらします。このような避難生活は、睡眠不足、偏った栄養状態、心的ストレスから免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなるため以下のような対策を講じます。
理想的な居住区
- 避難所の居住区では、個人(家族)間の距離を1~2m程度保つ
- 十分な距離が確保出来ない場合は、段ボールやパーテーション等を用いる
- 可能な限り、午前・午後に換気を実施
- 感染症り患者が発生した際は、個別に収容する場所を確保
ストレス反応への対応
- 十分な入浴が出来ない場合に応じて、大判のウエットティッシュ等を準備
おすすめ対策アイテム
感染症り患者の把握と対応の徹底
- 職員、ボランティアなどのスタッフは、手指衛生とマスクの着用を励行し、感染症の症状がある者は従事しません
- 避難者は発熱・下痢など体調の変化が見られた際の、スタッフへの報告の徹底
- 避難所の感染管理上のリスクを定期的に評価し、感染管理上の問題点を把握する
避難所生活における感染管理上のリスクアセスメント表(国立感染症研究所) - 治療を要する感染症り患者の、搬送先医療機関への連絡体制を構築
清潔な食品管理と食品衛生の徹底
非常事態に開設される避難所は"衛生環境の悪化"などから食中毒が容易に発生しやすい環境です。
一般的な食中毒は夏期の梅雨頃から増加し、ノロウイルスによる感染症や食中毒は冬期に増加することから、避難所でも一年を通した食中毒対策が求められます。
断水時や避難所における食中毒対策
災害直後からインフラが破壊され、水道水が使えない環境では、清潔な状態を保つことが難しく食中毒などが発生しやすい状況といえます。
備蓄品などの水が貴重な状況下で炊き出しなどの食事を提供する場合の衛生管理には特に注意が必要です。
おすすめ対策アイテム
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災害時食品衛生
食品取り扱い現場における災害復旧時の初期化作業
水道水・電気等インフラが復旧し、食品製造事業者が食品の製造・販売を再開させるには製造現場を災害前の衛生状態に戻す必要があります。安全で安心な製造ができるよう、適切な薬剤を用いて、作業場や製造機械・器具などの初期化作業(洗浄・消毒)を行ないましょう。