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Case

鮮℃ニッポンVol.8

コールドチェーンを通じて、産地と消費者の橋渡しを応援します。

「海の京都」宮津で水産卸から加工・小売り、飲食店運営など幅広い業態を展開している 水産会社株式会社山一水産の現場を訪問

株式会社

山一水産

HACCP対応の加工場を設立し、 事業の取組みについての発信拠点 となる物販や飲食店を展開。

  • 取締役専務
    佐田野 寛司氏
 

※2023年2月時点

山一水産は海の京都丹後の地で水産卸会社として抜群の鮮度を保ったままの鮮魚を産地から直接発送し、 卸業だけでなく加工から製造、物販店舗や飲食店の運営など幅広い業態に事業展開されています。 

コロナウイルスへの対応

未来を見据えた次世代の魚食文化再構築を

水産卸業をされる中でurocobase(直販店)を作られた経緯について

京都府宮津市は水産業の産地として、今岐路に立っています。漁獲量が20年前より減少傾向にあり、7年前と比較してもかなり減っています。 中でも需要と供給のバランスが合わないことが最も頭を抱える課題です。漁獲量により価格が変動するため、事前にメニューを計画する旅館や飲食 店で魚を使いにくくなっているのが現状です。さらに、コロナ禍により主な取引先である飲食店やホテルが休業し、流通の仕組みが大きく変わった ため、卸業をメインにしていた私たちは先行きが不透明になってしまいました。流通量は減少しましたが、個人需要は減っていないことから、私 たちはBtoC向けにも展開する「uroco」という新規事業ブランドを立ち上げ、外出自粛中の消費者に直接届ける仕組みをいち早く取り組みました。 「uroco」では、サラヤの冷凍技術を導入し、大漁時にまとめて仕入れて、長期保存が可能になることで、価格と在庫が安定し、事前にメニュー組み をされる取引先様への安定供給が可能になりました。また、私たちは料理人さんのニーズに応えるため、注文を受けてから加工し、お届けしています。 お客様の需要にお応えできるのも産地の強みですし、お客様としっかり連携を図ることで私たちの思いも伝わっていると思います。BtoB・BtoCの 取組みの発信拠点として、宮津に鮮魚直販店・次世代加工場「urocobase」をオープンしました。それが水産業の中では革新的な取組みとして注目 を浴びているという状況です。

水産卸業をされる中でurocobase(直販店)を作られた経緯について

冷凍を活用した目指す方向性について議論を重ねて

ラピッドフリーザーを導入して最もよかった点は、流通コストを下げることができたことです。鮮魚で輸送する場合、箱に4割~5割の氷で埋め られます。一方、冷凍した魚やフィレだと氷を入れないので、流通コストを大きく抑えることができます。ラピッドフリーザーで急速凍結した魚 は思った以上に品質が良く、解凍後も再現率が高いのでお客様に非常に満足していただいています。弊社では、解凍後の品質を高めるため常に3 パターンの冷凍テストをしています。ドリップシートの種類や吸水芯を変えたり、表面の脂を取る紙だけを使用するなど包装資材の種類と使い方 を変えるなど試行錯誤しています。小型マグロの凍結テスト時に課題として上がったのが、解凍後もしっかりとして日持ちしそうな状態でしたが 舌触りや食感、本来の風味が失われていました。社内で議論をし、日持ちするための冷凍が目的であれば問題はありませんが、私たちが本当に 目指すのは良い状態で冷凍し、お客様の元で解凍しても、フレッシュな状態を再現できるのかというところに行きつきました。試行錯誤の結果、 水分を取り切らない方が身にみずみずしさが残り、魚本来が持つ光沢感が出て、獲れたての新鮮さを感じることができるというところに辿りつき ました。水分の残しすぎによる冷凍焼けや水分を取りすぎて旨みまで吸わないよう資材や使い方を模索し、お客様にとって1番良い状態の魚をお 届けするための方針が決めました。まだ導入したところで、どのくらい期間鮮度を維持し、保存できるのかは未知数なので、これからデータを作っ ていきたいと思います。また、今、1番いい状態の冷凍技術が入ったので、今後冷凍を活用して何か新しい取組みをしていきたいと思っています。

冷凍を活用した目指す方向性について議論を重ね_1 冷凍を活用した目指す方向性について議論を重ね_2

魚食文化を再構築したい

魚は和食や日本料理には欠かせない食材ですが、若い世代では簡単に焼いて食べられる肉食文化の方が定着しています。日本人の魚離れが進んで きた中で、もう一度魚食文化を定着したいと強く思っています。特に子供に魚を食べてもらいたいという想いがあり、コロナ禍に自宅で食べられる 魚の詰め合わせセットをEC販売し始めました。販売する際には「外出自粛によるストレスが溜まっているお子さんと一緒に一つのアクティビティ として調理してください」とひと文を添えたところ、ファミリー層からの注文が殺到しました。毎月定期的に購入いただくお客様も多く、コロナ禍 の4年の間で36回注文される方もいらっしゃいました。SNSを上げた時には、毎日100件程の画像や動画が送られ、その中でお子さんが楽しそう に調理している様子や、中には3枚おろしが上手にできるようになったというお子さんまでいて、非日常の体験として、多くの方に魚に触れて いただく機会となりました。また、子どもたちに向けた食育の機会としても魚種名も丁寧に明記して提供し、未利用魚や低利用魚など市場に出回ら ない魚にも興味を持ってもらえるように取り組みました。魚食文化を再構築するためにも手軽に食べられる湯煎するだけの完成品や少し調理する 半製品など冷凍惣菜もどんどん展開していきたいと思っています。

魚食文化を再構築したい

未利用魚・低利用魚にも新たな価値を創造

これまで産地では高級魚を新鮮な状態で地方都市に送ることに重きを置かれ、 扱いづらい未利用魚や低利用魚の活用にあまり取り組んできませんでした。 擦れてしまったり、傷があるという理由から良いものにも関わらず市場には 出回らない魚などが産地では手に入りやすいという反面、仕入から加工・製造 というところまで対応できないことが産地の課題でした。未利用魚や低利用魚 というのは、流通されないからといってタダ同然の価値というわけではなく、 美味しいが、加工に手間がかかり、大量に揚がっても捌ききれないという現状です 。私たちは加工施設を持ち、加工・保存技術を活用することで、未利用魚を美味 しく加工して消費者の方に届けることが可能となりました。私たちの活動により、現在高級魚と言われる魚も数年後には価値が変わっている 可能性もあります。これまでの価値を変え、未利用魚・低利用魚にも新たな価値を創造し日本の漁業を守るために取り組んでいきたいです。

未利用魚・低利用魚にも新たな価値を創造

今後の事業展開について

様々な社会課題の中で、水産業で何とかしたいという想いはとても強く、山一水産の活動に共感した若い世代が地元や遠方からも多く入ってきて います。社内全体でこれから未来のある水産業を考えた時に、宮津で活動する水産業者の想いやどのような魚が京都で水揚げされ、消費されている のかを京都市内の人まで伝えることが社会意義としてとても重要だと思いました。持続可能な漁業を守るために、地産地消は非常に大事だと思い、 発信拠点として京都市内の錦市場「丹後TABLE」内に飲食店を構えました。しかし、京都の人は本物を求めるところが強く、最初は新参者はなか なか受け入れてもらえないというのを感じましたが、私たちは本物を提供しているので、少しずつ受け入れてもらい、私たちの想いを汲み取って 応援して下さる人が増えてきています。「urocobase」もオープン時は山一水産が面白いことをしていると地元の方に見に来ていただいたり、イベ ントでも大きく売上げたということはありますが、やはり、町の魚屋の意義として、通常時でも昔ながらの魚屋の活気が出るよう改善していき、 成長していきたいと思っています。現在宮津と錦市場を繋ぎ、京都での地産地消を強化していますが、今後は海外への展開も考えています。これ まで鮮魚を無理やり空輸で輸送して、品質が悪じても日本産に対する信頼感がありましたが、このやり方では、本来の日本クオリティの質が下が ってしまうと思います。冷凍技術が進んだ国は海外もありますが、まだ、この技術を活用できている国は世界でもあまりないと思います。鮮度を 維持したままの魚を海外にも輸出しやすくなったので、この冷凍技術が日本中でスタンダードになり、日本全国の産地が活用していき、これが真 の日本ブランドだというのは示していきたいです。

お店のご紹介

uroco
uroco

鮮魚や簡単に食べられる惣菜・海鮮ギフト を販売するオンラインストア

https://yamaichi.official.ec/

uroco base
uroco base

天橋立のある宮津に構える山一水産の直販店

京都府宮津市鶴賀2166
TEL:070-7440-0666

錦市場店
錦市場店

錦市場 丹後TABLE内に構え、丹後の取組み を伝える発信拠点

京都府京都市中京区東魚屋町197 丹後TABLE内
TEL:070-2282-2493

株式会社 山一水産

設立平成25年3月設立
資本金500万円(2023年2月末)
事業内容魚介類卸売業、水産加工、輸出事業、飲食事業等
職員数約15名(バイト、パート含む)2023年2月末時点
本社京都府宮津市鶴賀2166
TEL:0772-25-1014