活力年齢コラム

活力年齢の確立

イキイキした職場づくりに向けて

「活力年齢」をご存じでしょうか。欧米の科学論文では視力、聴力、血圧、心拍数、肺活量などの生体情報をもとにして、生物学的年齢を求める方法が1960年代ごろから開発され始めました。筑波大学に勤務されていた田中先生は、日本人の長寿化が確実視されている点を考慮し、国民の元気長寿に資する指標として、上記の情報のほかに血液の状態や体力水準の情報を加えて、「活力年齢(vital age)」という概念を発表しました。今回は、その「活力年齢」の改善がもたらす企業への影響など解説いただきました。

活力年齢の改善

活力年齢が各自の暦(れき)年齢と同等であるなら標準的と言えます。同等とは、暦年齢が50歳の場合、±3歳の範囲内、つまり47~53歳のことです。それに比べて、暦年齢よりも5~10歳ほど活力年齢が高くなった場合、血液、体力、血管などの状態が良くない可能性の高いことを指します。筑波大学田中研究室の研究成果によると、活力年齢は循環器疾患群で12歳、高血圧+肥満の群で8~10歳、高血圧、肥満、糖尿病などの群で5~7歳ほど高いことが明らかになっており、健康長寿の実現に向けては、飲食習慣や運動不足、睡眠不足などの改善によって暦年齢と同等か、それよりも若くすることが望まれます。同研究室では、飲食習慣の改善や体力つくりの習慣化によって、肥満、高血圧、糖尿病、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の人の活力年齢が3~6ヵ月で5~10歳ほど若くなることを実証し、生活習慣病の人たちが元気長寿を実現するメルクマール(健康指標の道しるべ)に位置づけました。10~15㎏ほど減量したいと願う肥満集団に対しては、3ヵ月のスマートダイエット(賢い減量食)により体重8㎏(実際には5~13㎏)、腹囲8㎝(3~15㎝)、活力年齢にして8歳(4~16歳)ほど改善することを膨大な数の研究で明らかにし、一つの訴求標語として888ダイエットとか、888実現プログラムと称しています。
※サラヤの健康プログラムにもスマートダイエットの要素が含まれております


活力年齢

活力年齢を改善することによる企業側のメリット


第1のメリットは、従業員の健康意識が高まり、不良な状態を改善するための確かな行動変容につながりやすいことです。具体的には、大盛りのごはん、飲み放題、食べ放題の注文はもちろん、食材の買い物に注意し、外食店のチョイスにも熟慮していく社風が醸し出されることで徐々に結果も出てきます。通勤時の歩数や歩容(歩様)にも良い変化が生まれやすいです。そうすると、活力年齢の若返りに取り組んでいる従業員の気持ちは、改善への期待感から自信の獲得に変わっていき、その影響が他の従業員(社員)にも及びます。
 第2のメリットは、ストレッチや体操の日常化で身体の柔軟性が高まり、筋トレで筋力がアップし、駅の階段上りが以前ほど辛く感じなくなるなど、体力的な変化をはっきり自覚できるようになります。活力年齢とともに、体力年齢や血管年齢にも若返り効果が生じやすくなります



従業員が主体的に活力年齢を改善するには


第1に、自分の健康を大切にしようと思う気持ちを持つことです。なんとなくの願望から、健康を保持しようという強い意志が生まれるような環境整備が肝要です。どれほど意志が強くて努力していても、がんや脳卒中になる不運な人もいますが、元気長寿・健康長寿・健幸華齢を実現する確率は確実に高まります。
 第2に、ストレス耐性を高めることで、服薬者は副作用を最小限に食い止める術を習得することでしょう。
 第3に、バランスのとれた食事によって身体へ栄養を供給し続けること、第4に運動・スポーツを習慣的に楽しむことです。
そして最後に自身の考え方や行動に納得し生き方に満足することでしょう。
※身体が健康であるとともに、幸せな気持ちで、華やかに齢を重ねるという意味が込められています。


企業や健康管理者が努めること


 従業員の中には肥満、糖尿病、高血圧といった生活習慣病を有していて、病院へ通っている人もいます。肥満の場合、痩せようという本人の気持ちや医師による指導があっても、なかなか結果が出ないのが実情でしょう。しかし、スマートダイエットなどを導入して減量できる仕組みを習得すれば、周囲が驚くほどの良い結果を生みます。行動変容に意欲的な従業員を募集し①結果にコミットする(肥満なら減量する)ことを宣言する②1ヵ月ごとに結果を共有する③3か月後には取り組みに参加した集団の平均値を公表して、行動変異(取り組み)の有効性を社内で認め合うことではないでしょうか。同様に行動変容に着手する従業員が増え、かつ先導的立場の従業員が二刀流として活躍されることを期待します。ちなみに、産業医、保健師、看護師、管理栄養士らは従業員全員の相談役・アドバイザーに回っていただくと良いでしょう


従業員一人ひとりが行うべきこと

サポートシェアリングシステム(右図)の導入を推奨します。このシステムは、従業員一人ひとりの特技を分かち合って、、全体として職場を卓越した健康センターに創り上げることです。例えば、社長秘書がダイエットリーダーを、営業職がウォーキングのアドバイザーを、経理課の人が筋トレ指導を担い、服薬経験の豊富な管理職が服薬の有益性について語り、その一方で医師が服薬相談に応じるなど、社内(事業所内、部局内)でトータルヘルスプランを具現化することを推奨します。授業員(社員)の5%~1割程度の人が〇〇社ヘルスサポーターを名乗り、週に1回でも支援できる機会を設けることで、社内全体の健康意識・健康行動が変容し、健康経営の実現につながるのではないでしょうか?



vol.3 イキイキした職場づくりに向けて

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監修運動・食事・健康・医療の包括的研究の第一人者

田中 喜代次 先生

筑波大学名誉教授/教育学博士(スポーツ医学・健康増進学)
筑波大学大学院体育科学研究科修了
大阪市立大学保健体育科講師、筑波大学体育科学系助教授、筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツ医学教授を経て 現在に至る。

受賞
アメリカスポーツ医学会優秀賞
日本体力医学会優秀賞
秩父宮記念スポーツ医学・科学賞奨励賞

アメリカスポーツ医学会フェロー(FACSM)
日本介護予防・健康づくり学会会長、日本健康支援学会元理事長、日本メディカルフィットネス研究会元会長、健康支援事業のコンサルティングサービスを専門的に提供する株式会社THFの代表も務める。