食品取扱者のためのノロウイルス対策
知っておくべき特徴
食品取扱者がノロウイルス食中毒を起こさないためには、まずその特徴をよく理解することが対策の第一歩です。ウイルスの特徴を知り、よく理解して対策につなげましょう。
ノロウイルスによる食中毒の発生状況
①10月ごろから急増し、冬場がピーク。その後は4月頃まで多発
ノロウイルスによる食中毒の発生状況月別推移を示しました。例年10月ごろから増加しはじめ、冬場に発生ピークがあることがわかります。一般的に「ノロウイルス=冬」のイメージがありますが、実際には4~5月まで食中毒が多く発生していますので、調理担当者や従業員の入れ替わりの多い春先にも、注意が必要です。
ノロウイルス食中毒の事件数と患者数
過去10年(2014〜2023年)平均
出典:厚生労働省「食中毒統計」上記をもとにサラヤ(株)作成
②食中毒患者数の約半分はノロウイルス
ノロウイルスによる食中毒が全体に占める割合を示しました。過去10年の平均では、事件数では全体の約5分の1、患者数では約半数を占めています。ノロウイルス食中毒を減らすことができれば、食中毒全体を大幅に減らせることができると考えられます。
事件数
患者数
出典:厚生労働省「食中毒統計」上記をもとにサラヤ(株)作成
ノロウイルスの特徴・症状
特徴
①大きさは細菌の1/30~1/100程度と非常に小さい
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手指に付着したノロウイルスは、とても小さいので、しわや爪と皮膚のあいだに入り込んで、手洗いで除去することが難しくなります。また、感染者の嘔吐物には大量のノロウイルスが含まれていますが、処理しきれなかった嘔吐物が乾燥すると、塵や埃とともに舞い上がって空気中に浮遊します。これらが感染拡大の原因となります。
②環境中で長期間感染性を維持し、不活化されにくい
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熱や酸に強く、乾燥した環境でも長く感染性を維持します。温度は低いほど生存性が高くなり、凍結してもほとんど不活化しません。このように物理化学抵抗性が強く、感染性が維持されるので、一度環境が汚染されるとそこに存在するノロウイルスは不活化されにくく、感染拡大の原因となります。
③感染力が強く、少量(10~100個)で感染・発病する
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特徴①②のように、非常に小さくて除去しにくく環境中で不活化されにくいうえに、感染は少量で起こるので、特に流行期は感染対策をきちんと行わなければ、感染が拡大すると言えます。
④感染しても症状が出ない場合(不顕性感染)がある
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不顕性感染であっても、感染しているため、便や嘔吐物には大量のノロウイルスを排出しています。ただ、本人は症状がなく感染している自覚がないため、手洗い等の対策が不十分であった場合、知らないうちにウイルスが手指に付着し、食品を汚染し食中毒事故を起こしてしまいます。
ノロウイルスは「ノンエンベロープウイルス」
ウイルスはその構造からエンベロープ(脂質性の膜)のあるウイルスと無いウイルスに分けられます。エンベロープのあるウイルスは、アルコール消毒剤からダメージを受けやすいのに対し、エンベロープのないウイルス(ノンエンベロープウイルス)は、ダメージを受けにくく、アルコール消毒剤が一般的に効きにくい傾向にあります。しかし、最近ではノンエンベロープウイルスにも有効な新しい「酸性アルコール消毒剤」が開発されています。
症状
- 激しい嘔吐や下痢、腹痛、吐き気、発熱。(潜伏期間は24~48時間)
- 突発的な吐き気や嘔吐が特徴的。
- 症状は1~3日続くが、後遺症は残らない。
- 自覚症状がなくなってからもウイルスの排出が続くことがある。