衛生管理ガイド
バイキン軍団まるわかり

食中毒病因物質の代表的なものをご紹介します。どんな食品に生息し、どんな症状を発症させるのか、それぞれの菌の特徴を知りましょう。
腸管出血性大腸菌

潜伏場所 | 主に牛の腸内に生息。 |
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原因食品 | 牛の糞便によって汚染された食肉やその加工品・井戸水など。 |
菌の特徴 | ●わずか100個程度の菌数でも感染する。 ●ベロ毒素という強力な毒素をつくる。 ●O157、O111、O26など多くの血清型が存在する。 |
潜伏期間 | 1~14日 |
症状 | ●発熱・激しい腹痛・水様性の下痢・血便・吐き気・嘔吐など。 ●初期症状が風邪に似ているため、見過ごしやすいので手遅れに要注意。(特に乳幼児や小児、高齢者が感染すると、溶血性尿毒症症候群〈HUS〉などの合併症を起こし、死に至る場合もある。) |
対抗手段 | ●肉類は十分に加熱調理(75℃で1分間以上)し、生肉は食べない。 ●二次汚染の防止。(生肉と他の食品の直接、間接的接触を徹底して避ける) ●調理器具は洗浄・除菌後、よく乾燥させる。 |
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カンピロバクター

潜伏場所 | 豚・牛・鶏の腸内に生息。 |
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原因食品 | ●食肉やその加工品。(特に鶏肉の汚染率が高い) ●井戸水などの飲用水。 |
菌の特徴 | ●少量の菌で感染し、犬・猫などのペットの糞便で感染することもある。 ●微好気性。(わずかな酸素のあるところで増殖する性質) |
潜伏期間 | 1~7日 |
症状 | ●発熱・頭痛・倦怠感・下痢・腹痛など。 ●まれにギラン・バレー症候群(手足・顔面神経の麻痺、呼吸困難等を起こす)を発症する場合がある。 |
対抗手段 | ●肉類は十分に加熱調理(75℃で1分間以上)し、生肉は食べない。 ●二次汚染の防止。(生肉と他の食品の直接、間接的接触を徹底して避ける) ●調理器具は洗浄・除菌後、よく乾燥させる。 |
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サルモネラ属菌

潜伏場所 | 人や家畜の腸内、河川・下水などで広く生息。ネズミ・ハエ・ゴキブリや、犬・猫・カメなどのペットからの感染に要注意。 |
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原因食品 | 牛・豚・鶏などの食肉。卵。二次汚染された食品。 |
菌の特徴 | ●少量の菌でも食中毒を発症する。 ●乾燥に強い性質がある。 |
潜伏期間 | 12~48時間 |
症状 | ●下痢・腹痛・嘔吐・発熱など。やや高い熱(38~40℃)が出るのが特徴のひとつ。 ●長期にわたり保菌者となることもある。 |
対抗手段 | ●肉類や卵は十分に加熱調理する。(中心部を75℃で1分間以上) ●二次汚染の防止。(生肉や生卵を扱った器具、容器、手指はそのつど洗浄・除菌・消毒する) |
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ウエルシュ菌

潜伏場所 | 土や水の中、健康な人の便の中などに広く自然界に分布。特に牛・鶏・魚の保菌率が高い。 |
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原因食品 | ●汚染された肉類や魚介類を使った煮込み料理。 ●カレーやスープなどの大量調理は要注意。鍋底近くで増殖し、集団食中毒の発生原因になりやすい。 |
菌の特徴 | ●嫌気性。(酸素の無いところで増殖する) ●100℃、6時間の加熱にも耐える芽胞を形成する。 ●1事件あたりの患者数が多く、大規模発生がある。 |
潜伏期間 | 6~18時間 |
症状 | 水溶性の下痢・軽い腹痛。 |
対抗手段 | ●カレーやスープを調理するときはよくかきまぜる。(かきまぜることによって菌が空気に触れ、増殖を防ぐ効果がある) ●調理後は早めに食べきり、室温で放置しない。 ●調理済食品は、小分けにするなど工夫し、すばやく冷却し冷蔵庫に保存する。(10℃以下または55℃以上) |
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黄色ブドウ球菌

潜伏場所 | 人や動物の傷口(特に化膿しているもの)・のど・鼻腔・皮ふなどに広く生息。(健康者の保菌率は約40%といわれている) |
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原因食品 | おにぎり・弁当・サンドイッチ・ケーキなどの手作り食品。ほとんどの場合、調理する人の手を介して食品が菌に汚染されることが多い。 |
菌の特徴 | ●汚染された食品中で増殖するとき、熱・乾燥・胃酸・消化酵素に強いエンテロトキシンという毒素をつくる。 ●食塩濃度16~18%でも増殖できる。 |
潜伏期間 | 30分~6時間 |
症状 | 激しい吐き気・嘔吐・下痢・腹痛など。 |
対抗手段 | ●手荒れや傷(特に化膿しているもの)のある人は、食品や調理器具に直接触れない。 ●残った調理済食品の再加熱利用は避ける。 ●二次汚染の防止。(特に手洗い・手指消毒の励行) |
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腸炎ビブリオ

潜伏場所 | 海水や海産の魚介類などに生息。 |
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原因食品 | ●海産の生鮮魚介類およびその加工品など。 ●二次汚染された食品。(主に塩分のあるもの) |
菌の特徴 | 好塩性で塩分3%前後でよく発育するが真水には弱い。 増殖速度がきわめて速く、短時間で急激に増殖する。(夏季に多く発生) |
潜伏期間 | 12時間 |
症状 | 下痢・腹痛(へその周り)・吐き気・嘔吐・発熱など。 |
対抗手段 | ●短時間でも冷蔵庫で保存し、増殖を抑える。(4℃以下ではほとんど増殖しない) ●魚介類は新鮮なものでも真水でよく洗う。 ●二次汚染の防止。(特に魚介類と他の食品の直接・間接的接触を徹底して避ける) |
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セレウス菌

潜伏場所 | 河川や土の中など自然界に広く分布。 |
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原因食品 | 米・小麦・豆・野菜などの農作物を原料とする食品。主なものに焼飯・ピラフ・スパゲティー・焼きそばなど。 |
菌の特徴 | ●90℃、60分の加熱にも耐える芽胞を形成する。 ●嘔吐型と下痢型の2種類あり、嘔吐型は食品中(主に米飯類・麺類)で増殖するときに毒素をつくる。 ●30℃前後でもっとも活発となり、冷めた調理済食品中で急激に増殖する。 |
潜伏期間 | 嘔吐型は30分~6時間 下痢型は8~16時間 |
症状 | 嘔吐型は激しい吐き気・嘔吐など。 下痢型は腹痛・下痢など。 |
対抗手段 | ●必要最小量の食品を調理し、調理後はすぐに喫食する。 ●残った調理済食品は、できるだけ早く食きり、保存しない。 ●食品は低温保存、または温蔵する。(8℃以下または55℃以上) |
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ボツリヌス菌

潜伏場所 | 土の中に広く分布。海や湖の泥の中にも分布。 |
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原因食品 | ハム・ソーセージ・野菜・果物の瓶詰・缶詰・真空パック食品。 |
菌の特徴 | ●嫌気性。(酸素の無いところで増殖する性質) ●熱にきわめて強い芽胞を形成する。 ● 神経麻痺症状を引き起こす毒素をつくる。(毒素は80℃で20分、100℃で1~2分間の加熱で失活する) |
潜伏期間 | 8~36時間 |
症状 | 特徴的な脱力感・めまいと吐き気・嘔吐・便秘など。(治療が遅れると呼吸困難などを引き起こして死に至る) |
対抗手段 | ●新鮮な材料をよく洗浄してから食べる。(神経毒素は80℃で30分間、100℃で数分間の加熱で失活する) ●容器が膨張している缶詰や真空パック食品は食べない。 ●1歳未満の乳児に蜂蜜などを与えない。(乳児ボツリヌス症の予防) |
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リステリア

潜伏場所 | 動物の腸内や土壌、河川水、下水等の環境中に広く存在。 |
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原因食品 | ●未殺菌乳、ナチュラルチーズなどの乳製品(加熱せずに製造されるもの)、食肉加工品、魚介類加工品、野菜サラダなど。 ●製造段階で環境中から汚染を受けた食品。 |
菌の特徴 | 4℃以下の低温や12%の食塩濃度でも増殖できる。 |
潜伏期間 | 24時間以内~3か月と広範囲にわたる。 |
症状 | ●悪寒、発熱、筋肉痛などインフルエンザなどの感染症と類似。 ●妊婦、高齢者、免疫機能が低下している方は敗血症、髄膜炎、中枢神経系症状など重篤な状態(リステリア症)になることがある。 |
対抗手段 | ●食品の加熱調理。(70℃で1分間の加熱によりほとんど死滅) ●二次汚染の防止。(原料や調理環境の洗浄・殺菌) ●加熱せずに食べる野菜や果物は特によく洗浄する。 ●冷蔵庫を過信せず、食品の長期にわたる低温保存を避ける。 |
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ノロウイルス

潜伏場所 | 人の腸内や二枚貝に生息。 |
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原因食品 | 二枚貝。 調理従事者を介して二次汚染された食品など。 |
菌の特徴 | ●人の腸内のみで増殖する。 ●少量で感染し、発症率が高い。 ●長期間にわたる免疫が獲得できないため、繰り返し感染する。 ●食中毒事例では食品取扱者を介した汚染が原因となるケースが多い。 ●食品からだけではなく、接触や空気などを介して経口感染する。 |
潜伏期間 | 24~48時間 |
症状 | 吐き気・嘔吐・下痢・腹痛。発熱は一般的に軽度。 |
対抗手段 | ●感染の疑いのある人は食品の取り扱いに従事しない。 ●手指をよく洗浄・消毒し、二次汚染を予防する。 ●二枚貝の生食を避け、中心部まで十分に加熱する。(85~90℃、90秒間以上) ●嘔吐物にも多量のウイルスが含まれるため、その処理は適切に行う。 ●環境が汚染されたら、殺菌剤による清浄化が必要。 |
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アニサキス

寄生場所 | サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなどの魚介類の内臓表面や筋肉内に寄生。 |
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原因食品 | 寄生した魚類等の生食やシメサバ等の未加熱加工品。 |
特徴 | ●長さ2~3cmの半透明な白色糸状で、目視できる。 ●調理で使う程度の食酢での処理、塩漬けでは死なない。 |
潜伏期間 | 数時間~十数時間(急性胃アニサキス症) 十数時間~数日後(急性腸アニサキス症) |
症状 | ●みぞおちの激しい痛み、悪心、嘔吐。(急性胃アニサキス症) 激しい下腹部痛、腹膜炎症状。(急性腸アニサキス症) ●胃壁等に侵入しない場合でも、アニサキスが抗原となりアレルギー症状を示す場合がある。 |
対抗手段 | ●-20℃で24時間以上冷凍する。 ●70℃以上、または60℃の場合は1分間加熱する。 ●目視確認してアニサキスを除去する。 ●新鮮なうちに内臓を取り除く。 |
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ヒスタミン

寄生場所 | サバ、アジ、サンマ、カツオ、イワシ、イカなどの魚介類の内臓表面や筋肉内に寄生。 |
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原因食品 | サバ、マグロ、カジキ、イワシ、サンマなどの赤身魚及びその加工品。 |
特徴 | ●ヒスチジン(アミノ酸の一種)を多く含む食品(赤身魚など)を常温等の不適切な温度で保管した際、ヒスタミン生成菌(海水中等に存在し魚に付着)が持つ酵素の働きにより、ヒスチジンから化学物質ヒスタミンが生成される。 ●ヒスタミンは加熱調理では分解できない。 ●低温性のヒスタミン生成菌により、冷蔵保存でもヒスタミンが増えることがある。 |
潜伏期間 | 数分~30分程度 |
症状 | 顔面(特に口の周りや耳たぶ)紅潮、頭痛、じんましん、発熱等の食物アレルギーに似た症状。 |
対抗手段 | ●ヒスタミン生成菌の増殖を防ぐ。 ●原材料から喫食までの一貫した温度管理が重要。 ●解凍や加工においては、魚の低温管理を徹底する。 ●食品を口に入れたとき唇や舌先にピリピリした刺激を感じたら、食べるのをやめる。 |
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