手洗いの目的
なぜ、手を洗うの?
家庭での日常手洗いと何がちがうの?
方法とタイミング
食品取扱者などに求められる衛生的手洗いは、「洗って」・「ふいて」・「消毒」の3つの工程から構成されます。この3つの工程は、すべてが重要であり、それぞれの工程を確実に実施することで手指に一時的に付着した細菌を減らすことができます。
手に大腸菌を塗りつけ、「洗って・ふいて・消毒」のそれぞれの工程を実施した後に手に残存した大腸菌を回収し、その数を調べました。(図)その結果、各工程を確実に実施することで大腸菌は有意に減少することが確認されました。
サラヤ㈱ バイオケミカル研究所調べ
工程別ポイント!
洗う
第一の工程です。ここで出来得る限り細菌やウイルスを洗い流すことが重要です。
新い残しがないように十分な時間をかけて丁寧に手洗いすることがポイントです。
いくら手洗いを実施しても手洗い時間が短すぎたり、方法がまずいと洗い残しが多くなります。(下図)
このような洗い残しがないように洗うためには、正しい手洗い手順で手を洗うことが効果的です。
手洗いが不十分になりやすい箇所
ふく
3つの工程のうち、「ふく」という行為も重要であることが最近の研究でわかってきました。ふかずに消毒した場合は、消毒の効果がほとんど得られないことが確認されました。(下グラフ)また、手を十分に乾燥させてから消毒した時と、手に水が残っている状態で消毒した時の効果には、有意な差が得られました。
食品衛生の現場における衛生的手洗いでは、布タオルの使用は望ましくありません。大勢の人が共有することで布タオル自体が汚染されてしまうことがあるためです。
サラヤ㈱ バイオケミカル研究所調べ
消毒
消毒も「洗う」工程と同様に時間が短すぎたり、方法がまずかったりすると消毒が不十分となります。
手指のすみずみまで消毒剤をこすり合わせることがポイントです。特に指先は消毒不足になりやすいことがわかっているため、消毒剤を手に取ったのち、まず指先を消毒し、その後手指全体にすり合わせることが効果的です。
一度の消毒に必要な消毒剤の量ってどのぐらい?
エタノールを主成分とした速乾性アルコール手指消毒剤にはスプレータイプやジェルタイプなどいくつかの形態がありますし、人によって手のサイズが様々であるため、手に塗布する理想的な量はわかっていません。目安としてCDC*のガイドラインをご紹介します。
手指消毒の際には、手全体を十分に濡らすことができる量を取り、少なくとも15秒は液が残っている状態で手をすり合わせることが大切です。
10~15秒間すり合わせた後、手が乾いた感じであれば塗布量が不十分とされています。いつもの消毒に使う量が十分かどうか、一度チェックしてみてください。
*Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings.MMWR 2002:51(PR-16)
手を洗うタイミング
洗い残しが少ない手順で手洗いができるようになったとしても、適切なタイミングで手を洗っていなければ意味がありません。
基本的な考え方としては、手指が汚染を受けた場合、二次汚染などを防止するため作業工程が変わるタイミング、取り扱う食材が変わるタイミングで手を洗います。ただし、頻回すぎる手洗いは手荒れの原因となりますので過度の実施になっていないか注意が必要です。
推奨されるタイミング
トイレ使用後
調理場に入る前
食品を取り扱う直前
後に加熱工程がない食品を扱う前
(生のまま扱う食材も含む)盛付作業・配膳作業前
下処理などで原材料に触れた後
廃棄物を処理した後
手荒れケアも食中毒予防!
手荒れは個人差が大きいのですが、荒れた皮膚には食品衛生上いくつかの問題があります。一つは、黄色ブドウ球菌の問題です。黄色ブドウ球菌は常在菌の一種ですが、手指に傷口があったり皮膚が荒れている箇所には、通常よりも高率で存在します。(科学⑦)黄色ブドウ球菌は食中菌であるため、手が荒れた状態で食品を取り扱うことは、食中毒事故を起こすリスクが高いと言えます。
もう一つの問題は、皮ふが荒れていると皮ふ表面の凹凸が大きくなり特にノロウイルスのように小さいウイルスは除去が難しくなってしまいます。つまり、手が荒れていると規定通り手を洗っていても、期待できる効果が得られない可能性があります。
手荒れは食品衛生上大きな問題があるため、手荒れをケアすることは食中毒を予防することにつながります。