Recovery Nutrition からだを回復させる

私たちのカラダは目的に応じた適度な運動と栄養、休息のバランスを整えることにより、よりパフォーマンスの高いカラダをつくることができます。この3つの要素のひとつでもバランスが崩れることで疲労やケガを引き起こすことにつながり、最大のパフォーマンスを発揮することが難しくなります。

まずは目的に応じた運動負荷、運動量と必要な栄養素、摂取量、摂取タイミング、休息など知ること、意識することが大切です。

栄養(食事)

身体づくりだけではなく、疲労回復やパフォーマンス向上にも影響を与えます。より高いコンディションに整えるためには、自身の目的と必要に応じたエネルギー量、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなどのバランスを知ることが大切です。

栄養摂取による回復プロセス
  • 貯蔵エネルギー源となる肝臓または筋肉中のグリコーゲンの補充
  • 発汗により失われた体水分と電解質の補充
  • 筋肉の修復と合成に使われるたんぱく質の補充

たんぱく質

変わるたんぱく質の必要条件

食事中のたんぱく質の必要量は、運動強度や種類(瞬発系・持久系)などにより変わります。またエネルギーの摂取量や筋肉量、性別および年齢などの影響も受けます。

たんぱく質摂取は筋たんぱく質の合成をサポートし、分解を抑制させることで筋肉の損傷を修復します。そのため筋力トレーニングなどを行った後などは要求量が増加します。この最適なタイミングで摂取することで速やかな回復が期待されます。なお食事中のたんぱく質の摂取量は栄養素としての質に影響されることが知られています。様々な評価方法が知られていますが、国際的に最新の評価法としてDigestible indispensable amino acid score(DIAAS)があります。

毎日の必要量

日本人の食事摂取基準によれば、一般的な必要量は0.8g/ kg 体重/日とされています。ACSMではアスリートの場合、毎日、1.2-1.7g/kg 体重の摂取を推奨しています。摂取エネルギーが不足している場合、摂取したたんぱく質は筋肉などの材料としてではなくエネルギー源として使用されてしまいます。そのため、たんぱく質の必要量だけでなく摂取エネルギーの最適化も必要です。ISSNの推奨量は以下の表の通りです。

身体活動別たんぱく質要求量(ISSN)

身体活動レベル; g / kg 体重 /日
一般成人 0.8-1.0
高齢者 1.0〜1.2
適度な量激しいトレーニング 1.0〜1.5
大量の強烈なトレーニング 1.5~2.0

またIOCのガイドラインでは通常1.3~1.8g/kg 体重/日、より強度の高いトレーニングを行うものは1.6~1.7g/kg 体重/日であり、これ以上の摂取は有益ではないとされています。

運動前

各団体とも運動前のたんぱく質摂取に関して具体的なガイドラインにはコンセンサス文書として含まれていません。それ以上に運動後の摂取を重要視すべきであることが知られています。

運動後

運動後は筋肉たんぱく質合成が最大限に刺激された状態であり、そのタイミングでのたんぱく質摂取は筋肉づくりにおいて重要であることが知られています。レジスタントトレーニング後、高品質のたんぱく質20~25g摂取することが推奨されています。その際、糖質と組み合わせて摂取することで筋肉グリコーゲンも回復させることができ、より筋肉たんぱく質合成を促進するために重要です。なお一度に摂りすぎても筋肉合成に働くことはありません。

たんぱく質の摂取タイミング

レジスタントトレーニング後30分以内の栄養補給はゴールデンタイムとも呼ばれる筋肉にとって大切な時間帯とされています。この時間帯のたんぱく質(約20g)と糖質摂取が有益であることが知られています。従来、1回当たりのたんぱく質の吸収限界量は10-20gとされてきました。しかし、最近の報告では運動強度(負荷)と個々人の筋肉量により、その要求量が異なること、吸収率も影響されることが報告されています。

またレジスタントトレーニング後における筋たんぱく質の合成感度増加は少なくとも24時間継続します。そのため運動後30分以内に限らず、24時間以内の食事(栄養補給)も意識することが大切です。

エネルギー

身体活動(運動量)に応じたエネルギー摂取を行うことが大切です。特に強度の高い、長時間に渡る激しいトレーニングは、エネルギー消費量を増します。また胃腸の不快感や食欲不振などから、エネルギー不足による体重や筋肉の減少、パフォーマンス低下などを引き起こします。さらにボクシングやレスリングなど体重コントロールを必要とする競技では、そのストレスから過食症や拒食症などの摂食障害を生じる場合もあります。このようにエネルギー摂取には、必要量にあわせて適切なタイミングで摂る、あるいは摂るための工夫が必要です。

アスリート向け基礎代謝量の推定式(JISS式)

基礎代謝量(kcal/日) = 28(kcal) × 除脂肪体重(kg)
エネルギー消費量(kcal/日) = 基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル
体脂肪量(kg) = 体重(kg) × 体脂肪率(%)÷100
除脂肪体重(kg) = 体重(kg) - 体脂肪量(kg)

身体活動レベル
種目カテゴリー オフトレーニング期 通常練習期
持久系 1.75 2.50
瞬発系 1.75 2.00
球技系 1.75 2.00
その他 1.50 1.75

JISS(Japan Institute of Sports Sciences)和表記「国立スポーツ科学センター」

炭水化物の必要量

炭水化物にはエネルギーとして利用できる糖質と直接的にはエネルギーとして利用できない食物繊維があります。糖質は食卓の中ではごはんやパンなど主食に多く含まれ、身体活動を営むにおいて不可欠な栄養素です。またアスリートにとっては運動前のエネルギー貯蔵や運動後の回復において大切な役割を担っています。

スポーツ栄養学では、その要求量は体重当たりの重量で示されることが多く、計算式で算出された必要量は総エネルギーにおける糖質の割合と多少、異なる場合があります。

トレーニングに合わせた必要量

糖質は素早くエネルギーとして利用されるだけでなく、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えられ、次の活動に備えた貯蔵エネルギー源となり、筋肉の回復を促します。
食事から摂取した糖質は小腸で吸収され、インスリンというホルモンが分泌され細胞内に取り込まれます。そのため運動中に大量の糖質を摂取すると急激に血糖上昇を抑えるため、より多くのインスリンが分泌され、結果として低血糖を招くリスクが高まります。また持久系運動の場合には、一度に大量摂取を行うことで腹部膨満や下痢などを引き起こす可能性があるため注意が必要です。

毎日または習慣的な炭水化物の必要量

  身体活動レベル g / kg 体重 / 日
ACSM 競技者 6g / kg 体重 / 日
ISSN 一般的な身体活動
30-60分/日・3-4回/週
3-5g / kg 体重 / 日
中〜高強度
2-3時間/日・週5-6回
5-8g / kg 体重 / 日
激しい運動
3-6時間/日・1-2セッション・5-6時間
8-10g / kg 体重 / 日
IOC 低強度 3-5g / kg 体重 / 日
中強度 5-7g / kg 体重 / 日
高強度 6-10g / kg 体重 / 日

運動前

体内の貯蔵グリコーゲンは、中程度〜高強度の運動90-180分間程度で枯渇します。そのため90分間以上持続する持久系運動では筋グリコーゲン貯蔵量を最大限にすることでパフォーマンスの維持につながることが報告されています。

  身体活動レベル g / kg 体重 / 日
ACSM 運動前(試合前)
3~4時間前
200-300g
ISSN カーボローディング
1~3日前
8-10g / kg 体重 / 日
運動前(試合前)
3~4時間前
1-2g / kg 体重
IOC 90分を超える運動 9-12g / kg 体重 / 日
運動前(試合前)
1~4時間前
1-4 g / kg 体重

ACSMの和表記「アメリカスポーツ医学会」、ISSNの和表記「国際スポーツ栄養学会」、IOCの和表記「国際オリンピック委員会」

運動中

持久系運動では貯蔵グリコーゲン不足による筋肉疲労、集中力低下および低血糖症(めまい、震え、失神など)があります。パフォーマンスを維持するためには、肝臓および筋肉のグリコーゲン貯蔵量の増加ならびに最適な水分摂取が必要となります。なお運動中の糖質摂取は糖質の種類、量、タイミングが大切です。また個人の好みに合わせて調整する必要があります。

ACSM 運動時間 > 60分 0.7g /kg 体重 / 時
または30~60g/時
ISSN 運動時間 > 60分 30〜60g / 時
IOC 持続的な高強度運動の間
45~75分持続
少量
「ストップ&スタート」を含む
持久力運動(1~2.5時間)
30〜60g / 時
持久系運動 > 2.5-3時間 最大90g / 時

ACSMの和表記「アメリカスポーツ医学会」、ISSNの和表記「国際スポーツ栄養学会」、IOCの和表記「国際オリンピック委員会」

運動後

理想的な糖質摂取が筋グリコーゲン再合成を最適にしてくれます。特に休息期間が8時間未満の場合、迅速な補給が重要です。

ACSM 運動後 1.0〜1.5g / kg体重の間
最初の30分、再び2時間ごとに6時間
ISSN 運動後の炭水化物摂取 1.5g / kg 体重または0.6-1.0g / kg 体重の間
最初の30分、再び2時間ごとに4-6時間

ACSMの和表記「アメリカスポーツ医学会」、ISSNの和表記「国際スポーツ栄養学会」、IOCの和表記「国際オリンピック委員会」

カーボ・ローディング(グリコーゲン・ローディング)

体内(肝臓・筋肉)にエネルギー源となるグリコーゲンを効率よく蓄える方法です。昔は体内にあるグリコーゲンを糖質の摂取制限や運動により一度枯渇させた後、糖質を大量に摂取することで以前より多くのグリコーゲンを貯め込む「リバウンド効果」を活用していました。しかし、疲労回復が遅れること、消化管への負担が大きくなることからリスクのある方法でもありました。また女性の場合などのすべての選手が、そのような大量の炭水化物を3日間摂取してイベントに至ることはできません。したがって、個人に最も適した戦略を使用する必要があります。

現在では糖質の摂取制限を行わず1週間前からの運動量調整と、3日前からの糖質を大量に摂取することで同等の効果を得ることができることが知られています。

  時期
大会(試合)日を基準
運動量 食事 体内グリコーゲン
過去 7~4日前 増やす or 通常 高たんぱく質・低糖質 枯渇
3日前 減らす 高糖質 蓄積
2日前〜前日 減らす・休む 高糖質 蓄積
現在 7〜4日前 減らす 通常 維持
3日前 減らす 高糖質 蓄積
2日前〜前日 減らす・休む 高糖質 蓄積

脂肪の必要量

脂肪は糖質、たんぱく質に比較して重量当たりのエネルギー量が9kcal/gと最も大きいエネルギー源であり、少量で多くのエネルギーを得ることができます。また脂溶性ビタミン(V.A,V.D,V.E,V.K)の吸収を高める働きもあります。

アスリートの脂肪要求量は、通常者(非アスリート)よりわずかに多く全エネルギー摂取量の20〜35%とされていますが、トレーニングの内容や目的により異なります。目的に応じて摂取量は異なりますが、体脂肪や体重を減らす場合、0.5〜1.0 g /体重 kg/日の脂肪摂取量が推奨されています。

水分補給(電解質含む)

体重の2%以上の水分が失われた場合、運動パフォーマンスが低下することが知られています(ISSN)。軽度の脱水は喉の渇きなどの自覚症状はほとんどありません。そのため運動前後での体重変化などを目安に積極的な水分補給を心掛ける必要があります。

  • 水分補給を少量(150〜200 ml)で頻繁(5〜20分毎)に摂取する。
  • 0.5〜2L / hrの速度での水分補給が推奨されます。
  • 暑いところや湿度の高いところでは摂取量を増やす。

IOCでは、運動中の脱水による体重減少を約2%未満に制限するために、運動中に十分な水分補給をする必要があることを示しています。発汗量が多いとき、特に2時間以上におよぶ運動をした時は、汗で失われた水分やナトリウム(3~4g)を積極的に補う必要があります。また24時間以内の急速な回復が求められる時や5%を超える体重減少などの場合、回復させるための水分補給は重要です。

水分や電解質の補給にスポーツドリンクは有効です。スポーツドリンクにはアイソトニック(等張性)飲料とハイポトニック(低張性)飲料があります。運動時には多量の発汗により電解質の損失しているため極端なハイポトニック飲料では、適量の電解質が補えない可能性がありますので注意してください。

参考文献

Position of the American Dietetic Association, Dietitians of Canada and the American College of Sport: Nutrition and athletic performance. J Am Diet Assoc. 2009;109(3):509-527
International Olympic Committee (IOC) consensus statement on sports nutrition 2010. J Sports Sci. 2010;29(SI):S3-S4.
Kreider RB, Wilborn Cd, Taylor L, et al. ISSN exercise and sport nutrition review: research and recommendations. Int J Soc Sports Nutr. 2010;7:7

日本人の食事摂取基準(2015年版)
Ralf Jager, Chad M. Kerksick, et al. ISSN Position Stand:protein and exercise. Int J Soc Sports Nutr. 2017;14:20
Chad M. Kerksick, Shawn Arent, et al. ISSN Position Stand:nutrient timing. Int J Soc Sports Nutr. 2017;14:33

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