Dr.'s column 外部専門家コメント

ペプチドと健康

佐藤健司

我々の体の主要な構成成分としてタンパク質があります。タンパク質は、通常100~1000個のアミノ酸が遺伝子情報にしたがい細胞内(リソソーム上)でつながり合成されます。一方、ペプチドは通常2~100個程度のアミノ酸がつながったものを指します。

ほとんどのペプチドはタンパク質が分解して生じたものです。そのため、大部分のペプチドはタンパク質に存在する20種類のアミノ酸から構成されます。しかし、コラーゲンのようなタンパク質には遺伝子にコードされている20種類のアミノ酸のほか、タンパク質が合成された後に酵素により修飾されたヒドロキシプロリンを含みます。そのためコラーゲンを分解して作ったペプチドはヒドロキシプロリンを10%程度含みます。このようなタンパク質が分解して生じたペプチド以外にも2~3個のアミノ酸が、つながって合成されるものもあります。このようなペプチドの代表として、食肉・水産物に多いイミダゾールペプチドと肝臓に多いグルタチオンがあります。イミダゾールペプチドはタンパク質に含まれないβ-アラニンとイミダゾールアミノ酸であるヒスチジン、またはメチルヒスチジンがつながったものです。グルタチオンはグルタミン酸、システイン、グリシンがつながったものですが、グルタミン酸とシステインのつながり方がタンパク質中でのつながり方と異なります。イミダゾールペプチドを摂取すると、疲労による作業効率の低下を抑える働きが知られています。グルタチオンは肝臓に多く存在し、解毒や酸化物をなくする酵素の補酵素として重要な働きをしています。一般にサプリメントとして摂取されるペプチドは食品タンパク質(ミルクタンパク質、大豆タンパク質、肉タンパク質、コラーゲンなど)をタンパク質分解酵素で分解して作ったものです。

ペプチドはタンパク質よりも水に溶けやすく消化・吸収が容易であると考えられています。小腸はアミノ酸とアミノ酸が2~3個結合したペプチドを通す仕組みを別々に持っています。ペプチドの方が多くのアミノ酸を一度に運べます。これまでは小腸に吸収されたペプチドはすぐにアミノ酸に分解され最終的には全てアミノ酸になると考えられていました。タンパク質よりペプチドは水に溶けやすく摂取しやすいため運動後などの筋肉増加のために必要なアミノ酸源として用いられてきました。一方、ペプチドの摂取によりアミノ酸源としてのみでは説明できない有益な作用が見出されてきています。例えば、高血圧・高脂血・肥満を改善したり、運動後の筋疲労を抑制したり、関節や皮膚の状態を改善することなどが示されています。最近の研究で一部のペプチドは消化・吸収の過程でもアミノ酸に分解されることなくペプチドとして血中に吸収されることがわかってきました。これらの体内に吸収されたペプチドが我々の細胞に作用し、このような有益な作用を示すと考えられています。いろんな種類のペプチドの摂取が我々の健康に対して有益であることがわかっています。これらのメカニズムの解明が今まさに進んでいます。

profile

京都大学大学院 農学研究科 応用生物科学専攻 海洋生物機能学分野教授

佐藤 健司

佐藤健司1983年 京都大学農学部水産学科卒業、1985年 京都大学大学院農学研究科博士後期課程水産学専攻入学、1988年 農学博士の学位を取得、1989年 京都府立大学生活科学部助手、 1995年 同助教授、1997年 京都府立大学人間環境学部助教授、2005年 同 教授、2008年 京都府立大学大学院 生命環境科学研究科教授、2014年 現職

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