病原体ミニ辞典

インフルエンザ

インフルエンザの流行はどこから?

インフルエンザの流行は児童からスタート、そこから家族内で感染伝播がおこり、やがて社会全体に拡がりをみせるのが一般的。職場全体に感染が拡大しないためにも、早期に対策を講じましょう。

スーパースプレッダー※は小学生と言われている

※スーパースプレッダーとは

インフルエンザに感染したかな?と思ったら

インフルエンザと風邪との違い

インフルエンザ(流行性感冒)と風邪(普通感冒)は異なるものですが、初期症状では区別がつきにくいものです。

インフルエンザはインフルエンザウイルスによって引き起こされる疾患で、A型・B型は感染力が強く、大きな流行を起こします。典型的なインフルエンザは、ウイルスの感染を受けてから1~3日間の短い潜伏期を経て、38℃以上の高熱や頭痛、筋肉痛、関節痛、全身の倦怠感などの症状が突然あらわれ、この後、咳、鼻汁などの上気道炎症状が続き、約1週間で軽快します。
患者からの感染性は、発症の1日前からあり、24時間~48時間がもっとも高く、その後は急に低下します(全体で5日~10日間)。ただ小児の場合はもう少し長くなるようです。

一方、風邪の原因ウイルスは特定のものではなく、約10種ほどのウイルス(型によって分類すると200~300種類)によるものです。それぞれ症状に違いはあるものの、一般的に症状は鼻水など軽いもので、ウイルスの感染力も強くありません。

インフルエンザウイルス

インフルエンザと風邪(普通感冒)の違い

インフルエンザ(流行性感冒) 比較ポイント 風邪(普通感冒)
悪寒、頭痛、突然の発熱 初発症状 鼻咽頭の乾燥感、くしゃみ
悪寒、発熱、全身倦怠感、頭痛、腰痛、筋肉痛、関節痛、鼻づまり、咳、痰、のどの痛み おもな症状 くしゃみ、鼻汁、鼻づまり、咳、のどの痛み、軽い発熱、全身倦怠感
強い 悪寒 軽度、きわめて短期
38~40℃(3~4日間) 熱(期間) ないか、もしくは微熱
強い 倦怠感 ほとんどない、弱い
強い 全身症状 ない
気管支炎、中耳炎、副鼻腔炎、クループ、インフルエンザ肺炎、細菌性肺炎、肝障害、熱性けいれん、ライ症候群、ギラン・バレー症候群、脳炎・脳症(特に乳幼児)、心筋炎、腎不全など 合併症 まれ(副鼻腔炎、気管支炎、肺炎、中耳炎、結膜炎、髄膜炎など)
インフルエンザウイルス(11月~4月頃) 病原体
(流行期)
ライノウイルス(冬期)、アデノウイルス(年中)、コロナウイルス(冬期~春期)、RSウイルス(11月~3月頃)、パラインフルエンザウイルス(3月~7月頃)、などウイルス以外では、細菌、マイコプラズマ
強く、急激に増加する 感染力 弱く、ウイルスは徐々に増える
あり 迅速診断 なし

職場での対応について

感染症予防法では、感染症分類における1 類から3 類の感染症については、その患者を一定の業務に就かせることを禁止していますが、冬場に猛威を振るう、季節性インフルエンザやノロウイルスは、第5 類感染症に分類されるため、法的な就業規制はありません。
しかし職場内の2次感染防止を考え、自主的なガイドラインを策定している企業もあります。事前に勤務先の就業規則等を確認しておきましょう。

抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内の投与が推奨されているため、インフルエンザを疑う場合は早めの受診が大切です!

PICK UP

インフルエンザによる出席停止期間
(学校保健安全法 2014年4月改定)

就学児に対しては学校保健安全法(昭和33年法律第56号)により、インフルエンザにかかった児童の出席停止期間が定められています。

インフルエンザにかかった児童らの出席停止期間の数え方を下記に示します。

発症後5日を経過し、かつ解熱後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで

※症状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めたときは、この限りではありません。

ただしノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎に関しては、学校保健安全法にも出席停止について特に明記されていません。ノロウイルスに罹患した従業員の出勤判断については、症状回復後数日など、各企業で基準を設定することが望ましいと言えるでしょう。

インフルエンザウイルスの特徴

インフルエンザウイルス
  • 直径が1万分の1ミリ(100nm、1/10μm)の球形で、 エンベロープという脂質でできた膜をもつウイルス。
  • 1個のウイルスが細胞に感染して増殖すると、8時間後に約100個、1日で100万個になるといわれている。
  • インフルエンザウイルスは鼻と喉の間の粘膜で増殖すると言われている。
  • ヒトに感染性を示すインフルエンザウイルスはA型、B型、C型の3種類
A型
ヒト以外に、トリ、ブタ、ウマに存在
(流行する)
B型
ヒトにのみ存在
(流行する)
C型
軽いかぜ様の症状のみ
(流行しない)
A型はHA、NAの変異が非常に多いので、国内および世界的大流行を引き起こしたり、症状が重くなることがあります。これまでHAに16種類、NAに9種類の大きな変異が見つかっており、亜型はH1N1のように略称で表現され、その組み合わせの数だけ存在します。 B型はHA、NAとも各1種 軽いかぜ様の症状のみ
(流行しない)

エンベロープウイルスの弱点

ウイルスはその構造からエンベロープのあるウイルス(エンベロープウイルス)と、エンベロープのないウイルス(ノンエンベロープウイルス)に分けられます。エンベロープウイルスは、アルコール消毒剤によりダメージを受けやすいのに対し、ノンエンベロープウイルスは、アルコール消毒剤が一般的に効きにくい傾向にあります。

インフルエンザウイルスはエンベロープウイルスで、アルコール消毒剤が有効であることがわかります。

アルコールが膜を壊してウイルスにダメージを与える

代表的なウイルス

  • インフルエンザウイルス
  • ヘルペスウイルス
  • 風疹ウイルス
  • B型やC型肝炎ウイルス
  • エイズウイルス

第64回 工業技術賞受賞

手荒れに配慮した
アルコール手指消毒剤

アルコール手指消毒剤はこちら

女性スタッフから人気です!

スーパー・スプレッダーは小学生!?

スーパー・スプレッダーとは、多くの人への感染拡大の感染源となった特定の患者の存在のことを示します。
インフルエンザ流行拡大においてのスーパー・スプレッダーは子供(集団活動を行う保育園児・幼稚園児・小学生児童)と考えられています。
理由は低年齢の子供は免疫力が備わっておらず、また感染症対策となる、手指衛生・うがい・咳エチケットが上手く出来ないことがあげられます。その上、感染しやすいとされる集団生活を日常的におこなっているためです。

なかでも小学低学年生が最も感染源とされているのは、未就学児に比べ活発に行動範囲が広がるため、より広域にウイルスが運ばれることが理由とされています。

企業の感染対策コラム:「No.3 インフルエンザの基礎知識】

インフルエンザの予防方法

1.手指衛生

インフルエンザ感染対策の基本は「手洗い」です。
インフルエンザウイルスに感染する要因の多くは、手に付着したウイルスが物品に付着し、そこからまた手を介して鼻や口、目から体内に入ることです。
インフルエンザウイルスは手洗い石けん液やアルコール手指消毒剤を正しく使用することで、手に付着したウイルスを洗い流す、または不活化(感染力を失わせる)ことが容易とされています。

アルコール手指消毒剤のインフルエンザウイルスに対する不活化効果(%)
(作用時間15秒)

ウイルスに対するin vitro 試験は、ドイツの標準試験法であるDVV&RKIガイドラインに従って実施。
実使用を想定した条件(タンパク質負荷条件)においても、試験した全てのウイルスの感染価を4.0Log10以上(感染価の減少率:99.99%以上)減少。

※ドイツウイルス疾病管理協会(DVV)およびロベルト・コッホ研究所(RKI)による、医療におけるウイルスに対する化学消毒剤の試験に関するガイドライン

ウイルス タンパク質負荷 ウイルス感染価の減少率%
インフルエンザウイルスA(H1N1)型
Influenzavirus Type A(H1N1)
ATCC VR-1469
なし >99.99
あり >99.99

N.T Not testde. ※検出限界以下
(Test report on effectiveness of the hand disinfectant. Micromun GmbH., Greifswald (Germany) )

2.うがい

うがいは、繊毛運動のようなのど本来が持つ防御機能を高めるとともに、物理的な洗浄効果や、さらにうがい薬を使えば殺菌作用によって口腔やのどを清潔にします。その結果「口腔」を介する感染対策の抑制が期待できます。

もっと詳しくうがい

3.マスク

咳やくしゃみの際に、病原体を含むしぶき(飛沫)を他のヒトにうつさないようにする対策です。たとえばインフルエンザにかかった人がくしゃみをすると、

  1. ウイルスを含む飛沫が
    放出され物品に付着→
  2. ウイルスで汚染された物品を
    他のヒトが手で触れる→
  3. その手で目や鼻をこする、
    または食事をする

以上のように、モノを介して伝播することも考えられます。マスクを着用することで、飛沫が拡散することを抑えられるため、症状のある従業員には着用を徹底させます。

4.予防接種(インフルエンザワクチン)

インフルエンザワクチンを接種することで、感染を100%防ぐことは出来ませんが、他の一般的なワクチン(麻疹・風疹など)同様、予防効果と、重症化を抑えることが期待できます。インフルエンザワクチンの場合、成人健常者では70%~90%の確率で発症予防効果の報告があることから、従業員に対して予防接種を推奨することは、社内の感染率を抑える効果があると言えるでしょう。

2023~24シーズンのワクチン株

以下4種を混合したものを接種します。

A型株

A/Victoria(ビクトリア) /4017/2022(IVR-238)(H1N1)pdm09

A型株

A/Darwin(ダーウィン) /9/2021 (SAN-010)(H3N2)

B型株

B/Phuket (プーケット) /3073/2013 (山形系統)

B型株

B/Austria(オーストリア) /1359417/2021(BVR-26)(ビクトリア系統)

まめ知識

インフルエンザワクチン株の選定方法

季節性インフルエンザウイルスは絶えず変化するため、ワクチン株は毎年検討が行われ選定されます。
ワクチン株の決定までの流れを以下に説明します。

検討会の内容の主な詳細

株候補の選択

  • WHO「世界におけるインフルエンザウイルスの検出状況」参考
  • WHOより年2回発表される北半球および南半球に対する季節性インフルエンザワクチンの推奨構成が発表され日本は2月頃に発表される北半球の次シーズンに対するワクチン株参考
  • 国内のインフルエンザ検出状況参考

適格性の評価

  • ワクチン接種後のヒト血清と流行株との反応性を評価
  • ワクチン候補株の製造効率等の適格性を評価

ピックアップ

Pick Up