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Dr.ヨコヤマコラム

第177回:誤嚥性肺炎の予防に、口腔ケアで"義歯(入れ歯)"の清掃(洗浄・除菌)も忘れないで!

 今季は、例年よりインフルエンザの流行が早く、流行のピークも12月下旬から1月中旬に早まる恐れがあります。さらにノロウイルスなどによる感染性胃腸炎(食中毒を含む)の集団感染も国内各地で多発し始め、新聞やテレビ等で報道されています。

インフルエンザとノロウイルス ここ数年、12月から2月にかけて、福祉介護施設や医療施設などでインフルエンザや感染性胃腸炎の集団感染が発生し、合併症(呼吸不全や誤嚥性肺炎など)を引き起こすなどして、死亡する人が出ています(筆者の専門コラム第155回第167回参照)。
 今季は今のところ、まだインフルエンザや感染性胃腸炎の集団感染などで、肺炎(誤嚥性肺炎など)や呼吸不全などの合併症による死者が出たという報道は(筆者が知る範囲で)見受けられません。

口腔ケアスポンジブラシの使用例 これも、医療や介護等の現場で、インフルエンザや感染性胃腸炎の集団感染の発生時に、誤嚥性肺炎などの合併症の発生を防ぐ対策の一つとして、「口腔ケア」の取り組みが、自主かつ積極的に行われているからと思われます。口腔ケアをこまめに行うことによって、誤嚥性肺炎の防止だけでなく、他の感染症や重篤な全身疾患の発生予防にも大きな成果を上げている事例が、関連学会や新聞等で多く発表(報道)されています。口腔ケアは、肺炎などの呼吸器系疾患や重篤な全身疾患の患者を減らし、医療費の削減にも役立っています。

 肺炎(とくに誤嚥性肺炎)は、要介護を必要とする高齢者の死因の上位を占めています。最近になって、誤嚥性肺炎の予防で、高齢者等が装着している"義歯(入れ歯)"の手入れも大切なことが分かってきました。東北大学の研究グループが、要介護の認定を受けていない高齢者を対象に、入れ歯の清掃頻度と過去1年間の肺炎発症との関連性を調査しています。その結果、誤嚥性肺炎の予防に、要介護の認定を受けていない高齢者において、入れ歯の手入れを毎日行わない人は、毎日手入れをする人に比べて、過去1年間に肺炎を発症した人が、65歳以上で1.3倍、75歳以上で1.58倍多くなっていることが分かりました(国際科学雑誌"Scientific Reports";電子版、2019年9月24日掲載から)。傾向スコアを用いた統計解析による科学的な検証結果から、入れ歯の清掃を含めた口腔ケアが重要であることが示されています。

 入れ歯の清掃(除菌)がいい加減で不十分だと、入れ歯に付着(生残)した細菌が増殖します。高齢者は、加齢で嚥下機能が衰え、飲み込む力が低下していることがあり、細菌を含む唾液や食物が食道でなく、気管や肺に入って、肺炎を起こしやすくなっています。

 入れ歯を装着している人は、硬い食物よりも軟らかい食物を好む傾向があります。そんな食事を長く続けていると、口の機能が衰え、嚥下力も低下します。入れ歯による食事習慣の悪化や、入れ歯を不潔にすることで、肺炎になるリスクが高くなります。

 インフルエンザや感染性胃腸炎の発症後に、誤嚥性肺炎などの合併症を引き起こさないよう、高齢者がいる介護施設などは、歯科医師や歯科衛生士の指導の下で、口腔ケアを取り組む中で、入れ歯の洗浄(除菌)も、出来れば毎日1回行って、入れ歯の清潔保持を図る必要があります。

 これから先、インフルエンザや感染性胃腸炎が本格的に流行するシーズンに入り、集団感染などで発症者がさらに増え、重症者(死亡を含む)が出る恐れがあります。

手洗いしている手 インフルエンザの感染・拡大を防ぐため、必ず「予防接種」を受け、「手洗い、うがいの励行」や「適切なマスクの着用」、「咳エチケットの遵守」、「室内の定期的な換気と適切な温湿度管理」など必要な感染予防対策を、また感染性胃腸炎の集団発生を防ぐため、上記手洗いの励行に加え、食品(食材)の十分な洗浄や加熱調理、オムツ類や汚物(嘔吐物、便など)の適正な処理(消毒など)、施設内環境(共用物品類を含む)の消毒など必要な対策を、施設全体で取り組む必要があります。

 高齢者や5歳以下の乳幼児は、体の抵抗力(免疫力)が弱く、上記感染症にかかりやすく、早期の受診と適切な治療が遅れると、重症化(死亡を含む)することがあります。

 福祉介護施設や保育施設などで、インフルエンザや感染性胃腸炎の集団発生が起きないよう、施設の管理・運営者は、上記感染予防対策を推進する中で、職員や利用者等の健康管理(健康チェック)に加え、十分な睡眠と休養や、栄養バランスのとれた食事、口腔ケア(入れ歯の洗浄・除菌を含む)などの対策を取り組むことが望まれます。

 インフルエンザや感染性胃腸炎の発症者(その疑いがある人)が出た時は、速やかに隔離し、早く専門医による受診、治療を受けて、施設内における感染の拡大や、重症者(死亡を含む)の発生を防いで下さい。

(2019.12.5)

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先生のプロフィール

横山 浩

1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了 薬学博士、薬剤師

職歴
大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)
(社)大阪府薬剤師会試験検査センター
サラヤ株式会社(現在)
学会・研究会活動
日本薬学会
日本環境感染学会
日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)
環境管理技術研究会