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Dr.ヨコヤマコラム

第184回:レジオネラ症で高齢者施設にて死亡事例が発生。清掃や消毒など感染予防対策の推進、徹底を!

 新型コロナウイルス国内で新型コロナウイルス感染症(COVID-19感染症)の感染が再燃し、7月下旬に入って、感染者が、東京都や大阪府、神奈川県、愛知県などの都市部を中心に急増しています。国内各地で市中感染や職場感染、家庭内感染などによるクラスターの発生が相次ぎ、新規感染者が増えて感染が拡大しており、7月末の時点で、国内の感染者は累計で35,000人を超え、死者も1,000人を超えています。

 COVID-19感染症は、軽い症状の感染者や、無症状の感染者、感染経路が不明な感染者などを介して、若年層を中心に子供や高齢者まで感染者の年齢層が広がり、新規感染者が急増し、重症者も増えています。要入院、療養等調整中の新規感染者がこのまま増え続けると、医療崩壊を招き、死者が多発する恐れがあります。

 COVID-19感染症の感染拡大を防ぐため、"感染しない・感染させない"対策が不可欠で、これまで以上に国や地方自治体が出す感染情報や感染状況を注視し、気を緩めずにソーシャルディスタンスを守り、3密を避け、不要不急の外出を控えることや、マスクの着用、手洗い・手指消毒の励行などの感染予防対策を推進、徹底することが望まれています。

 ところで、今年6月にレジオネラ症の死亡例が、新聞等で報道されています。千葉県の老人ホームに入所中の女性(84歳)が感染し、レジオネラ肺炎で死亡しています。市保健所は、死亡した女性の個室や浴室などを調べていますが、感染経路は特定されていないようです。

 高齢者が利用する医療・介護施設などで、レジオネラ感染による死亡例は、2018年12月から2019年11月にかけて、筆者の知る範囲で以下の4件が、新聞等で報道されています。

  • 2018年12月に大分県の高齢者施設で、入所者3人が集団感染し、うち1人が死亡。
  • 2019年1月に北海道の介護保険施設で、入所者3人が集団感染し、うち1人が死亡。
  • 2019年2月に兵庫県の医療施設で、入院中の70代の女性が、院内感染で死亡。
  • 2019年11月に滋賀県に住む70代の男性が発症し、死亡。

上記大分県と北海道の場合は、部屋の中にあった加湿器から菌が検出され、兵庫県の場合は、利用した個室の蛇口の湯水から菌が検出されています。加湿器と蛇口が感染源と推定されています。

 ここ数年、レジオネラ症の発症者は、年々増加しています。2019年の発症者は2,314人で、過去最多の発症者が出ています(表1)。

今季(2020年)も、7月19日の時点で発症者が887人で、発症者は、神奈川県と大阪府(各58人)が最も多く、次いで東京都(56人)、兵庫県(50人)、埼玉県(48人)、千葉県(47人)、岡山県(43人)、愛知県(41人)の順で、多く報告されています。発症者は、60代以上の高齢者が多く、全体の9割を男性が占めています(国立感染症研究所のIDWR;第29週、速報)。

 今季のレジオネラ症発症者の報告数(887人)は、昨年の同時期に比べて約17%減少しています。新型コロナウイルス対策や、4月7、16日に出された緊急事態宣言による外出自粛などが影響していると思われます。しかし、5月下旬に緊急事態宣言が全面解除されて以降、レジオネラ症の発症者および報告数は再び増え始め、7月に入って、1週間当たりの発症者が80人前後となり、昨年並みの発症者報告数に近づいています。

 ここ10年、レジオネラ症の発症者数と死者数は、下表に示すように年間発症者数が800人前後から2,000人前後に増え、うち死者数は60人前後となっています。

表1.レジオネラ症の国内発生

発症者数(人) 死者数(人) 発症者数(人) 死者数(人)
2009 717 58 2015 1,592 59
2010 751 43 2016 1,602 67
2011 818 56 2017 1,722 53
2012 899 58 2018 2,130 53
2013 1,124 64 2019 2,314 52
2014 1,248 65 2020 625* 未発表

(国立感染症研究所のIDWR、厚生労働省の人口動態統計、*IDWR;第25週、速報)

 厚生労働省は、2015年3月に「循環式浴槽におけるレジオネラ症予防対策」の改訂版を出しています。そして、2018年8月に「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」の一部改正(厚労省告示第297号)を行って、衛生管理の対象に加湿器を加え、入浴設備や空気調和設備の冷却塔、給湯設備、加湿器などの衛生管理の維持、徹底を求めています。また、2019年9月に「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について」(生食発0919第8号、令和元年9月19日)を出し、これらの改正を踏まえ、2019年12月に「循環式浴槽におけるレジオネラ症予防対策マニュアルについて」(平成13年9月11日付健衛発第95号)を改正しています。

厚生労働省は、上記通知やマニュアルを提示して、レジオネラ症の発生防止や、発症者の低減を目指しています。それにも関わらず、入浴施設や介護施設などでレジオネラ症の発症者や死者が出ており、近年は季節に関係なく発生しています。

60代以上の高齢者は、加齢で身体の免疫力が低下して、レジオネラ属菌に感染しやすく、発症すると症状が進行して重症化や死亡することがあり、注意する必要があります。

レジオネラ感染は、その殆どが入浴設備(シャワーを含む)や給湯・給水設備、配管、加湿器、利用水等の衛生管理(清掃や洗浄、換水、消毒、水質検査など)の不徹底によって発生しています。

 清掃、ふきん今一度、レジオネラ属菌が入浴設備や給湯・給水設備、加湿器等の中で汚染や繁殖しないよう、自施設で行う衛生管理(清掃、洗浄、換水、消毒、水質検査など)の実施状況(衛生対策や検査の内容、作業方法・手順、評価基準、記録など)を点検し、問題点があれば、速やかに是正、改善して下さい。

厚生労働省の「レジオネラ対策のページ」で開示された事務連絡「施設の使用再開に伴うレジオネラ症への感染予防対策について(令和2年5月13日)」を参考にしながら、自施設でレジオネラ症の発症者が発生しないよう、上記感染予防対策を推進、徹底して下さい。

(2020.8.11)

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先生のプロフィール

横山 浩

1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了 薬学博士、薬剤師

職歴
大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)
(社)大阪府薬剤師会試験検査センター
サラヤ株式会社(現在)
学会・研究会活動
日本薬学会
日本環境感染学会
日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)
環境管理技術研究会