サラヤ 福祉ナビ

福祉介護現場で知りたい!
感染対策・栄養改善・口腔ケアのサポート情報

Dr.ヨコヤマコラム

第180回:ヒトメタニューモウイルスによる集団感染、高齢者施設で発生、死者が出る、手洗いや消毒など感染予防対策の推進、徹底を!

 バイキン軍団:インフルエンザ流行が例年より早く始まったインフルエンザは、2月に入っても昨年の同時期に比べて、発症者が少なく、例年の半分以下に止まっています。これも現在、国内で取り組まれている新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19感染症」と表記)対策で、手洗いや消毒、マスクをする人が増え、インフルエンザの感染予防に大きな効果が出ているからと推察されます。

 そして、前回のコラムに取り上げたCOVID-19感染症ですが、昨年12月に、中国で発生した後、2月末の時点で、中国以外の54の国・地域へ感染が拡大し、新たな発症者や死者が相次ぎ、パンデミック(世界的流行)の可能性が生じています。日本でも、国内各地で市中感染や院内感染などが発生し、3月5日の時点で少なくとも発症者が340人を超え、死者が6人出ています。

 3月に入りましたが、COVID-19感染症は、国内感染が、まだ終息する気配が見受けられません。ここ1カ月は、まだ国内各地で発症者が発生する恐れがあります。

 抵抗力の低下さらに新型コロナウイルスの潜伏期間は、1〜14日間の幅に止まらず 、それ以上の長い期間でウイルスが体内に残存している可能性が考えられるケースも認められています。従って、長い潜伏期間中に、感染に気づかず、医師の診察を受けるまで、家庭や職場、医療機関、学校施設、社会福祉施設(高齢者施設など)、公共交通機関、商業施設など多数の人が利用する場所(施設)で、他の人に感染を拡げる恐れがあります。加齢で体力や免疫力が低下している高齢者や、他の呼吸疾患や慢性疾患など持病を持っている人は、ウイルスに感染して発症すると、重症化しやすく、重い肺炎などを併発して死亡することがあります。

 国(厚生労働省)は、国内感染の早期収束を目指して、ウイルス感染を封じ込めるため、必要な対策を早急に講じています。COVID-19感染症の感染拡大や、高齢者への感染、重症化(死亡を含む)を防ぐため、1月31日から地方自治体に事務連絡を逐次出して、必要な対応(感染予防対策など)の周知、徹底を要請しています。2月24日付けの事務連絡では、高齢者施設や障害者施設などを対象に、感染拡大を防ぐため、面会の制限や、職員や面会者の体温測定などを徹底することなどを求めています。

 国や地方自治体が提供する情報などに注視しながら、正しい情報を入手、共有して、施設内でのCOVID-19感染症の発生(拡大)を防ぐ必要があります。施設の職員や利用者、訪問者などは、国内感染が沈静化するまで、不要不急の外出(訪問)を控え、人混みを避けるなどして、感染しないよう、十分に気をつけて下さい。

 COVID-19感染症の症状や感染予防対策などについて、筆者の専門コラム(第179回)で記しています。国(厚生労働省)の提供する情報「新型コロナウイルス感染症について」とともに参考にして、感染予防に努めて下さい。

 そして今季も、上記COVID-19感染症やインフルエンザの他、国内でヒトメタニューモウイルス(Human metapneumovirus;hMPV)による感染症の発症者が、国内各地で発生しています。

 hMPV感染症は、インフルエンザと比較して発症者数が少なく、世間であまり知られていない呼吸器感染症ですが、初動対応を誤ると、集団感染が発生し、死者が出ることもあります。1月に、徳島県の介護老人保健施設で、入所者の男女36人が発症し、うち5人(80〜100代の男女)が肺炎などで死亡しています。

 高齢者施設におけるhMPV感染症の集団感染の発生は、過去にも(筆者が知る範囲で)下記発生例が報告されています。

  • 2013年に、千葉県の福祉施設で、入所者51人と職員2人の計53人が集団感染し、うち入所者15人が肺炎を併発する。
  • 2013年に、群馬県の社会福祉施設で、入所者46人と職員10人の計56人が集団感染する。
  • 2015年に千葉県の社会福祉施設で、利用者44人と職員14人の計58人が集団感染し、うち6人が肺炎や気管支炎を発症する。
  • 2016年に東京都の特別養護老人ホームで、入所者28人と職員3人の計31人が集団感染し、うち入所者3人が死亡する。

 hMPV感染症は、乳児や高齢者などが罹りやすく、呼吸器(気道)に炎症を引き起こす病気です。ウイルスの潜伏期間は4〜5日で、一年を通して発症者が出ており、とくに2〜6月に発症者が増加する傾向があります。

 hMPV感染症は、COVID-19感染症炎やインフルエンザと同様、発症者のくしゃみや咳による飛沫感染や、ウイルスが付着した手や鼻、物品類(食器類、玩具など)、手すり、ドアノブ、タオルなどに触って移る接触感染などによって、ヒト→ヒト感染で拡大します。

 hMPV感染症の集団感染は、高齢者施設の他、保育施設や幼稚園、小学校、家庭などでも発生しています。

 手洗い高齢者や乳児がいる高齢者施設や保育施設などで、hMPV感染症の発生(拡大)が生じないよう、職員や利用者、家族等の健康管理(健康チェック、体温測定を含む)をこまめに実施しながら、発症者の早期発見と隔離(治療)、手洗いやアルコール消毒など必要な感染予防対策を徹底して下さい。COVID-19感染症やインフルエンザの感染予防にもつながります。

 hMPV感染症の発生状況や感染予防対策などについて、筆者の専門コラム(第159回)で記しており、参考にして下さい。

(2020.3.6)

バックナンバー

先生のプロフィール

横山 浩

1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了 薬学博士、薬剤師

職歴
大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)
(社)大阪府薬剤師会試験検査センター
サラヤ株式会社(現在)
学会・研究会活動
日本薬学会
日本環境感染学会
日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)
環境管理技術研究会