サラヤ 福祉ナビ

福祉介護現場で知りたい!
感染対策・栄養改善・口腔ケアのサポート情報

Dr.ヨコヤマコラム

第156回:"加湿器"のレジオネラ汚染に注意、集団感染で死者が発生、日常的な衛生管理(清掃や洗浄、消毒など)の推進、徹底を!

インフルエンザは流行ピークが過ぎて、2月中旬以降、感染者が減少に向かっています。とは言え、昨季の同時期より多い発症者が出ており、流行が沈静化する4月頃まで、感染しないよう、手洗いやうがいなど基本的な感染予防対策を徹底して下さい。

今冬は、インフルエンザが大流行し、感染予防対策の一つとして、家庭や医療施設、福祉介護施設などで小型の"加湿器"が重用されています。

エアコンや電気ストーブを使用する部屋は、室内の空気が乾燥し、湿度も低くなって、喉の粘膜を傷めたり、ウイルスが活性化するなどして、インフルエンザに感染しやすくなっています。そこで、加湿器を使って、室内の温・湿度(温度;約25℃、湿度;50~60%)を維持して、インフルエンザの感染リスクを低くする対策が取られています。

ところが、昨年末から今年1月にかけて、大分県の高齢者施設で、利用者3人がレジオネラ属菌が原因の感染症「レジオネラ症」に感染し、うち1人(90代の男性)が死亡しています。施設の居室に置かれていた加湿器から菌が検出され、加湿器が集団感染の原因と推定されています。

バイ菌軍団レジオネラ菌

加湿器は、現在4つのタイプ(超音波式、気化式、ハイブリッド式、スチーム式)が市販されています。上記集団感染が発生した施設では、超音波式の加湿器が使用されていました。

超音波式加湿器は、手入れが十分でないと、タンクの水に微生物(細菌やカビ類など)が混入(汚染)して生息(繁殖)します。加湿器のタンクやフィルター、トレーの掃除(洗浄、消毒など)を怠ったり、タンクの水を継ぎ足したりすると、水に含まれる微生物が、そのまま霧状になった水と共に、空中に放出され、室内に拡散する恐れがあります。

上記高齢者施設で発生したレジオネラ属菌による集団感染も、タンクの水にレジオネラ属菌が混入、繁殖して、ベッドの近くなどに加湿器が置かれて、入所者が気づかずに、菌を吸い込んで感染した可能性があります。

レジオネラ感染を防ぐため、室内に設置した超音波式加湿器は、1)こまめに清掃(洗浄、消毒)する、2)置き場所に注意する、3)タンクの水(水道水)は毎日交換する、4)使用しない時は、水を抜いて、乾かして保管する、5)使用中は、室内の湿度が60%を超えると、カビや微小昆虫(ダニなど)が繁殖しやすくなるので、加湿器のオンオフをこまめに行って、湿度が50~60%になるように調整するなどの対策が必要です。

加湿器を使用する部屋は、こまめに掃除をして、上記湿度管理や換気を行いながら、室内を出来るだけ清潔な状態に保つことは言うまでもありません。

大分県の高齢者施設におけるレジオネラ属菌の集団感染(死者の発生)を受け、厚生労働省は、超音波式加湿器の使用について、「レジオネラ症の原因となる可能性がある」と注意喚起しています。レジオネラ症は、今季も、国内各地で発症者が多発しています。国立感染症研究所の週報(IDWR;第7週、速報)を見ると、2月18日の時点で、発症者が142人で、前年の同時期(121人)より多い発症が出ています。

レジオネラ症の死者も出ており、感染死例が新聞等で報道されています。2月に千葉県で病院に入院していた男性会社員(56歳)が死亡しています。感染経路は特定されていないようです(2月15日;産経新聞)。

レジオネラ症は、ここ10年間を見ても、下表に示す発症者と死者が出ています。

表.レジオネラ症による発症者と死者(2008~2017年)
発症者数(死者数) 発症者数(死者数)
2008
2009
2010
2011
2012
893 (46)
717 (58)
751 (43)
818 (56)
899 (58)
2013
2014
2015
2016
2017
1,124 (64)
1,248 (65)
1,592 (59)
1,602 (67)
1,722 (未発表)
(国立感染症研究所のIDWR、厚労省の人口動態統計から)

 

上表を見る限り、ここ数年、レジオネラ症の発症者と死者は、年間発症者が1,600人前後で推移し、うち60人前後の死者が出ています。国と地方自治体によるレジオネラ症対策が推進されていますが、発症者と死者の数が一向に減少せず、逆に増える傾向が見受けられます。

レジオネラ感染は、温泉や旅館、公衆浴場(銭湯)、遊泳場(プールなど)で散発していますが、高齢者が利用する福祉介護施設でも発生しています。

高齢者は、体調を崩しやすく、レジオネラ属菌にも感染しやすくなっています。高齢者は感染すると、発症後、重度の肺炎になって死亡する恐れがあり、注意する必要があります。

清掃する女性

レジオネラ感染は、入浴施設の浴槽や配管、水等の衛生管理や、施設内外の環境衛生管理の不徹底によって発生しています。今一度、自施設における前記衛生管理や環境衛生管理の実施状況(衛生対策の内容、作業方法・手順、評価基準など)を点検し、問題点が見つかれば、速やかに是正(改善)して下さい。

高齢者が利用する福祉介護施設や医療施設などで、レジオネラ感染が発生しないよう、厚労省告示第264号「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成15年7月25日)や、筆者のコラム(第113回)などを参考にしながら、上記感染予防対策を推進、徹底して下さい。

(2018.3.5)

関連ページへのリンク

バックナンバー

先生のプロフィール

横山 浩

1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了 薬学博士、薬剤師

職歴
大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)
(社)大阪府薬剤師会試験検査センター
サラヤ株式会社(現在)
学会・研究会活動
日本薬学会
日本環境感染学会
日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)
環境管理技術研究会