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Dr.ヨコヤマコラム

第126回 人食いバクテリア(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)に注意 患者報告数が過去最多のペース、致死率30~50%!

 今季は、A群溶血性レンサ球菌による感染症が国内各地で多発しています。中でも、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発症者が多く報告されています。8月16日の時点で発症者が284人に上り、1999年の調査開始以降、過去最多を更新しています。発症者は、都道府県別にみると東京都が45人で最も多く、次いで大阪府(28人)、神奈川県(20人)、千葉県と兵庫県(15人)と、人口が多い都市部で発症者が多く出ています(国立感染症研究所のIDWRから)。

発熱 劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、主にA群溶血性レンサ球菌の感染によって引き起こされます。2~5日間の潜伏期を経て、手足の腫れや喉や舌の痛みなどの症状に止まらず、菌が喉や皮膚の傷口などから血液などに侵入し、突然38℃以上の発熱が出て、手足が赤く腫れるなど、症状が急激に悪化します。手足の筋肉が壊死し、血圧低下や意識障害、ショック症状、多臓器不全などを併発して死に至ることもあります。抗菌薬で治療しますが、致死率は30~50%と高いため、「人食いバクテリア」とも称され、怖がられている感染症のひとつです。

 劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、子どもから大人まで広範囲の年齢層に罹りますが、30代以上の大人に多いのが特徴です。基礎疾患(がんや糖尿病、慢性呼吸器疾患など)を持っている人や、体の抵抗力(免疫力)が落ちた人、ステロイドを服用している人などは、発症リスクが高くなると言われています。

 原因となるA群溶血性レンサ球菌は、子どもから大人に幅広く感染しますが、症状の出ない人も多く、症状が出ても、発熱や咽頭炎、皮膚感染症を発症する程度で治ります。このように、ほとんどの発症者は、咽頭炎や皮膚感染症だけにとどまりますが、細菌が存在しない血液や筋肉などにA群溶血性レンサ球菌が侵入することで、上記の重篤な疾患を引き起します。A群溶血性レンサ球菌が血液や筋肉などに入ると、なぜ劇症化するのか、そのメカニズムはまだ詳しく分かっていないようです。

手荒れ レンサ球菌は、口や鼻からだけでなく、皮膚炎や水虫、皮膚荒れ(ひび、あかぎれ)などからも体内に侵入することがあります。劇症化を防ぐため、怪我をした場合には、傷口を消毒して清潔に保つ。皮膚炎や水虫、皮膚荒れは、適切な治療やスキンケアを行うなどして、病原菌が体内(血液など)に入らないようにする必要があります。手足等に出来た傷や皮膚荒れなどを軽く見てはいけません。傷口や皮膚炎、皮膚荒れが悪化(化膿など)したり、高熱や激しい喉の痛み、手足の腫れなど、A群溶血性レンサ球菌の感染が疑われる症状が出た時は、早期治療が不可欠です。速やかに専門医による受診と治療を受けて、重症化(死亡を含む)を防いで下さい。

 A群溶血性レンサ球菌の感染を防ぐ対策として、風邪やインフルエンザなどの予防対策と同様に、うがいや手洗いの励行、マスクの着用などが有効です。

 福祉介護施設は、免疫力が落ちている高齢者などが多く利用しています。日常から栄養バランスの取れた食事や十分な睡眠を摂る、疲れやストレスを溜めない、適度な運動を行なうなど、健康的な生活を送って、免疫力をアップさせておくことも大切です。

 A群溶血性レンサ球菌による感染症の予防について、筆者のコラム(第68回第118回)で記しています。ご一読下さり、参考にして下さい。

上記の感染予防対策を推進、徹底し、自施設から劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発症者を出さないようにして下さい。

(2015.09.11)

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先生のプロフィール

横山 浩

1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了 薬学博士、薬剤師

職歴
大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)
(社)大阪府薬剤師会試験検査センター
サラヤ株式会社(現在)
学会・研究会活動
日本薬学会
日本環境感染学会
日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)
環境管理技術研究会