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専門家コラム

小暮先生の現場の目

第6回:「増やさない」がキーポイント!ウェルシュ菌食中毒

ここ数年、ノロウイルスやカンピロバクターに次いで患者数の多い食中毒は「ウェルシュ菌」による食中毒である。ウェルシュ菌による食中毒は、1件当たりの平均患者数は52人(2013~2017年の平均)で、他の原因物質に比べて一番多い。特に、大量調理をする給食施設での食中毒が多いため「給食病」と呼ばれることもある。

加熱後の放冷で爆発的に増殖!

ウェルシュ菌は、ヒトや動物の腸管内、土壌や水中などに存在している身近な細菌である。嫌気性菌(酸素のあるところが嫌いな細菌)であるため、環境が悪くなると芽胞という固い殻を作って身を守る。

ウェルシュ菌そのもの(栄養型)は熱に弱いが、形成する芽胞は100℃で数時間加熱しても死滅しない。この芽胞は、加熱後、まわりの温度が下がって50℃位になると発芽し始め、45℃前後で最もよく増殖する。その温度では約10分に1回分裂し、2、4、8、16、32、64と増えてゆき、3時間を超えると図のように爆発的に細菌数が増殖するのである。

ウェルシュ菌食中毒はどのようにして起こる?

通常のウェルシュ菌は食中毒の原因にはならないが、中には芽胞を作る時に毒素(エンテロトキシン)を産生するウェルシュ菌があり、その毒素(エンテロトキシン)が下痢や腹痛の原因となる。

ウェルシュ菌が付着した鶏肉でカレーを作ったとしよう。通常のウェルシュ菌(栄養型)は加熱で死滅するが、芽胞は残存し、そのまま放冷すると、50℃付近で芽胞が発芽し始め、栄養型となって増殖する。カレーは作った日よりも、一晩寝かせた翌日が美味しいとも言われるが、もし3時間以上も適温に放置すると、数百万個/g以上のウェルシュ菌が増殖し、一部は芽胞を形成してしまう。

翌日、このカレーを再加熱して食べるわけだが、しっかり加熱しないとウェルシュ菌は死なないし、芽胞は平気なので、大量のウェルシュ菌や芽胞を食べることとなる。

ウェルシュ菌は酸にも弱いので、胃酸で一部減少はするが、通過した菌が腸管に到達する。腸管に到達したウェルシュ菌は、空気のない温かい環境で6~18時間(平均10時間)増殖し、やがて芽胞を作る。この芽胞が毒素(エンテロトキシン)を産生して下痢や腹痛を引き起こすのである。

つまり、毒素を作るウェルシュ菌が増殖し、芽胞を作ってしまうと、食中毒は防げないということだ。

ウェルシュ菌の発症機序

1 調理前

2 加熱調理

3 徐々に放冷

嫌気条件で徐々に放冷すると、約50℃で芽胞が発芽し、ウェルシュ菌(栄養型)が急速に増殖する。

4 放冷後

増殖したウェルシュ菌(栄養型)を含んだ状態の食品に。

5 喫食

起こさないための対策は、加熱後温かい状態に放置しないこと!

ウェルシュ菌食中毒の原因食品は、煮物やカレー、シチュー、スープ、肉じゃが、麺つゆなど、肉や魚介類を使用した加熱調理食品が多い。特に、嫌気状態となりやすい寸胴鍋などで前日調理し、そのまま室温放置したことによりウェルシュ菌が増殖した例が多い。

どのようにすれば、食中毒を防げるか?予防方法は、加熱調理した食品を長時間温かい状態に放置しないこと。弁当製造工場や大規模ホテルなど大量調理をする施設では、ブラストチラー、タンブラーチラー、真空冷却器などを使用して、短時間で加熱調理食品を冷却している。冷却機器がない施設でも、小分けにして冷やす工夫が必要である。

私が20数年前に経験した事例だが、銀座にある西洋料理店の厨房に検査に伺うと、何も入っていない平バットがガス台にかかっていた。調理長さんに「何をしているんですか?」と聞くと「バットを焼いてからホワイトソースを小分けして冷やすんです」との答えだった。脇には、寸胴で煮たホワイトソースが水槽で冷やされていて、「なるほど、水槽で粗熱を取って、空焼きしたバットに入れれば、二次汚染が防げるし早く冷やせるということだな!」と得心した。調理長さんによれば、こうすることでホワイトソースの日持ちが良くなるのだそうだ。簡単なようでなかなか出来ない技!調理長さんに「何処で習ったのですか?」とお聞きしたところ、某有名ホテルで修業をなさったとのことであった。さすが!と納得するとともに、西洋料理の歴史と神髄に触れた気がした。

ウェルシュ菌食中毒は、増やさないことが大切であることが良く解る食中毒だといえる。あらためて、食中毒予防の三原則の、「つけない」「増やさない」「やっつける」を徹底しよう!