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専門家コラム

小林先生情報館

第9回:食品検査の必要性とその方法

私たちは毎日色々な飲食物を摂取していますが、その食品が安全で健康維持に必要であるという前提の元に食しています。その安全性を保障するために食材や加工、製造段階、さらに完成品および販売まで、それぞれにおいて、種々の必要な検査が行われています。また現在のわが国の食生活は輸入食品を無視しては成り立たないほど多種類の食品が大量輸入されており、同様に検査が行われています。一方、食中毒や感染症が発生した場合には、その原因を探求するために同じような検査が行われます。

食品に何らかの関係がある業務を持っている方は十分に承知されていると思いますが、再確認していただくために、どのような時に、どのような検査が行われるのかを、微生物学的なことに絞ってまとめましたので紹介します。また、一部残留農薬検査についての現状も紹介します。

目的 「食品関係」
食品の衛生管理
品質、安全性評価
食規格・基準の判定
クレーム対応
食中毒原因の調査
「感染症関係」
感染症の診断
治療薬剤の選択
治癒の判断
感染源の探求
種類 自主検査あるいは日常検査 (拭き取り、製品などの抜き取り)
行政検査 (収去検査と命令検査)(健康調査)
疫学調査 (関連性の確認)
方法 公定法(食品衛生法に基づく)による
公的機関の検査マニュアルによる
検査指針や検査必携による
独自の検査法による
迅速簡便法による

食品衛生検査指針や微生物検査必携、 衛生試験法・注解など

※表は左右にスライドできます。

平常時

平常時はその食品が衛生的に取り扱われ、製造されたかどうか、その品質や規格、基準が違反していないかについての安全性を評価するため生菌数や大腸菌数など食品ごとに決められた検査が行われます(食品衛生法)。食品ごとに許容菌数が決められており、大腸菌などは検出されてはならないと規定されていますが、一般的に可食限界といわれるのは食品1g当たり生菌数が105個以下とされていますので、これも参考にしてください。これらは主に自主検査と公的機関による収去検査によって行われます。

事件発生時

消費者などから購入した食品に対するクレームがあったとき、あるいは食べた食品が原因と推定される食中毒事件が発生したときには、その原因究明のため残っている食品や調理器具並びに施設内の拭き取り検査などが行われます。

介護施設や病院などの施設でしばしばみられるのですが、異常を訴える患者が数日間に渡り発生するようなときがあります。このような場合は同じ食品を食べて発生した食中毒の可能性は低いと考えられ、ヒトからヒト、あるいは施設内の器具や施設環境などを介して起こっていることが推察されます。そのため、ヒトの検体(検便検査)と施設内の色々な場所の拭き取り検査を行い、複数の患者から同じ病原体が検出され、その病原体と施設内から検出された病原体が同じであることを、遺伝子解析検査(その病原体がどのような遺伝子の組成、構造をもっているかを調べる)も駆使して確認し、原因因子を突き止めます。これらの検査結果に加えて別途に調査した何を食べたか(喫食調査)や、発病状況、患者の症状、行動範囲などの疫学調査と併せて原因を決めることになります。

また患者から検出された病原体を用いてどんな薬剤が有効かを早期に検査し、有効なもので治療を行い、症状の軽快や病原体の有無も検査して治療効果の判断もします。

検査の種類

検査にはどのようなものがあるのでしょうか。

自主検査あるいは日常検査;この検査は拭き取りや製品の抜き取りによる検査で平常時、自社製品が衛生的に製造されているかを知るために行います。
行政検査;公的機関が常時食品の安全性をチェックするために行う検査で市販食品を収去して行います。毎年検査対象食品、検査数、検査項目を決めて行われています。
国(検疫所)では品目を決めた輸入食品について一定量を抜き取り検査しています。もし異常(違反)がみられ、国民に健康被害の恐れがあるときや、危害が発生しているときは直ちにその食品を重点的に検査する検査命令を出します。この例としてはまだ記憶に新しい中国餃子の残留農薬汚染事件(殺虫剤:メタミドホスなど)などがあります。また農薬や動物用医薬品についてはそれらを使用した野菜や畜産品に残留の恐れがあるため、常時検査(モニタリング検査)が行われ、違反があれば検査数を増加し、最終的には命令検査を指示します。命令検査の解除は輸出国が再発防止対策を立て、違反食品を輸出しない状況である事を確認して行われます。
わが国では平成18年5月29日に残留農薬のポジティブリスト制度が施行され、一定量以上の農薬等が残留する食品等の販売が禁止されています。また、残留する農薬等の残留基準値が決められている食品等については、その基準値を超えている食品等の販売を禁止、残留基準値が決められていない食品等については、0.01ppmを超える汚染がある食品の販売を禁止することになっています。

検査の方法

検査は検査目的により、大きく4つに分けられます。

  • 食品衛生法に基づく公定法
  • 公的機関の検査マニュアル
  • 検査指針や検査必携など
  • 独自の検査法

いずれの方法も生きた細菌を対象とした検査です。ほかに汚染の有無を素早く知りたい時には簡便法が行なわれる場合があります。どの検査方法で実施するのかは検査目的によって異なりますが、営業停止などの行政的対応が必要なときには公定法による検査は必須となります。
検査は生菌数や大腸菌数を正確に測定し、汚染の程度を知るための定量法と食中毒などの原因を決めたり、食品の安全性を確認するためどのような病原菌が存在しているかを調べる定性法があります。

各検査は下記のような方法で行われます。

  • 人工培地を使って細菌を発育させて行う培養検査法
  • 自動機器や簡易キット、同定試薬等による迅速簡便法
  • 病原体に特徴となる遺伝子を証明することによって存在を示唆する遺伝子検査法
  • ウイルスの検査には培養細胞や受精鶏卵を使った生物学的検査法

*必要があればマウスなど動物への接種実験などの検査も行います。
*検査する時期が遅くなった場合には、患者の血清を用いて抗体の有無を調べる 5. 免疫学的方法が行われることがあります。
培養検査法は、全ての細菌を検査するのは不可能ですが、得られた結果は最も信頼性があります。ただし、他の方法に比べて迅速性、簡便性の面で劣ります。
しかし患者が出ている場合はできるだけ早く原因を突き止めて適切な治療を行うことで症状も軽症で済み、感染の拡大を防ぐことにもなります。そのため多少検査コストが高くなっても、検査精度が落ちても、一度に多数を検査できる自動機器使用やキットを使った迅速簡便法、遺伝子検査法(PCR法など;後述)が実施されます。なお検査に適した検体は、急性期に十分量の検体を無菌的に採取することが必要です。
PCR法は食品に存在する細菌の遺伝子(菌体やその病原因子あるいは保有する毒素遺伝子など)の一部を試験管で増幅して検出するもので、高感度で特異性が高いのですが、試薬がやや高価で、感染力のない死んだ菌の遺伝子も検出するので、加熱後の食品検査で陽性のときは、培養検査で生きていることを確認する必要があります。

とくに輸入食品について

輸入食品の監視は検疫所で行なわれますが、まず輸出国の衛生状況に関した輸出品の検査結果と証明書による審査、さらに輸入時には業者からの輸入食品に関する届出書類の審査、過去における同様食品の違反事例、原材料や製造の仕方などの情報を調査します。これと平行して任意に検体を採取し(輸入量によって検査数が決まっています)、安全性や規格等の検査を行い、違反が判明したときは、全て輸入業者の責任で(1)戻しあるいは回収、廃棄、(2)違反原因を調査し明らかにする、そのうえで(3)違反を繰り返すときには営業停止や禁止を指示します。当然に検疫所におけるモニタリング検査の検査体制や検査数なども強化されます。

まとめ

食品の安全性は残留農薬などの化学物質、金属などの異物と食品に付着する微生物の影響によって、ときに脅かされます。そのため、それらの食品を提供する前に異常を検知し、排除する必要があります。なかでも微生物、とくに細菌によるリスクは、食品中で増殖するため汚染範囲を拡大し、極めて多数のヒトの健康を害することになります。従ってわが国では、食品からの危害防止のために原材料から加工、製造、出荷までの衛生管理、安全性確保の方法として、総合衛生管理製造過程承認制度が施行されています(1996年)。これはHACCPシステムによる衛生管理及び、その前提となる施設設備の衛生管理等を行うことにより、総合的に衛生が管理された食品の製造又は加工の工程を承認するものです。さらにそれに加えて最近提唱されたISO22000(食品安全マネジメントシステム、2005年)は、総合衛生管理製造過程承認制度が対象の食品分野(乳及び乳製品、清涼飲料水、食肉製品、魚肉練り製品、容器包装詰加圧加熱殺菌食品)が決められているのに対して、食品だけではなく、食品保管や輸送、洗浄剤・殺菌剤製造業や包装材製造業など食品に関係するあらゆる業種、組織を対象とした国際規格です。どちらの制度も安全な食品の提供を目的としており、これらの科学的分析に基づいて製造された安全な食品が常時入手でき、楽しい食生活を過ごしたいものです。

参考文献

厚生労働省:輸入食品監視業務ホームページ並びに「平成20年度輸入食品とモニタリング計画の実施について(食安輸発第0331004号)

獣医師、医学博士 小林 一寛