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専門家コラム

小林先生情報館

第5回:野菜、果物による食中毒について(その2)

小売店舗での注意点

以上は製造時までのリスクを書きましたが、販売(小売り)店舗の食品保管庫内での二次汚染や小分け包装、別容器への移し替えなど小売店舗作業での交叉汚染や二次汚染にも注意が必要です。スーパーマーケットのような大型店舗では、決まったメニューの食品を扱う調理場や食品製造所、小規模店舗におけるより、多くのヒトが関係し、扱う食材、食品も多数であることから、交叉汚染や二次汚染の機会も多く、冷蔵保管が極めて重要と思われます。また消費者(来店者)の手指を介した二次汚染にも注意が必要となります。

野菜の殺菌方法

野菜、果物からの食中毒予防には「大量調理施設衛生管理マニュアル」では十分に流水で洗浄し、必要に応じて200ppm次亜塩素酸ナトリウムで5分間浸漬して殺菌後、流水ですすぎ洗浄することにしています。種子の病原微生物を殺菌する確実な方法は確立されていませんが、わが国では40℃、24時間予備乾燥後75℃、5日の乾熱処理がかいわれに付着していた大腸菌(E.coli)殺菌に効果があったというものがあります(野菜・茶業試験場、平成9年6月)。米国(FDA)では500ppmの次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)または20,000ppm、15分の次亜塩素酸カルシウム(Ca(OCl))液の複数回の浸漬処理を推奨していますが、高濃度のため発芽率が悪くなり、種子の割れ目等があると完全に除去できず、その後もSalmonellaの食中毒が発生しています。これに代わる有効な方法はまだ確立されていません

放射線照射が食品汚染菌の殺菌に有効であるとの報告があります。米国では食鳥肉や殻付き卵および種子などに対しては許可されていますが、生野菜や発芽野菜については低線量で効果を認めたとする結果報告がありますが、野菜によっては品質低下をおこすとのことから他の殺菌法と組み合わせた方法が必要とされています。(放射線利用技術データベース、020218)。なお、わが国での放射線照射法はジャガイモの発芽抑制以外は許可されていません。

野菜の汚染実態は?

野菜の食中毒菌汚染実態調査は厚生労働省が実施したものがありますが、平成15~17年の結果をみるとE.coliは全てから検出されていますが、とくにもやし、みつばの汚染が高く20%以上にみられます。すなわち、何らかのルートで汚染した動物の糞便汚染が市販品で認められることを示しており、病原菌が付着していたときにはそれも生き残るということになります。検査した病原菌ではO157は全く検出されませんでしたが、Salmonellaは頻度が低いですがレタス、みつば、キュウリから検出されています。また別の調査では、サルモネラのほかにウエルシュ菌、リステリア菌など他の食中毒菌が検出されており、食中毒発生のリスクが野菜、果物に存在することを示しています(病原微生物検出情報,Vol.22)。

わが国では、農産物について微生物のほか異物、化学物質など全ての危害に関して、栽培から収穫、洗浄、保管、出荷、輸送に至る各段階の管理法については適正農業規範(Good Agricultural Practice;GAP)、処理、食品製造工場などでは適正製造規範(Good Manufacturing Practices;GMP)、スーパーマーケットや小売店舗などの流通段階や消費者では適正衛生規範(Good Hygienic Practices;GHP)などによって食材、食品の品質保証や衛生的な取り扱いと管理を行う方法が示され、遵守するようになっています。

これまでに報告されている食中毒で原因となった微生物とその野菜、果物を示しておきます(原因食品から病原体が検出されなかった推定の事例も含む)。

病原体 日 本 外 国
O157 キャベツ、白菜漬け、和風キムチ、貝割れ大根、メロン、香味和え、かぶの浅漬け、キュウリの浅漬け、おかかサラダ、ポテトサラダ、シーフードソース アルファルファ、レタス、生野菜サラダ、りんごジュース、ほうれん草、アルファルファ、サラダバー
サルモネラ キュウリ、ナスのネギトロ、ポテトサラダ メロン、フルーツサラダ、トマト(サンドイッチ)、野菜サラダ、オレンジジュース、コエンドロ(コリアンダー)、マンゴー、レタス、モヤシ、スイカ
赤痢菌 カットレタス
毒素原性大腸菌 生野菜サラダ、ニンジン
セレウス菌 モヤシ(自家製)
リステリア菌 セロリ、レタス、トマト、コールスロー
A型肝炎 ラズベリー、イチゴ、レタス、カットトマト
サイクロスポーラ ラズベリー(ガテマラ産)
クリプトスポリジウム りんごジュース

※表は左右にスライドできます。

参考

近年、わが国で健康面から多くのレストランや飲食店でみられる生野菜、果物を提供するサラダバーに関して是非記憶しておきたい、2つの興味のある報告がありますので紹介します。

(1) 1984年アメリカ・オレゴン州、某レストランのサラダバーで食事をしたヒトから751名のサルモネラ(S.Typhimurium)患者が発生した。当初は集団食中毒事件として調査が行われたが、ある新興宗教団体がこの地区で行われる選挙を妨害して中止させるため、人為的に細菌を汚染させたバイオテロ(食品テロ)といえる事件であったことが、約1年後に別件で逮捕された教祖の自白で明らかになった。(Torok TJ et al.、JAMA, 278:389-95, 1997)

(2) シンガポール・環境省食品管理局は、自国が温度の高い国でもあり、他国で生野菜や果物を介した食中毒事件の発生が数多く報告されており、サラダバーの衛生管理が必要であるとの観点から、レストランのサラダバーの野菜とドレッシングの衛生管理に関していくつかの遵守項目を明らかにしている。その主なものは、大き目の容器を使用する、一度取ったものを戻さないように(いらないものをとらないように)はっきりと食品名を書く、手で取ったりしないように取りやすい器具を使う、野菜と肉類のスープ置き場を分離する、消費者の素行をチェックするスタッフをおく、などである。更に、サラダが少なくなったとき追加補充はしないで新しいロットを提供する、ということも重要である。

(Epidemiological News Bulletin,28(4),21-24,2002.、(財)海外邦人医療基金(JOMF)ニュースレター、NL02120101)

なおこの資料をいただきました 海外邦人医療基金派遣(元)の大西医師と同基金、澤田直子氏に深謝いたします。

獣医師、医学博士 小林 一寛