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感染症の“今”を語る~Dr.濱田カフェ~
国内~海外の感染症の“今”を濱田先生の目線でお届けする時事コラムです!
1981年東京慈恵会医科大学卒業後、84年米国より留学し、熱帯医学、旅行医学を修得。帰国後、東京慈恵会医科大学熱帯医学教室講師を経て、2004年より、独)海外勤務健康管理センター所長代理として、海外渡航者の診療にあたるとともに、SARSなど海外感染症対策事業を運営。2010年7月より現職。ほかに、日本渡航医学会理事長、日本臨床寄生虫学会理事、著書に『旅と病の三千年史』(文春新書)、「世界一病気に狙われている日本人」「新型インフルエンザ『かかる前に』『かかってから』(講談社α新書)など多数。
2月に入りノロウイルスによる食中毒が各地で発生している。若い人は数日で回復するが、お年寄りや小さな子どもがかかると重症化することもある。
ノロウイルスはかなり昔から、冬の食中毒として流行していた。だが、この病原体が発見されたのは1972年と最近のことで、2002年にノロウイルスと命名される。日本の厚生労働省でも、2003年より食中毒統計でノロウイルスの発生状況調査を始めた。その結果、毎年200~300件の食中毒事例が報告され、そのほとんどが冬場に発生していることが明らかになった。
では、なぜノロウイルスによる食中毒は冬場に発生するのだろうか。多くの食中毒は夏場に流行するというのに。
食中毒とは食品などに含まれる有害な物質を摂取して起こる病気で、サルモネラ菌やカンピロバクターなどの細菌が原因になることが多い。この細菌性の場合、食品の中で病原体が増殖し、その数を増やすことが必要になる。それ故、増殖に適した高温多湿の夏に食中毒の発生が多くなるのだ。
その一方、ノロウイルスは少数でも食中毒を起こすことができる。つまり、食品の中で増殖する必要がないから、夏に流行する必然性もないのである。さらに、ノロウイルスが冬場に流行しやすい理由は、原因食品の第一にあげられるカキ(牡蠣)の生態に隠されている。
まず、ノロウイルスの感染経路を簡単に紹介しよう。患者の便の中に排泄されたウイルスは下水処理場に到着する。ここで、ほとんどの病原体は塩素消毒により死滅するが、ノロウイルスは塩素に抵抗性のため、一部が川や海に流れ出す。海に出たウイルスはプランクトンに付着してしばらく生きている。このプランクトンをカキが餌として食べる時に、ウイルスも体内に入る。そして、このカキを私たち人間が食べることでノロウイルスに感染するのである。
さて、ここからが温度の問題。もし海水温が10℃以上あれば、カキは活発に水分を取りこみ、体内に入ったウイルスを排泄する。しかし、海水温が10℃以下になるとカキの活動性が低下し、ウイルスを排泄できなくなる。すなわち、冬にとれたカキの体内には、ノロウイルスが濃厚に蓄積している可能性があるというわけだ。これが、冬場に流行が起こる理由なのである。
カキの食べごろは冬。この時期、この食材を美味しく安全に食べるためには、じっくり加熱してから口に運ぶのが一番である。もちろん、食べる前の手洗いも忘れないでいただきたい。