Home > 感染と予防Web > 感染症専門家コラム > Dr.濱田コラム > 第9回:地震被災地で注意する感染症
感染症の“今”を語る~Dr.濱田カフェ~
国内~海外の感染症の“今”を濱田先生の目線でお届けする時事コラムです!
1981年東京慈恵会医科大学卒業後、84年米国より留学し、熱帯医学、旅行医学を修得。帰国後、東京慈恵会医科大学熱帯医学教室講師を経て、2004年より、独)海外勤務健康管理センター所長代理として、海外渡航者の診療にあたるとともに、SARSなど海外感染症対策事業を運営。2010年7月より現職。ほかに、日本渡航医学会理事長、日本臨床寄生虫学会理事、著書に『旅と病の三千年史』(文春新書)、「世界一病気に狙われている日本人」「新型インフルエンザ『かかる前に』『かかってから』(講談社α新書)など多数。
3月11日に東北地方を中心に発生した巨大地震は未曽有の災害となりました。被災者の皆様には心からお見舞いを申し上げます。今回は震災後に発生する可能性のある感染症について解説します。
地震や津波の直後は、倒壊した家屋や流された車両などによる外傷患者が多発する。この傷口から侵入する感染症にまずは注意が必要だ。こうした感染症は消毒薬や抗菌薬で治療可能なものが大多数であるが、破傷風はワクチンによる予防を要する感染症である。いずれにしても、大きな怪我を負った者は早めに医療機関で処置を受けていただきたい。
震災後1週間程度してから発生する感染症が、インフルエンザや感冒などの呼吸器感染症である。インフルエンザについては3月になり流行が終息しつつあるが、避難所のように集団生活する場所では新たな流行が発生する。特に被災者は栄養状態の悪化などで抵抗力が低下していることが多く、呼吸器感染症に罹りやすい状態になっている。避難所では手洗いやうがいを励行するとともに、マスクの着用も必要に応じて実施すべきである。
この時期に発生するもう一つの感染症として経口感染症がある。日本のように衛生環境が整備された国であっても、震災後には飲料水や食品が汚染されるなどして、食中毒や下痢症が多くなる。特にこの時期はノロウイルスが流行しやすい季節であり、水や食品は加熱したものを摂取した方がいいだろう。避難所で飲食物を提供する自治体なども、この点には注意していただきたい。
震災後数ヶ月を経過した時点で流行する感染症として、発展途上国では蚊に媒介されるマラリアやデング熱がある。これは、水溜りで蚊が繁殖することに由来する。ただし、日本国内では元々患者が少ないため、こうした昆虫媒介の感染症が震災後に増加する可能性は低いと考える。なお、ゴミ処理の停滞でネズミの数が増えると、それに媒介されるレプトスピラ症やハンタウイルス感染症などが発生する可能性もある。いずれにしても、震災後は衛生環境の整備に力を注ぐとともに、年単位にわたりに感染症の発生を監視する必要があるだろう。
未曽有の災害により被災地の方々は大きな失意の中にいると思いますが、復興を加速させるためにも、感染症の予防を充分に心がけてください。