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感染と予防

企業の感染対策コラム

No.10 災害時のうがいの効用

— 命をまもる口腔ケア —

近年、全国的に大雨による水害や土砂災害が毎年のように発生しています。この夏は西日本を中心に、日本各地で想定外の豪雨が発生し、甚大な被害に見舞われました。日本は、自然災害が発生しやすい国土であるため、日頃から災害に備え、私たちは災害に強くならなくてはいけません。大規模災害時は口腔内の清潔を保つことが難しく、呼吸器感染症の発生が問題とされ、口腔ケアが重要と言われています。今回は、災害時の口腔ケアの一つとしてのうがいの効用についてお伝えいたします。

株式会社健康予防政策機構 代表・医師 岩﨑 惠美子

生体防御機能とうがいの効用

食べ物は、口から取り込まれ、のどへ行き、食道に入っていきます。呼吸では、空気が口・鼻から取り込まれ、のど、気管、気管支を通って、肺に入ります。のどから気管支の表面は粘膜に覆われており、繊毛という毛のようなものが生えています。この繊毛による繊毛運動で粘液を外へ送り出し、細菌やウイルス、ほこりなどの異物を肺に届かないように排除し、私たちの体は肺炎を起こしたりしないように守られています。

ウイルスなどの異物

うがいは、繊毛運動のような、のどが持つ生体防御機能を高めるとともに、物理的な洗浄効果や、うがい薬による殺菌効果によって口腔内やのどを清潔にします。その結果、のどの粘膜の機能が回復して活性化され、「口腔」を介する感染の予防や口臭の抑制が期待できます。

災害時に、高齢者の肺炎が多発

グラフは1995年の阪神・淡路大震災における震災関連死の死因別の割合を示しています。
阪神・淡路大震災の死亡者6,434人のうち、倒壊した建物による圧死などの震災の直接被害が原因の死亡者は5,512人であり、避難生活での体調悪化や過労などの間接的な原因による震災関連死は922人で、総死亡者数の14.3%を占めています。この震災関連死で約1/4を占め、最も多かったものは肺炎でした(223人、24.2%)。

阪神・淡路大震災(1995年)における「震災関連死」の死因別割合

肺炎の原因の一つとして、「誤嚥性肺炎」が多くおこっていたと言われています。誤嚥性肺炎は、口腔内細菌を含んだ唾液等が誤って気道に入り込み、細菌が肺の中で増殖し、炎症を起こします。阪神・淡路大震災の震災関連死の81.3%が65歳以上の高齢者であると報告されており、平時でも高齢者の肺炎の多くが誤嚥性肺炎によるものとされているため、震災時においても高齢者による誤嚥性肺炎が多かったと考えられています。

誤嚥性肺炎を防ぐ! - 口腔ケアの必要性 -

災害時で長引く避難所生活では、平時と事情が異なります。例えば、今年の水害等のように酷暑の中、発生した場合は、摂取する水分量が少ないと唾液の分泌が低下し、口腔の粘膜も乾燥します。冬期では乾燥により、のどの粘膜が乾燥します。また、避難所生活では、水不足のため摂取する水分量も少なくなり、また、トイレの利用も制限があるため水分摂取自体を控えてしまいます。避難所生活では、私たちの体を守るための、口腔内やのど等の粘膜の働きを弱める要因がたくさんあります。
さらに、災害時は、十分に水が使えないため、歯みがきなどによる口腔内の清掃や義歯の清掃を怠ってしまい、誤嚥した場合の感染源となる、口腔内の細菌が増加します。

口腔内の細菌が増加するほど誤嚥性肺炎の危険増加

口腔ケアをおこない、口腔内を清潔に保ち、細菌数を減少させることで、誤嚥性肺炎を予防することができ、高齢者の肺炎による死亡者を減らすことができます。

口腔ケアとしてのうがい

災害時には、平時のような歯みがきを行うことが難しい場合もあるため、少量の水でも口腔ケアを行う工夫が必要です。少量の水でできるうがいも、口腔ケアの一つです。

うがいには大きく分けて2つあり、上を向いて喉の奥を洗う「ガラガラうがい」と、口を閉じてほおをふくらませてクチュクチュ、グチュグチュ、ブクブクと口の中を洗う(洗口)「ブクブクうがい」があります。口腔ケアとしてのうがいは「ブクブクうがい」を中心におこないます。

うがいをする

「うがい」は一度に多くの水を口に含んで吐き出すより、はじめに少量の水を含んで、口の中でグチュグチュと十分におこない吐き出し、これを何回か繰り返す方が効果的です。さらに、うがい薬を使用することにより、殺菌・消毒効果が期待できます。

「うがい」で少しでも口の中を清潔にすることは、誤嚥性肺炎の予防につながります。うがい薬などの口腔ケア用品も防災備蓄として備えましょう。

今、私たちの社会は、高齢化社会と言われています。高齢者は、食べ物を飲み込んだり、異物を外に押し出したりする力が弱く、誤嚥性肺炎が災害時でなくとも多発しています。災害時のみならず日頃から、口腔ケアに取り組みましょう。

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PROFILE

株式会社健康予防政策機構

代表岩﨑 惠美子

岩﨑先生新潟大学医学部卒業後、耳鼻咽喉科医師を経て、インド、タイ、パラグアイで医療活動を行う。1998年より、厚生労働省、成田空港検疫所、企画調整官仙台検疫所長を歴任。その後、WHOの要請でウガンダ現地にてエボラ出血熱の診療・調査に従事。またSARS発生時には日本代表として世界会議に出席。2007年からは仙台市副市長に就任。インフルエンザ対策として「仙台方式」を提唱し、日本の新型インフルエンザ対策の基盤を構築する。現在は、感染症対策のプロとして、新型インフルエンザをはじめとする感染症対策の啓発活動を行っている。