企業の感染対策コラム

No.5 デング熱・ジカ熱などの蚊が媒介する病気に注意!

かつては日本でも蚊が媒介する感染症が流行していました

現在ではほとんど見られなくなりましたが、かつては日本でも、蚊が媒介する感染症の「日本脳炎」が流行していたこともありました。
それが、田んぼや畑などの用水路の整備が進んで蚊の産卵場所が減り、また養豚場の衛生管理の徹底などによって日本脳炎のウイルスを持った蚊の制圧に成功し、日本脳炎を克服してきました。ただ、東南アジアなどでは、この日本脳炎は現在も発生しており、小さい子どもがかかって命を落としたり、重症な後遺症を残したりする病気の一つとして、深刻な状況であることに変わりはありません。

蚊が媒介する感染症

国内では蚊が媒介する感染症の発生はあまり見られなくなっていた中で、2014年8月、東京・代々木公園に行った人々の中で、デング熱の感染者が発生し、私達は蚊が媒介する感染症の脅威が現在も存在しているのだということを、改めて教えられたのです。
日本脳炎、デング熱などの蚊が媒介する感染症は、東南アジアなどでは、今も日常的に流行しています。
特に、清流ではなく都会の小さな水たまりでも繁殖するヒトスジシマカやネッタイシマカに刺されてかかるデング熱では、特に小児で重篤化しやすく、「デング出血熱」に進んだ場合、多くの命を奪ってしまうことから、それらの地域では公衆衛生上の大きな問題となっています。
その他にも蚊が媒介する感染症としては熱帯、亜熱帯地域では、日本脳炎、チクングニヤ熱、ウェストナイル熱、マラリア、黄熱など多くの疾病があり、ほかにもリオオリンピックで問題となったジカ熱も蚊媒介性の感染症です。

蚊の防除ポイント

蚊は、家の周りなど私たちの身近にある水たまりに産卵し、ボウフラ(幼虫)になり、そして蚊(成虫)になって人を刺します。蚊が病原体(ウイルス)を保有していれば、刺されることによって感染します。蚊が媒介する感染症を防ぐためには、私たちの身の回りに、蚊が生息しないようにすることが大切です。
蚊は飛翔するため、防除が難しく、水中にいるボウフラの段階で蚊の発生防止対策を実施します。蚊の繁殖場所となる「水たまり」をなくすということが最も重要な対策となります。

グローバル化がもたらす感染症

特に近年進んだグローバル化によって、多くの人々が、蚊が媒介する感染症の発生する地域に渡航する機会も増えており、滞在中に蚊に刺されて感染してしまう恐れもますます増えていると言えます。また、それらの地域から来航する航空機に、ウイルスなどの病原体を持った蚊が紛れ込んで来て、到着した国内の空港や周辺で生息した場合には、それらの蚊を起点として国内で感染症が引き起こされてもおかしくない時代になっています。
先般の、日本国内でのデング熱の流行はそんな事情を教えてくれたと思うことが大切です。現在、私達が考えなければならないことは、身近な地域で蚊が繁殖する場所を無くすことが最も大切になります。

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PROFILE

株式会社健康予防政策機構

代表 岩﨑 惠美子

岩﨑先生新潟大学医学部卒業後、耳鼻咽喉科医師を経て、インド、タイ、パラグアイで医療活動を行う。1998年より、厚生労働省、成田空港検疫所、企画調整官仙台検疫所長を歴任。その後、WHOの要請でウガンダ現地にてエボラ出血熱の診療・調査に従事。またSARS発生時には日本代表として世界会議に出席。2007年からは仙台市副市長に就任。インフルエンザ対策として「仙台方式」を提唱し、日本の新型インフルエンザ対策の基盤を構築する。現在は、感染症対策のプロとして、新型インフルエンザをはじめとする感染症対策の啓発活動を行っている。


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