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Dr.ヨコヤマコラム

第160回:A型肝炎、患者が多発、高齢者は要注意、感染予防対策(手洗いや十分な加熱調理など)の徹底を!

 今季は、例年になく、A型肝炎の発症者が国内各地で多発しています。6月10日の時点で患者の報告数は388人で、昨年1年間の報告数(282人)を、すでに超えています。(国立感染症研究所のIDWR、第23週、速報から)。患者の報告は、39都府県からあり、東京都(193人)や神奈川県(48人)、宮崎県(21人)、大阪府(20人)、埼玉県(16人)、千葉県(11人)などで多く確認されています。患者は、40~60代の大人が半分近くを占めています。

バイキン軍団の肝炎のイラスト  A型肝炎は、その7割強が国内で感染していますが、海外(東南アジア地域など)で感染する人も増えています。
 A型肝炎は、A型肝炎ウイルス(Viral hepatitis A;HAV)によって引き起こされる一過性の急性肝炎です。ウイルスに汚染された食品(二枚貝など魚介類、野菜など)や水、人の手指などを介して感染します(主として経口感染)。生カキを食べるなど、魚介類の生食による感染例が、多く報告されています。
 HAVに感染すると、2~7週間の潜伏期を経て、発熱(38℃以上)や下痢、嘔吐、全身の倦怠感、食欲不振、悪心、黄疸などの症状が出ます。一過性の急性肝炎で、通常、1~2ヶ月で回復します。一度感染すると免疫が出来、その後は(生涯)感染しません。しかし、免疫を持たない中高年齢者は、感染、発症すると、年齢が上がるに従って重症化しやすく、稀に劇症肝炎や腎不全を引き起こして、死に至ることがあります。

 筆者が知る死亡例として、2015年1月に秋田県内の家族5人が感染し、うち4人が発症して、50代の男性1人が急性肝不全で死亡しています(国立感染症研究所のIASR;Vol.36、p.87、2015年5月号から)。家族5人は渡航歴がなく、原因食材など感染ルートも特定されていません。

 A型肝炎は、ここ5年間(2012~2016年)に、毎年、発症者が128~433人報告され、毎年3~8人が死亡しています(国立感染症研究所のIDWR、厚生労働省の人口動態統計から)。
 A型肝炎は、大人が感染すると、その75~90%が発症しますが、小児は感染しても、その80~95%は発症しません(不顕性感染)。しかし、症状の有無に関係なく、ウイルスは糞便中に排泄され、人の手指などを汚染し、さらに(手指を介して)他の人に感染を広げる恐れがあります。ウイルスに感染した大人や小児は、集団感染を引き起こす感染源となります。調理に従事する人は、調理前やトイレ後の十分な手洗いが、感染拡大の予防に重要となります。

 A型肝炎は、感染症法で第4類感染症に分類され、診断した医師は、保健所に届け出ることが義務付けられています。
 2014年にA型肝炎の発症者が急増し、厚生労働省は3月、地方自治体に事務連絡「A型肝炎の発生動向及び注意喚起について」(健康局結核感染症課、平成26年3月14日)を出して、迅速な疫学調査の実施や、食品を介したA型肝炎の感染防止策を、調理従事者らに周知徹底することを求めています。
 その後、A型肝炎の発症者数は減少していましたが、今季、発症者が再び急増しています。

 A型肝炎は、例年1~6月に多くの発症者が出ていますが、ここ数年、一年を通して発症者が多発する傾向が認められます。A型肝炎は、その存在を含め、私たちの間であまり知られておらず、免疫を持っていない高齢者は、とくに注意する必要があります。
 A型肝炎の症例全体の致死率は、0.1%以下ですが、50歳以上の高齢者になると2.7%に増えており、油断は禁物です。

老人を介護する  HAVは、アルコールに耐性があり、加熱(85℃で1分以上)で不活化(殺ウイルス)することが出来ます。
 A型肝炎の感染予防対策として、ワクチン接種(3回の接種で、有効期間は約5年)の選択肢がありますが、以下に記す感染予防対策を推進することで、感染を防ぐことが可能です。

  1. 1)食品(魚介類、野菜など)は、十分に加熱して食べる
  2. 2)安全が確認されていない生水(井戸水など)は、口にしない
  3. 3)調理・食事の前や、トイレの後は、手をよく洗う などの対策を推進、徹底する必要があります。

 生カキなど魚介類を食べて、2週間後に38℃以上の発熱や下痢、嘔吐、全身の倦怠感、黄疸などの症状が出た時は、早く医師の診断と治療を受けて下さい。
 家庭や高齢者入所(通所)施設などで、A型肝炎の集団感染が起きないよう、上記感染予防対策を推進、徹底して下さい。発症者の早期発見と隔離、入院・治療を行うなどして、重症化(死亡を含む)の発生を防いで下さい。

(2018.7.12)

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先生のプロフィール

横山 浩

1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了 薬学博士、薬剤師

職歴
大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)
(社)大阪府薬剤師会試験検査センター
サラヤ株式会社(現在)
学会・研究会活動
日本薬学会
日本環境感染学会
日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)環境管理技術研究会