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Dr.ヨコヤマコラム

第165回:エンテロウイルスD68、乳幼児や子どもに感染、急性弛緩性麻痺を発症し、麻痺が残るケースも。感染予防に手洗いやうがい、消毒の徹底を!

 近年、国内で発熱や喘息症状などに伴い、手足に急に麻痺(まひ)の症状が出る病気「急性弛緩性麻痺(acute flaccid paralysis;AFP)」が、乳幼児や子どもで相次いで報告されています。AFPは、ポリオなど急性に弛緩性運動麻痺を呈する疾患の総称です。
 このAFP発症者の一部から、エンテロウイルスD68(以下「EV-D68」と略記する)が検出され、EV-D68との関与が指摘されています。

 AFPは、2015年にEV-D68による感染症(以下「EV-D68感染症」と略記する)が流行した時にも、発症者の一部からAFPの発症報告が相次いでいます。国外でも、米国やカナダ、欧州などでEV-D68感染症が流行した時に、AFPの発症例が多く確認されています。
 現在、世界保健機関(WHO)は、世界ポリオ根絶計画のため、各国に対し、AFPサーベイランスを実施して、AFPを発症した15歳未満の発症者を把握し、ポリオが発生していないことを確保するよう求めています。AFPサーベイランスは、多くの国々で導入されています。
 日本も、上記2015年の流行後、厚生労働省(国立感染症研究所)が、警戒と監視を続け、今年(2018年)に入って、AFPサーベイランスの取り組みを始めています。1月にポリオを除くAFPを、感染症法上の5類感染症に追加し、5月から、全国の医療機関に発症者(15歳未満)の報告を求めています。

 今季も、9月頃からAFPの発症者が増え始め、発症者(累計数)は、11月18日の時点で111人が報告され、発症者が多発した2015年(115人)に迫る勢いとなっています。
 発症者(111人)は、35都府県で確認され、愛知県と岐阜県が各10人と最も多く、次いで兵庫県(9人)、東京都と福岡県(各7人)、埼玉県と神奈川県(各6人)、大阪府(5人)の順で、多く報告されています(国立感染症研究所のIDWR;第46週、速報から)。
 AFPとEV-D68との関連(因果関係)について、まだ明確に分かっていないようです。

 EV-D68は、エンテロウイルス属のウイルスの一つで、手足口病やポリオ(小児麻痺)、無菌性髄膜炎などを引き起こすウイルスと、同じ仲間のウイルスです。
 EV-D68は、主に咳やくしゃみのしぶきなどを介して口や鼻から感染します。ウイルスが付着した手で、口や鼻を触るなどしても感染します。EV-D68感染症の発症者は、夏から秋にかけて多発し、流行期は夏から秋までとされています。
くしゃみ  EV-D68感染症は、喘息などの症状を引き起こす呼吸器疾患で、乳幼児や子どもが発症しやすい感染症です。大人も、EV-D68に感染しますが、そのほとんどは症状が出ないか、症状が出ても軽い症状で治るケ-スが多いようです。
 EV-D68感染症は、通常、EV-D68に感染した後、3~7日間の潜伏期を経て発症します。

 乳幼児や子どもが感染すると、発熱やくしゃみ、鼻水などの軽い症状が出ますが、そのまま数日間放置したり、治療が遅れると、症状が進行して、重症になることがあります。気管支炎や喘息様発作から、肺炎や呼吸困難などを引き起こし、稀に髄膜炎や、筋肉の虚弱化、脳神経機能に異常をきたすことがあり、麻痺が残るケースもあります。
 現時点で、有効なワクチンや治療薬は無く、対症療法を行うだけで、治療法も確立されていないようです。それだけに、EV‐D68の感染を防ぐ対策が重要となります。
 EV-D68感染症の感染予防対策は、1)手洗いやうがいを励行する、2)物品類は、浸漬消毒(塩素系消毒剤を使用)、煮沸消毒(100℃で1分間)で消毒する、3)発症者との濃厚な接触を避ける、発症者と接触する時は、マスクを着用するなどの対策が必要です。消毒マスク
 上記3点を守って、感染の発生(拡大)を防ぐ必要があります。
 

 乳幼児や子どもが、風邪やインフルエンザと似た症状を発症し、さらに手や足が動かなくなった時は、EV-D68による感染でAFPを発症しているおそれがあり、直ぐに専門医による診察と治療を受けて下さい。
 EV-D68感染症は、夏から秋の流行期を外れても、発症者が多発しています。
 家庭や保育施設、医療施設、社会福祉施設などで、エンテロウイルスD68感染症の発生(拡大)が生じないよう、上記手洗いや消毒など必要な感染予防対策を推進、徹底して下さい。AFPの発症を防ぐだけでなく、冬季に流行するインフルエンザなど他の呼吸器感染症の感染予防にもつながります。

 EV-D68感染症の症状や対策について、厚生労働省の「エンテロウイルスD68(EV‐D68)感染症に関するQ&A」(2015年10月23日掲載)で詳しく記されており、感染予防対策を取り組む中で、参考にして下さい。

(2018.12.10)

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先生のプロフィール

横山 浩

1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了 薬学博士、薬剤師

職歴
大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)
(社)大阪府薬剤師会試験検査センター
サラヤ株式会社(現在)
学会・研究会活動
日本薬学会
日本環境感染学会
日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)環境管理技術研究会