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Dr.ヨコヤマコラム

第147回:生後5カ月の赤ちゃん、離乳食の蜂蜜で食中毒を発症、乳児ボツリヌス症で死亡、1歳未満の乳幼児に蜂蜜を与えないで!

 6月に入り、国内各地で感染性胃腸炎や溶連菌感染症(A群溶血性咽頭炎など)、手足口病、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)、ヘルパンギーナの発症者が多く報告されています(国立感染症研究所のIDWRから)。乳幼児や子どもがいる家庭、保育施設、幼稚園、小学校などで、感染が発生(拡大)しないよう、十分に注意して下さい。

 そして、食中毒も、国内各地で発生しています。厚生労働省の食中毒発生事例(速報)によると、5月11日までの発生報告数は194件で、ノロウイルスなどのウイルスによる食中毒が97件と最も多く報告されています。次いでカンピロバクターによる食中毒と寄生虫(アニサキスなど)による食中毒が各33件、自然毒(動物性、植物性)による食中毒が14件、ウェルシュ菌と原因不明による食中毒が各5件、黄色ブドウ球菌による食中毒が3件、ボツリヌス菌と化学物質による食中毒が各1件、その他の細菌による食中毒が2件となっています。

 泣いてる赤ちゃんこのうち、ボツリヌス菌による食中毒で、東京都足立区の生後5カ月の男児が死亡して、新聞やテレビ等で大きく報道されています。死亡した男児は、家庭で発症の1カ月前から、離乳食として市販のジュースに蜂蜜(1日当たり約10グラム)を混ぜたものを(約1カ月間、1日平均2回に分けて)与えられ、2月中旬に痙攣と呼吸不全などの症状(いわゆる"乳児ボツリヌス症")を発症し、救急搬送されました。男児は、入院後も症状が改善せず、3月下旬に死亡しています。男児の便や、自宅の蜂蜜からボツリヌス菌が検出されています。

 乳児の死亡を受け、国は、都道府県等に事務連絡「蜂蜜を原因とする乳児ボツリヌス症による死亡事案について(厚生労働省、平成29年4月7日)」を出し、東京都も、ホームページで情報「食中毒の発生について~1歳未満の乳児にはちみつを与えないでください。~(福祉保健局、平成29年4月7日)」を提供し、改めて関係事業者や消費者に注意喚起を行っています。

 乳児ボツリヌス症は、記録が残る1986年以降、国内で計36例の発症が確認され、今回の死亡例は初めてです(国立感染症研究所の「ボツリヌス症とは (2017年5月19日改訂)」から)。

 ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)は、酸素の少ない環境を好む偏性嫌気性の細菌で、増殖するとボツリヌス毒素を産生します。増殖に適さない環境下では芽胞を形成し、生残しています。芽胞は、熱や乾燥、消毒薬に耐え、100℃前後で加熱しても、死滅しません。
ボツリヌス菌は、土壌や海・湖・河川の泥砂中など自然界に広く存在し、市販の蜂蜜にも、5%程度の割合で菌が芽胞の状態で蜂蜜に入り込んでいます。

 市販の蜂蜜は、瓶詰めや缶詰など酸素が少ない密閉状態で保存されています。蜂蜜にボツリヌス菌の芽胞が混入していると、発芽して、菌が増え、ボツリヌス毒素を産生します。

 1歳未満の乳児は、消化器官が未熟で、腸管内の細菌が少なく、ボツリヌス菌の繁殖を抑える腸内細菌が十分に存在していません。乳児の腸内でボツリヌス菌の芽胞が入り込むと、発芽、増殖して、毒素を産生し、毒素の作用によりボツリヌス症を発症します。蜂蜜に含まれる毒素が、口から体内に取り込まれ、ボツリヌス症を発症することもあります。

 蜂蜜は栄養価が高く、甘味もあり、乳児に食べさせやすい重宝な食材です。しかし、ボツリヌス菌の芽胞や毒素が含まれ、ボツリヌス症を引き起こす可能性があるため、1歳未満の乳児に食べさせることは、絶対に避ける必要があります。

 蜂蜜が原因とされる乳児ボツリヌス症の発生は、上記36例のうち13例で、全体の4割近くを占めています。上記死亡した男児の家族は、ボツリヌス症の発症リスクがあることを知らず、蜂蜜の容器に「1歳未満の乳児には与えないで下さい」と表示されていることも気づかなかったようです。

 乳児がボツリヌス症に罹患すると、3~30日間の潜伏期間を経て、初期症状として便秘や、元気がなくなる(泣き声が小さくなる)、脱力状態、筋力や哺乳力の低下、よだれが多くなるなどの症状が出ます。さらに症状が進行し、重症化すると、上記痙攣と呼吸不全などの症状を引き起こして、稀に死亡することがあります。

 乳児ボツリヌス症の致死率は、1~3%と低い確率ですが、安心は出来ません。

 万が一、1歳未満の乳児に蜂蜜を与えてしまった時は、乳児の体調の変化を日々観察(チェック)して下さい。便秘が数日続いたり、元気がなくなる、哺乳力の低下など乳児ボツリヌス症と疑われる初期の症状が出た時は、早く専門医による受診と治療を受けて下さい。

(2017.6.6)

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先生のプロフィール

横山 浩

1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了 薬学博士、薬剤師

職歴
大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)
(社)大阪府薬剤師会試験検査センター
サラヤ株式会社(現在)
学会・研究会活動
日本薬学会
日本環境感染学会
日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)環境管理技術研究会