業務用公式通販はこちら

お問い合わせはこちら

会員登録・変更・退会はこちら

サポートサービス

Home > 福祉ナビ > 専門家コラム > Dr.ヨコヤマコラム > バッグナンバー > 第139回:麻疹(はしか)、大阪府や兵庫県、千葉県などで感染が相次ぐ。ワクチン接種など必要な感染予防対策の徹底を!

サラヤ 福祉ナビ

福祉介護現場で知りたい!
感染対策・栄養改善・口腔ケアのサポート情報

Dr.ヨコヤマコラム

第139回:麻疹(はしか)、大阪府や兵庫県、千葉県などで感染が相次ぐ。ワクチン接種など必要な感染予防対策の徹底を!

 今夏、大阪府の関西国際空港(関空)に勤務する職員や、兵庫県尼崎市の保育所の園児、千葉県幕張メッセのコンサートの参加者などの中から、麻疹の患者が相次いで確認されました。さらに関空を利用した患者を受診した大学病院でも、院内感染が発生し、医師ら3人が感染(発症)しています。

 上記集団感染などがあって、今季、麻疹の発症者報告数は、昨年の年間患者数(35人)を大幅に超え、9月18日の時点で130人に上っています。

 発症者は17都道府県からあり、大阪府が52人と最も多く、次いで千葉県(21人)、兵庫県(18人)、東京都(14人)、埼玉県(6人)、神奈川県と和歌山県(各3人)の順で多く報告されています(国立感染症研究所のIDWR;第37週、速報から)。発症者は、20~30代の男女が6割強を占めています。

 発症者から検出されたウイルス株(遺伝子型)を見る限り、主にアジアの国々(インドネシア、モンゴル、シンガポール、中国など)で発生(流行)している麻疹ウイルスが、日本に持ち込まれた可能性があります。

 注射器発症者の年齢層は、30代以下のワクチン予防接種歴が不明、あるいは接種が1回の若い世代が半数以上を占めています。40代以上は、麻疹が流行していた時代に何度か自然感染し、免疫を十分に獲得しているためか、発症者が1割以下に止まっています。

 麻疹は、国内で調査を始めた2008年に、発症者が10,000人を超えていましたが、5年後の2012年に283人まで減少しました。2006年以降、ワクチンの定期予防接種が、従来の1回から2回に増えたことが、発症者の激減につながったと考えられます。

 2015年に、年間発症者が35人に止まり、世界保健機関(WHO)は、「国内で土着ウイルスが36カ月以上検出されず、海外から持ち込まれるウイルスによる輸入症例だけになった」として、日本を「麻疹の排除状態にある」と認定したばかりでした。

 それだけに、感染の前触れ(兆し)もなく、不意(盲点)を突かれた形で、麻疹の国内感染が相次いで発生し、国や地方自治体(大阪府、千葉県、兵庫県など)は、感染拡大を防ぐ対策に追われています。感染発生に関する情報の共有、公開が遅れるなど、初動対応に問題があって感染拡大を招いた感があります。

 今のところ、麻疹は、局地的な流行に止まっていますが、安心出来ません。

 何故、国内で、今季、感染者が急増したのか、その原因の一つとして、ワクチン接種をめぐる制度変更が考えられます。定期接種は、当初、1回(1歳~就学前まで)だけでしたが、十分な免疫力がつかないケースがあることが判明し、平成18年からは2回接種(1歳児、就学前1年間)に変更されました。乳幼児や20~30代の男女は、1回の接種しか受けておらず、十分な免疫を得ていない可能性があります。今回の関空や保育園を舞台とした集団感染は、この世代に集中しています。

 今回の集団感染を受け、国や大阪府は、予防接種が1回以下の人には、ワクチンを接種するよう呼びかけています。先ずは感染すると重症化しやすい乳幼児へのワクチンの定期接種を(最優先で)行って欲しいと注意喚起しています。

 くしゃみ麻疹は感染力が非常に強く、感染者と接触したり、感染者の咳・くしゃみを浴びるだけでなく、空気中に浮遊するウイルスを吸い込むなどして感染が広がります。免疫を持っていない人が感染すると、潜伏期間(10~12日)を経て、ほぼ全員が発症します。麻疹の特効薬はありません。麻疹の感染に気づくのが遅れ、症状が進行して入院すると、その3~4割が重症化し、肺炎や中耳炎、咽頭炎、気管支炎、脳炎などの合併症を引き起します。最悪の場合は死亡するケースがあり、生存できても重篤な後遺症(精神発達遅滞、行動異常など)が残る可能性があります。

 10月に入り、麻疹の発症者(報告数)は減少し、国内感染が沈静化に向かっている感があります。とは言え、上記麻疹の発生(流行)国に滞在(旅行)した人などが、今後も、国内にウイルスを持ち込む可能性は十分に考えられます。

 当分の間、関空など感染者が確認された地域で、人が多く集まる場所(空港や病院、学校、保育施設、コンサート会場、ショッピングセンターなど)に出かける時は、ウイルスに感染しないよう、注意する必要があります。前記地域(場所)に出かけて体調を崩した時は、一応医療機関を受診したほうが無難です。

 麻疹は、手洗いやマスクだけで予防できません。麻疹の感染(拡大)や、発症・重症化を防ぐ対策として、ワクチン接種が有効です。未接種や接種履歴不明で不安な場合は、必要に応じて抗体検査を受けるなどして、ワクチンの接種を受けておいたほうが安心です。乳幼児(2歳以下)が感染すると、歩行障害や脳障害などを伴う亜急性硬化性全脳炎を発症することがあります。また妊婦が感染すると、流産や死産、早産になる恐れがあります。

 麻疹の疑いがある症状(38℃以上の高熱や咳、鼻汁、結膜充血、目やに、発疹など)が認められた時は、出来るだけ早く専門医による受診と治療を受けて下さい。

 麻疹の感染リスクや感染予防対策などについて、厚生労働省の「麻疹(はしか)に関するQ&A」や、筆者の専門コラム(第109回)でも記しています。これらを参考にしながら、感染予防対策を推進、徹底して、麻疹の感染(集団感染)を防いで下さい。

 また、今季も9月から、マイコプラズマ肺炎やRSウイルス感染症の発症者が(国内各地で)多発し始め、流行の兆しを見せています。家庭や保育施設などで集団感染が発生しないよう、十分に注意して下さい。

(2016.10.3)

バックナンバー

先生のプロフィール

横山 浩

1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了 薬学博士、薬剤師

職歴
大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)
(社)大阪府薬剤師会試験検査センター
サラヤ株式会社(現在)
学会・研究会活動
日本薬学会
日本環境感染学会
日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)環境管理技術研究会